モンセラットには列車から*1ケーブルカーに乗り換えて行くルートがある。その方法で行こうと考えていたが、バルセロナ中心地から出ている現地ツアーに入るほうが効率的ときいて、そちらに参加することにした。全行程約4時間、バスの往復の時間は2時間。お山で2時間の見学時間がある。時期によってはそれでは時間が足りないかもしれないが、私が行ったときは空いていたので、余裕があった。
ここのお山には有名なベネディクト会の*2修道院がある。なんで有名かというと、ワグネリアン(とアーサリアン)の皆様には聖杯城のモデルとして、古楽ファンには歌集「モンセラットの朱い本 (リンク先で中身が見られます)」を持つ場所として、ボーイソプラノファンにはエスコラニア少年聖歌隊を擁する修道院として。一般には、黒い聖母像が奉られ、奇岩の上に建っていることでもよく知られている。
私はカトリックフォークロア、とりわけ聖女・聖人伝説と聖母崇拝に学術的な*3関心を持っている。土着の宗教と融合しながら世界に拡まったカトリシズムには不思議なイコンが存在する。そのひとつの太地母神信仰の流れを汲む黒い聖母像も、世界*4に点在し、各地でいまだ土着的な信仰を集めているという。
モンセラットの聖母は聖堂内陣の主祭壇上に安置されており、そこに昇って*5お参りすることができる。この聖母様が右手に持つ、世界の象徴である球体に触って願ごとをすると、そのお願いごとはかなうといわれている。ただし何を願ったかは決して口外してはならない。
ツアーには16人の参加者がいた。なんということもない平日だったので、道路も現地も空いていた。修道院周辺は拍子抜けするほどきれいに整備されていた。
聖堂に行く途中に小さな博物館もあるが、そこを見る時間まではなかった。お土産屋さんには夥しい聖母グッズ*6。駐車場からの道にはチーズやお菓子を売る屋台。
聖母様にお参りしてから、しばらく聖堂内に座ってあれこれ想いを巡らしていた。
こういう時には、自分についてのお祈りはしない。他者の幸福と世界の平安を願うばかりだ。
私はこの場に来られたことだけで、幸運だ。