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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Il Prigioniero / Suor Angelica @Gran Teatre del Liceu 25062014

Opera travelogue 2014 Barcelona

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異端宗教裁判所長、囚人、母        © Antonio Bofill

それぞれの作品については、27日の2回目の鑑賞分に記載するとして、この記事では前置きと全体のざっとした感想を記録しておくことにする。

『囚われ人』『修道女アンジェリカ』のダブルビルは、バルセロナ、リセウ大劇場の2013/14シーズン最終公演である。
ダラピッコラの『囚われ人』という作品は、マイナー演目ではあるが、めったに見られないというほどのものではない。年に1回くらいはどこかの劇場で上演しているのだ。今回リセウでは初演。オリジナルプロダクションは2008年、パリオペラ座ガルニエ宮で上演された。その時もタイトルロールはEvgeny Nikitinだった。私はこのプロダクションが観たくてたまらなかったので、シーズンプログラムが発表された時には喜んだ。しかし、彼だからこそ演じられたような舞台がはたしてそのまま上演されるのか、また、ほんとうに彼が今回も演じることができるのか不安でもあった。彼以外で観ても*1意味がないので、1月にミュンヘンで尋ねてみた。「もちろん出るよ」と明快な回答*2を得ることができたので、安心して出かけた。

ダブルビル公演の場合、組合せがなかなか興味深いところである。今回は通常プッチーニの三部作のひとつとして上演される『修道女アンジェリカ』とだった。
パリ上演の時はシェーンベルクの『ナポレオンのための頌歌』と組合せだったし、DNOでは『青髭公の城』とだった。『フィデリオ』などとの組合せもあるらしい。それぞれナチスドイツへの批判や、幽閉された人たち、あるいは音楽的に似通っているなど、共通項があった。 
『修道女アンジェリカ』との共通性はなんだろう?幽閉された者が自由を得るための死。また、『囚われ人』は、フェリペ2世のフランドルプロテスタント弾圧が背景にある。タイトルの囚われ人は、プロテスタント側の政治犯として収監されているのである。一方『修道女アンジェリカ』は、非常にカトリック色の濃い作品である。相対する宗教観とそれぞれの行動ではあるが、向かっていく先は同じ。「母性」の影という部分も共通しているのかもしれない。
また、この組合せは観客には優しい。両方とも現代音楽だと、ともすると聴衆の感覚は追いつかずに終わってしまう可能性がある。
実際、歌手に関しては名演だと感じた『囚われ人』には拍手も少なめで、お客の反応もとまどっているようだったが、『アンジェリカ』の方ではカーテンコールのアプローズも盛大だった。
もともとプッチーニが嫌いな私でも「悪くないな」と思える作品だし、出るのは女性ばかりのうえ『三部作』の他の2作に比べると清らかな雰囲気で、ソプラノのアリアも美しい。『囚われ人』と違い、はっきりと「赦し」「救済」が理解できて鑑賞を終えられる。

舞台装置は共通で、螺旋階段が外に取り付けられたカゴ状の大きなものがあるだけだ。
これが牢獄にもなり、修道院にもなる。
衣装もシンプルで、ほとんどの登場人物は無彩色の衣装で、宗教裁判所長だけは紫のローブを着用していた。『アンジェリカ』でも女子修道院であるから、白または黒の入った*3修道服の人ばかり。俗世の公爵夫人も現代的ではあるが地味な拵えだった。
光の使い方が効果的で、両作品とも最後に舞台中央が明るく照らされる。自由への希求は死をもって叶えられる。

演奏の方はというと、『囚われ人』の最初で「ん?」と…。ちょっとまずいかもしれない、と嫌な予感がした。まあ、私が好むタイプの演奏ではまったくなかったのだが、『囚われ人』はそもそもの作品の力と歌手陣が非常に優れていたので、結果としては満足。『アンジェリカ』も、歌手は良かった。
『囚われ人』の主要3人の歌手の出来は実際素晴らしかった。ロシアオペラやワーグナーの作品が主要レパートリーであるNikitinが、この曲をこれほどきちんと歌いこなし、的確に表現すると考えた人はそう多くはないと思う。負担の大きい役であるが、本人もけっこう気に入っているらしく「これはとても印象的で興味深いプロダクションだと思う」と伝えると「まったくその通り」と満足げだった。

*1:そこまで言うか

*2:「出るなら行くから」と言ったはずなのに、そんなことは覚えちゃいないらしく、出待ちの私を見つけて驚愕し、第一声が что это?

*3:当初アンジェリカ役はバルバラ・フリットリの予定だった。豊満な美人の彼女が修道女の格好をするのは見たかった…きっと萌え萌え