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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

フィリップ・ジャルスキー&ヴェニス・バロック・オーケストラ

Concerts

2014年4月25日 於:東京オペラシティ コンサートホール 

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直近でジャルスキーを聴いたのは、2012年末のケルン・オペラ。

今人気沸騰中、話題のDVD『アルタセルセ』、演奏会形式での舞台最終公演だった。今年もアルタセルセツアーは欧州で行われているが、PJがアジアツアー(台湾、上海、北京、東京、大阪、ソウル)に出ているため、題名役はVince Yi が務めている。彼もなかなかに可愛らしいと評判である。

(これは別の話なのだが、この『アルタセルセ』の公演はまこと必聴に値する。ウェブラジオ放送や、各地の公演に行った同好の士の報告をきくと、毎回歌手たちのパフォーマンスは変化、進化している様子である)

来日公演はもう3年も前になる。その時に「次の来日は2014年」ときき、「そんなに待ってられっか!」となって翌年のザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭『ジュリオ・チェーザレ』(セスト役)を見に出かけたりした。私は品の良いカウンターテナー全般が好きであって、PJのコアなファンではないのだが、いつも安定したテクニックと声の音色から受ける柔らかな印象とは異なる、喉とインナーマッスルの強靭さを感じるフレージングが好きだ。

 

今回はプログラム構成もおもしろかった。ポルポラとヘンデル、それぞれのスターカストラートライバル同士の組み合わせ。PJのシグネチャーとも言えるレパートリーも入っている。強い支えのある弱音。メッサディヴォーチェ。私の席は舞台にかなり近い2階だったので、会場が広すぎるという点もマイナスにはならなかった。もとのように彼のみごとなパフォーマンスを堪能できたのだ。

2階の客席から見渡せる聴衆のさまざまな反応もおもしろかった。

うっとりほれぼれ~と、聞いている人、前のめりに真剣に聞き入る人、すでに心は現実世界にはいないな…と思わせる表情の人。しかしいずれもPJとアンサンブルの織りだす、古の調べにとりこまれていたのだろう。

それに、いっしょに舞台に乗っているのは、名門古楽アンサンブルのヴェニスバロック・オーケストラなのだ。器楽曲だって聴きごたえじゅうぶん。その中で異常な人気を博したのが、「リュートのおじさん」だ。楽器を片手に出てきたときから、なぜか目をひく。歌心がその姿にすでにあふれているのだ。演奏している間は楽しそうで、聞いているこちらまでうきうきするのだ。案の定、コンサート後の報告ツィートでは「リュートおやぢ」の単語が踊りまくっていた。自分がこんなに聴衆の人気を集めていたとはご存じなかろう。ソロリサイタルでもいけるんじゃないか?ソロじゃなくてもリュートソングで伴奏してくれたらファンがぞろぞろ集まるだろう(ほんとか?)。

アンコールは「私を泣かせてください」と「オンブラマイフ」。サービス満点である。スタンディングオベーションで終わった。

アナウンスはされていなかったけれど、当然のごとくサイン会が催された。いちおう会場で販売されているCDを買うという前提があるようだったが。

長蛇の列ではあるが、ケルンオペラでの行列もなにもあったもんじゃなかったカオスなサイン会と比べれればお行儀はすこぶる良かった。

私はサインはいらないので、友人たちとおしゃべりしながらその場を観察し、終了後にPJをお見送りするだけにした。いつもそうなのだが、彼は疲れた表情をいっさい見せず、ひとりひとりににこやかに対応し、写真に応じる。非常にプロフェッショナルな態度なのだ。