リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

バスとUber初使用

前回の続き。
エルミタージュ美術館からナチュラシベリカネフスキー大通り店に行くために、バス停に行った。サンクトペテルブルクのバスは普通の路線バスと小さいバスの二種類ある。
路線番号をなにかと勘違いして、私は乗るつもりのない路線に乗ってしまった。
どっかで乗り換えればいいか、とそのまま乗っていたら、ネヴァ川を渡ってしまった。
バスはかなり混んでいて、きっぷを売るおばさんが私までたどり着けず結果的にタダ乗りになってしまった。ごめんなさい。
橋の先で降り、もう一度路線を確かめたがかなり難易度が高い乗換になることがわかった。

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The Tsar's Bride at Mariinsky II 25122017

f:id:Lyudmila:20171230202601j:plain  50ルーブル(約100円)のプレイビル。英語とロシア語版あり。

リムスキー=コルサコフのオペラは日本ではほとんど上演されない。ロシア圏でもそうしょっちゅうかかっているものでもない。
《皇帝の花嫁》は、シラー劇場とスカラ座で上演された舞台のDVDとブルーレイが出ている。


Tsar's Bride | Olga Peretyatko & Anatoli Kotscherga | Staatsoper Berlin 2013 (DVD/Blu-ray trailer)

あらすじ:イワン雷帝の親衛隊員グリャズノイは、美しいマルファを熱愛していた。しかしマルファには婚約者がいるうえに、皇帝の花嫁候補にまでなってしまった。なんとか自分に惚れさせようと惚れ薬を調達。ところが彼の愛人リュバーシャはそれを阻止しようと同じ医師に毒薬を調合してもらい、毒薬の方をマルファに飲ませる。即死じゃなくてだんだん具合が悪くなり錯乱していくマルファ。自責の念にかられてグリャズノイもリュバーシャも自分たちの悪事を暴露の後死亡。*1

Music by Nikolai Rimsky-Korsakov
Libretto by Ilya Tyumenev based on a scenario by the composer after the drama by Lev Mey

Conductor: Valery Gergiev
Vassily Sobakin: Stanislav Trofimov
Marfa: Albina Shagimuratova
Grigory Gryaznoy: Yevgeny Nikitin
Malyuta Skuratov: Vladimir Feliauer
Ivan Lykov: Yevgeny Akhmedov
Lyubasha: Olga Borodina

*1:イワン雷帝の何番目かの妻が結婚後すぐに亡くなってしまったという史実をもとに書かれたテキストということだが、ずいぶんむちゃくちゃな話だと思う。結婚式の途中で突如皇帝妃になるからと連れ去られてしまうのだ。薬のせいじゃなくてもおかしくなるんじゃないか。

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アレグロで国境越え:ヘルシンキからサンクトペテルブルクまで

12/23にフィンエアでヘルシンキに飛び、中央駅近くのホリデイインに一泊。空港から駅までは電車で30分程。料金は5ユーロだった。
12/24は通常4便あるアレグロの運行は午前の1便のみ。

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フィンランド側からの切符の座席指定はできるが、ロシア側からはできない。結果的にはどちらも窓側の一人席だった。
一等座席はコーヒー、紅茶、水はセルフサービスでいつでも飲めるようになっている。出発してしばらくすると、5種類から選べる軽食と冷たい飲み物のサービスがあり、これも料金に含まれている。行きはサーモンのオープンサンドをいただいた。
そのうちフィンランドの出国手続きがあり、イミグレーションカードを渡される。

f:id:Lyudmila:20171229173028j:plain フィンランド側の国境駅バイニッカラ

ここで出入国の係員の交代があり、その旨の車内放送もされる。
なんとなく緊張する入国審査。ロシア美人のお姉さんが3人やってきてパスポート、ビザ、イミグレーションカードを検分。「ツーリスト?」「メガネはずして」彼女たちが話したのはそれだけ。何ごともなくパスポートにスタンプを押して入国カードをちぎり取って去っていった。
空港で行列しなくてもイミグレーションが済んでしまうというのは、とても便利だと思う。乗車時間は3時間30分。
私は旅の間ずっと以前から愛読している椎名誠の《シベリア追跡》

シベリア追跡 (集英社文庫)

シベリア追跡 (集英社文庫)

 

吉村昭の《大黒屋光太夫》

大黒屋光太夫 (上) (新潮文庫)

大黒屋光太夫 (上) (新潮文庫)

 

 を再読していた。
なぜか何度読んでも飽きないのだ。シベリア追跡は30年前のソ連。大黒屋光太夫のロシア縦断四万キロの旅は230年前の帝政ロシア。人間の本質や国、自然の有り様はたぶん変わっていないと思う。

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おろしや国への旅

前回のナポリ旅の時に「今年の遠征はこれでおわり」と書いていたが1回プラスになった。
今まで行くのを渋っていたサンクトペテルブルクへ行くことにしたのだ。
いろいろな人に「行ったことないのか」「行くべきだ」と言われていたが、一番のネックはもっとも重要な目的であるマリインスキ劇場のプログラムが当てにならないことだった。実は何度か検討したことはあるのだ。しかし予定キャストが*1直前に平気で変更になったり、あまつさえ演目が変更になることすらあるのでこわくて行けなかった。いわゆるドタキャン、ドタ出*2が激しいのだ。プレミエ演目も「現在稽古中のキャスト」として複数出ていたりするので、この人!というお目当てがいる場合はきっぷを買うのもギャンブルになる。
この頃はだいぶマシになってきたのと、本人に出演確認できたので*3いよいよ出かけることにした。

*1:キャストこそが重要

*2:行くには到底間に合わない

*3:わからない…と言うこともあるのでヒヤヒヤなのだ。ただ親分が指揮をするものであれば、よほどのことがない限り断ることはない、とはいえ親分が振るかどうかもかなりせっぱつまらないとわからなかったりする

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読売日本交響楽団 メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」びわ湖ホール 23112017

11月22日、Dmitri Aleksandrovichの訃報に接し、ほんとうに残念で悲しいです。ご家族近親の方はもとより、世界中の多くのファンに愛されている偉大な歌手です。ご冥福とともに、深い悲しみに沈んでいる方々のお心に平安がありますようにと心からお祈りいたします。

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Béjart Ballet Lausanne 魔笛 18112017

Maurice Béjartは10年前の2007年11月22日に亡くなった。
東京文化会館のロビーにはこのパネル(ネコかわいい)

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私も3年前に第九交響曲で久しぶりにBBLのパフォーマンスを見た時に、Béjartの存命の時とは変わったんだなと思っていたが、今回の公演でもそのような感想をよく見かけた。私はそれが悪いとは思っていない。
パフォーマンスのレベルは高いし、作品に対するリスペクトは感じる。
ただ求心力を失っているのかもしれない。ちょっと寂しい。
私はBéjartのダンスは、ストーリーを物語るものではなく、音楽を表すものだと思う。
だからといって超絶技巧の歌唱に対応して技巧的な振付をしているのではない。
音の表現する感情であったり、象徴的な事象を目に見える形で表現している。それが簡素な舞台装置とコールドと一体化しているように見え、演出自体優れたものだと思う。
物語は語り手である弁者に委ねられる。語りはフランス語。音楽の歌唱部分は、ベルリンフィルの音源をそのまま使用しているのでもちろんドイツ語だ。ジングシュピールの語りの部分は省かれている。
善悪二元論とフリーメイソンの教義と思しきものが、コンセプトとしてある。舞台の幕が開き、最初に現れるのは五芒星の中央に横たわる弁者の姿。ここでもうスピリチュアルな雰囲気満載なのだ。
☓十年前にテレビ放送で初めてこの作品を見た時の、パミーナの白いレオタードばかりが記憶に残っていて、全体を無彩色だと思い込んでいたので実際の舞台がクレーかカンディンスキーの絵画みたいだったのにはちょっと驚いた。
そしてまあ、なんとJulien Favreau*1 のザラストロがすてきだったこと。オペラの《魔笛》の主役もザラストロだと思っているので、我が意を得たりってとこかな。
こういう舞台では、オケ付きでなく録音を音楽として使用する。私も生オケのほうがいい*2とは思うが、そういうもんだとすれば気にはならない。再生環境がいいところで、優れた演奏の録音であればそれなりに聴けるし。
コンテンポラリーの作品の場合、表現が優れていれば音源はあまり気にならないということもある。
とにかく久しぶりにBBLの魔笛に会えて、よかった。

 

 

*1:この人出てくるとやっぱり舞台の雰囲気が一変するのだ

*2:ロシアの劇場なんかはオケ付きで来るので、比較的クラオタ率も高い