リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

ザンクト・ガレン修道院

私のてもとには、20年前に買ったこの本がある。現在は絶版。私は修道院文化、とりわけ写本に昔から並々ならぬ関心を持っていたのである。

当時のザンクト・ガレン修道院文書館長、ヴェルナー・フォーグラーの著書の邦訳である。所蔵資料の豊富なカラー図版や、修道院の設計図も載っており、図版を見ているだけでも楽しい。

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旅行案内やWikipediaでの記載項目は、検索すればすぐ読めるものなので、ここには日本版への原著者の献辞の一部を転載しよう。

ザンクト・ガレン修道院は西欧の修道院の範というべきものである。歴史家だけでなく、19〜20世紀に西欧の研究者たちは、さまざまな分野にわたる著作の中でこの修道院をとりあげてきた。その背後には、9世紀から11世紀にかけて修道院の黄金時代があった。この黄金時代については、今日に至るまで、発祥の地、ザンクト・ガレン修道院文書館と図書館に、西欧中世の他の修道院に例を見ないほど、広範にわたって資料が残されている…以下略」

この図書館には、膨大な数のマニュスクリプトとインキュナブラが収蔵されている。

見学者に一般公開されいる図書館内にはガラスケースに、一部の収蔵品が展示されているだけだ。書架に並んでいる本は、金網でガードされ、背表紙を見ることしかできないのだが、現在では Digital Abbey Library of St.Gallen で中身も見られる。デジタルアーカイブって素晴らしい!

 

さて、あいにく雨がふっていたが、チューリヒに着いた翌日、ザンクトガレンまで出かけた。日本は暑いくらいだったのに、寒くて寒くて。スプリングコートでは足りないかんじだった。St.Gallen駅から旧市街に向かって歩き、15分くらいだろうか。大聖堂の前の広場ではフリーマーケットが開かれていた。先に図書館を見学することにした。

扉を入って、2階にあがるとそこに入場券売り場兼ミュージアムショップ、ロッカー室とお手洗いなどがある。荷物は必ずロッカーに預けなければならない。容赦なくドイツ語で説明があった(たぶん英語でも大丈夫だと思う)。図書館には靴の上からおおきなスリッパをはいて、ずるずるひきずりながら見学することになる。

バロック様式の美しい内装の館内は、けっこう明るい。ガラスの展示ケース、外に出ているのは大きな地・天球儀とミイラの箱、作りかけ?の羊皮紙のをのばす台くらい。

きらびやかではないが、一部装飾写本もある。企画展として展示されていた写字生の試し書きやスケッチ(上手!)がとてもおもしろかった。固い椅子に座り、ひたすら文字を書いていた姿を目に浮かんだ。東洋の写本の例として、お念仏の経文があったのには驚いた。「南無阿弥陀仏」なんて書かれているのをここで見る不思議。

さほど広くない館内をじっくり見てまわり、さてお次はカテドラルへ。扉を開けるといきなり大きなパイプオルガンの音。盛大に演奏中だった。

いろんなとこで見かける写真だが、これは私が撮ってきたものだ。  

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こんな観光名所なのに、人がほとんどいないのだ。

お昼はすぎていたので、図書館の出入口のすぐ前にあったカフェで昼食をとった。簡単なベーグルサンドカプチーノ

駅まで戻る途中にテキスタイル博物館に寄った。入場券も布で出来ているのがシャレている。レースや織物のコレクションのほかに、中国や日本の織物、刺繍、着物などの展示が多かった。

道すがら見かけた劇場の看板。

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ここの劇場はオペラもミュージカルもお芝居も上演している。このArtusという演目はミュージカルなんだって。おもしろそう。オペラはここでも今シーズン『死の都』が上演されていて、Stefan Vinkeがパウルだったようだ。

夏のフェストでは野外でオペラやコンサートがある。大聖堂をバックに上演されるオペラはどんなにか見応えがあるだろう。昨年の『アッティラ』