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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

DDR film <Der fliegende Hollaender> 1964

リヒャルト・ワーグナー生誕200周年記念としてちょうど1年前にドイツMDRテレビで放映され、さらに各地で上映会もあったという映画。DVDはこちら ⇒⇒⇒

f:id:Lyudmila:20140521140355j:plain (ダーラント、マリー、エリックに引き止められるゼンタ)

1964年に東ドイツDEFAで制作された Joachim Herz 演出の『さまよえるオランダ人』。

これがとんでもなくおもしろいものだった。演奏はライプチヒオペラの合唱と管弦楽団、俳優が演じ、歌は歌手が別録りであてている。
全体がゼンタの夢想で、(なんていう手法なのかわかりませんが)実際の場面は小さいサイズの画面になっていて、ゼンタの夢の部分はでは画面がスクリーンいっぱいに広がる。
完全にオペラそのままではなく、少しだが切り貼りがある。冗長になりがちなオランダ人のモノローグDie Frist ist um は、一部カットして序曲につなげているので、オランダ人がはじめから登場する。これがスムーズなドラマ展開で、オペラ上演でもこうしたらいいんじゃない?実際やられたら主役の見せ場がちょっと減るから、オランダ人オタの私としては不満になることうけあいだが。

 


舞台全体としては、テキストからいっさい逸脱していないものになっている。現実と夢をはっきり分けているが、非現実的な部分はいっさいない。
秀逸なのは幽霊船の水夫の合唱のところで、現実感のある幽霊っぽくするあまりに、やけに怖い。ゼンタの夢、ということに徹底しているのは、救済の動機がまったく入っていないということにもあると思う。
序曲はDie frist ist umにつながるのでそこにはなく、最後にも出てこない。
去っていくオランダ人を追って、ゼンタは桟橋を走っていくが、そこでゼンタは夢から覚め(ほんきで暖炉の前で眠っていた)、笑顔で足取りも軽く海辺の木立を歩いていくところで終わっているからだ。

救われるべき呪われたオランダ人船長は現実ではなく、あくまで伝承にすぎないのだ。
オランダ人はゼンタの妄想とし、投身自殺、焼身自殺と、悲惨な結末にしている演出が多く、こんなに明るくさわやかな幕切れになっているものは見たことがなかった。

逆に今の舞台でこれをやったら斬新ではないか。…しかし、ゼンタの女優さんがちょー可愛いのに、オランダ人がしょぼいといったら…。映画俳優ならもうちっとましなのがいたろうに。

DEFA Film Library がメイキングビデオをyoutubeにアップしてくれた。


THE FLYING DUTCHMAN (1964) Making the Film - YouTube

 

今、この記事を書いていて偶然見つけた、同じくJoachim Herz演出『リング』プロダクション。映像記録として残っていないため、断片写真を載っけてくれている。

Tribute to Joachim Herz Leipzig production of ...

私は前年亡くなった、Patrice Chéreau 演出のバイロイト『リング』以上のモダンプロダクションは未だに出ていないと考えている。
それに先駆け、ワーグナーの台本にある社会主義的要素を描いたのがこのHerzの『リング』だったのだ。私は浅学寡聞にして、初めてこのことを知った。この数点の写真から見る舞台にびっくりしてしまった。う〜、見たかった!自分の生まれる前のことは関心ないとかいうのは撤回して、調べてみよう思う。専門家でもなんでもないのに。