リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

ナポリさまざま

私は普段忙しく働いているせいもあるが、旅に出る時は航空券とホテルの予約をとり、行きたい演奏会、予約が必要な美術館等のチケットをとってしまうとほとんど準備らしい準備もせずに前夜パッキングして出かける。
ナポリ怖いよ~とか言ってたわりに、人のうわさを半分聞く程度で実際駅に降りてしまった。(ただ、今までどこに行ってもスリや危ない目に遭ったことはない。身の安全に関してはどこの国に行っても細心の注意を払っているからだ。この基本姿勢だけは変わらない)
昼間だしバスに乗ってホテルの近くまで行こうと考えたが、ターミナルのどこからバスが出るのかわからず、タクシーに乗った。
ぼったくりの話をよく聞くナポリのタクシーだが、ナポリ市章のついた車なら、市内の各所定額でと決まっているらしい。運転手は英語が話せる人もいる。
私が乗った車の運転手さんは「ナポリは初めて?」と私に確認すると「では、注意事項を言います」と、目的地に着くまでずっと話していた。荷物は必ず自分の前に持つこと、財布をポケットにいれておくな、エジプト人やアルジェリア人に気をつけろ*1等々。

*1:見分けつかね~って

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バチカン美術館で朝食を

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イタリアの観光都市の有名美術館はどこも入場には長蛇の列に並ばなければならない。
事前に入館チケットを持っていてもある程度は並ぶ。
ここ、バチカン美術館も例外ではない。
しかしここには、最短待ち時間で入れる方法がある。朝食付き早朝入場チケットというのがあるのだ。

biglietteriamusei.vatican.va

入場チケットのオンライン販売ページに、Brakfast at the Museums という種類があるのでここから購入する。電子バウチャーがメールで送られてくるので、それをプリントアウトして持っていくだけだ。
朝7時15分から入場することができ、コートヤードでの朝食とオーディオガイド付き。早朝入場の割増料金がいささか高いが、まだまだこの制度は知られていないので、人が少ないなか、ゆっくり観られる。

ローマに着いた翌朝、テルミニ駅の近くのホテルを6時45頃に出て駅からタクシーに乗った。歩くのがいやだったからだ。7時10分頃美術館入口に着くと、20人程の入館待ちの人々がいた。20分くらいに入場開始。いったんチケットオフィスでバウチャーをチケットに引き換えてもらい、しばらくエントランスロビーで待つ。その後コートヤードに案内され、朝食の席に着く。ごく普通のアメリカンブレックファスト。

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パンケーキはその場で焼いてくれる。

みなさんすごい勢いで召し上がると、とっとと美術館の中に消えていった。私はさいごになってしまい、ひとりでぽつんといる態に。館内ガイドのお姉さんがオーディオガイドを持ってきて「何語?日本語ね?番号をここにいれていくと聴けるのよ。さあ、どうぞ」とてきぱき説明して去っていった。ぐ、ぐらっちぇ…。

いっしょに入ったはずの人々は、館内に散らばっているので、独り占めと錯覚するほどのびのびと見物することができた。

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地図の回廊

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出口のすてきな螺旋階段

システィーナ礼拝堂まで行くと、さすがに見物人が増えていた。が、よく聞く満員電車状態ではなく、ベンチに座ってオーディオガイドをじっくり聴きながら観る余裕はあった。ミケランジェロの最後の審判は、もっと大きなものかと思っていた。これを観に来ることがあろうとは考えていなかった。絵画そのものより、そこにいる自分の状態に感慨無量だった。

ピナコテークをざっと観てから、12時のホテルチェックアウト時間に間に合うように戻った。
その後はナポリへ移動。フレッチャロッサのチケットは自動券売機で買う。必ず「チケット買うお手伝いしましょうか?」とよって来る怪しい輩がいるので注意。絶対に荷物は自分の目の前に置いて、しっかり脚でガードしておく。無事に乗車できるかと思いきや、客車の並びがよくわからない。1〜3にはA、Bがあるのだ。私の乗るのは3B。ホームをどんどん行ってもAの表示ばかり。ついに駅員さんに尋ねた。まず1〜3のAの車両があり、その向こうにBがあるとのこと。先頭だった。今回は間違いなく、ちゃちゃっとかっこよく乗ろうと思っていたのに、なかなか難しい。

 

Tannhäuser in Bayerische Staatsoper Japan tour 28092017

素晴らしい演奏だった。今回は友人の伝手で最前列の席であったため、視界は抜群。すぐ前のオケピットから個々の楽器の音はよく聞こえた。
身長が低いKiril Petrenkoのようよう見える横顔と、高く挙げられた両手にしばしば見とれる時間であった。
静謐で精密、きらびやかさはない水墨画のような音作り。指揮をする手は絵筆をとっているようだ。どうしたらこのような品のいい颯爽とした音になるのだろう。
その前にちょうど威勢はいいがずっこけ気味のサンカルロ劇場のオケをきいたばかりだったので、ただただ「巧い!」と感心するばかりだった。

ソリストや合唱のうまさも言わずもがなで、それぞれたっぷりと魅力のある歌をきかせてくれた。タイトルロールは5月に同プロダクションのプレミエでロールデビューしたばかりのKlaus Florian Vogt…私はもともとこの人の声は好きだ。でも、まだタンホイザーとして納得できるものではなかった。いつものように音符は正確に、きちんときまった場所に音も当たり、はずさない。渾身のローマ語りもいい出来だったと思う。でも、終局前のタンホイザーの救済の望みを断たれた絶望感は伝わってこなかった。まだ赦されるものの余裕があるように感じた。
エリーザベトのDash嬢の声も可愛らしくて純粋なのだが、佇まいがいまいひとつ姫っぽくない。プレミエのキャストHarterosはその点より「らしい」のであったろう。私はDash嬢の声も姿も好きなので、なんだかんだ言っても観てるだけで楽しかった。
ヴェーヌスもひどく好みだった。男性陣ももちろん堂々たる歌唱。

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ローマとナポリ行ってきました

今年はこの遠征で終わりのつもりなので、少ないよ。
前回イタリアに行ったのは、Zubin Metha師指揮によるフィレンツェの《フィデリオ》

 

lyudmila-galahad.hatenadiary.jp

 今回もMehta師によるコンサート形式《フィデリオ》。

場所はナポリのサンカルロ劇場。イタリアはローマを境に別の国になるときいていたので(危ないって意味で)そうとうびびりながら出かけた。
が、やはりここにもテロへの警戒か、そこかしこに銃を持った軍人さんとか警察とか消防士*1がいたし、国際標準的な観光都市ってかんじだったから、考えていたほど怖くはなかった。
空港はローマにして、ナポリへはフレッチャロッサで往復*2
1日目ローマ・テルミニ駅近くに1泊し、翌朝2日目バチカン美術館のearly entranceで午前中見学をし、ナポリに移動。《フィデリオ》1回目鑑賞。
3日目はナポリ市内散策。4日目はヴェスビオ周遊鉄道に乗ってエルコラーノ遺跡までお出かけ、後《フィデリオ》2回目鑑賞。翌日早朝ローマまで戻り、復路に。

お天気は快晴。列車はいずれも滞りなくほぼ定時運行。飛行機も定時発着。ナポリのホテルはサンカルロ劇場から道路ひとつ挟んだだけの近距離、セキュリティ万全の16室しかないプチホテル。

個々の項目については、これから記事にしていこうと思う。

*1:これは劇場内を普通にパトロールしているようだ。しかもけっこうな人数いる

*2:ローマ・ナポリ間は1時間10分

Paavo Jarvi 指揮 《ドン・ジョバンニ》 at NHKホール 09092017

NHK音楽祭2017の最初の公演《ドン・ジョバンニ》を聴いてきた。
オペラをあまり振らないPaavoさんではあるが、そういえば《フィデリオ》も観たなあとか、ちょっと前のことだとすぐ忘れてしまう。
演奏会形式だが、衣装や演技もそれなりについていて、セミステージと言ってもいいのじゃないかと思った。歌手の質、いわずもがな、演奏も高品質でたいへんコスパのよい演奏会だった。

指揮は随所でぴりっとスパイスが聴いていて音はくっきりと際立ち、N響は常に真面目にいい仕事をするので次の場面が楽しみ~と音楽を追っていくうちに終わってしまった。
ひさしぶりに聴くBernard Richterは、声があまりにもデカいんでびっくりしてしまった。以前聴いた時にはこんなにデカくなかったはずなのに…。アンサンブルでもひとりだけ目立っていた。そこで目立たなくてもいいとは思うが。
私の好きなバスのひとりAlexander Tsymbalyukが騎士長役。最初と最後にしか出ないのが残念。
ドン・ジョバンニとレポレッロも、芸達者の美形コンビだった。暇乞いはスマホで、とかドン・ジョバンニと指揮者が話しながら出てくるとかオケが舞台に乗っている状態を有効活用した現代風の演出もおもしろかった。
全体的に明るく楽しい舞台と演奏で、ドン・ジョバンニの暗い部分というのがまったくなかった。最後に地獄におちてしまったはずのドン・ジョバンニが、何食わぬ顔で登場(カテコではない)してくるのも、ハッピーエンド(?誰にとって?)のような、ちょっと不思議な気がした。
私はもともとバロックとモーツァルトのオペラが好きなのだ、ということを、当該作品を聴くたびに実感する。定期的にそれらを耳にしていると精神安定上いいように思う。
脚本がどうこうというより、純粋に音楽が美しく楽しいのだ。

NHKホールは、オペラの聴衆にとってはあまり評判が良くないヴェニューであるが、私はN響が演奏して、席も選べばそんなに悪くはないと思う。大きすぎるのと、ホワイエ部分が複雑なつくりになっているのが(迷子になってしまうので)難点である。
しかしまた3週間後には、ここでバイエルン国立歌劇場の公演を観る予定だ。

DNO《サロメ》テレビ放送あります&レパートリーの話

DNOの《サロメ》が、めでたくNHKプレミアムシアターで放送される。

www4.nhk.or.jp

9/11深夜である。
たぶん放送されるんだろうな、と予想はしていたが、こんなに早くあるとは思わなかった。たいへんうれしい。誕生月にはいいことがある。

favouriteは、ホームであるマリインスキ劇場ではイタオペも歌うが、よその劇場ではほぼロシアオペラかワーグナーに特化してオファーがある。
降板してしまったが、バイロイト音楽祭に出演が決まった時に「初のロシア人タイトルロール」と言われた。さもありなん。
最近気付いたのだが、オペラファンの中で知名度の高く評価も高いロシア人歌手というのは、ロシアオペラ以外なら、ほとんどイタオペがレパートリーなのだ。
以前favouriteが、10年かけてスラブ風の発声を変え、ドイツ語のヴォーカルコーチにもついていると話していたが、彼のドイツ語ディクションはドイツ人が聞いても「ほぼ完璧」と言うほどのものだ。
しかし、彼がいくらワーグナーが得意といっても、優れたドイツ人バリトンは山ほどいるので、なかなか諸役回ってこないのが残念だ。
また、先日バルト海音楽祭で《パルジファル》第3幕と《ラインの黄金》のコンサート形式での上演があった。マリインスキ劇場のオケとソリストでの公演だった。ここでは彼はアンフォルタスとヴォータンを歌った。いずれもよその劇場ではなかなかオファーがない役だ。アンフォルタスはCD録音もふたつあるが、いざ劇場公演となるとクリングゾル役ばかりオファーがある。来年などほぼ連続で《パルジファル》三昧になるが、いずれもクリングゾルを歌うことになっている。*1ヴォータンは、私の記憶が確かならば、マリインスキのホームおよび引越し公演以外ではライプチヒオペラでしか同役を歌ったことはないはず。
なんかワグネリアン方面から「いいヴォータン役がいない」という声が聞こえてくることがあるが、彼のようにどっかの劇場アンサンブルに埋もれてるかもね。

 

 

*1:MET、ベルリンフィル、パリオペラ

Roberto Alagna のローエングリン( バイロイト音楽祭2018)デビュー

さて今年もバイロイト音楽祭の開幕日がやってきた。プレミエは《ニュルンベルクのマイスタージンガー》Philippe Jordan 指揮、Barrie Kosky*1  演出なのでけっこう楽しみにしている。当日はEBUの各ラジオ局でライブ放送があるし、日本でも一カ月も待たずにテレビ放映がある。8/21ですよ。

www4.nhk.or.jp

来年のプレミエになる《ローエングリン》についてのニュースも早々と出ていた。

www.musik-heute.de

これ、Robert Alagnaがローエングリンデビューの予定ということで、だいぶ前から話題になっていたものだ。2014年時点では、Anna Netrebkoがエルザとの話だったが、ネトコさんは昨年ドレスデンでエルザデビューしたところ、不向きであると本人もわかったらしく無しになった模様。声質としては合わないこともないし、ご本人もワーグナーが好きだと話していたが、いかんせんドイツ語が何歌ってるかわからん…という致命的な欠点がある。ロシア人歌手でドイツオペラがきちんと歌える人はほんとうに希少で、相当の覚悟がないとバイロイトで歌うことなどできないだろう。*2
もしふたりが歌っていたとしたら、ずいぶんと雰囲気の違う《ローエングリン》の舞台が見られただろうな、とは思う。
で、発表された予定キャストは、タイトルロール以外はがっちりワグネリアンシンガーで固められている。安心であろう。
いままで、イタリア、フランスオペラばっか歌ってきたようなAlagnaだが、2011年に公開されていた映画《CELLES QUI AIMAIENT RICHARD WAGNER》では、ワーグナーを歌う役で出演していた。また、一昨年パリで上演されていたショーソンのオペラ《アルテュス王》ではローエングリンの前段階の役としてランスロを歌っていたので、かなり長い間ロールデビューを意識して準備してきているのではないか。
私の愛するWaltraud Meier 様もお出ましなので、楽しみ♪ 

*1:得意のオージー場面はどこになるのかしら~

*2:大きい声で言いたいですが、その希少な歌手のひとりが私のfavouriteです!!