リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

New Don Giovanni at Perm Opera & Ballet theatre

27日にペルミオペラのサイトで新演出『ドン・ジョヴァンニ』の*1ライブウェブキャストがあった。

f:id:Lyudmila:20140928210313j:plain ©Perm Opera & Ballet theatre

すでに発売されて好評を博しているTeodor Currentzis & MusicAeternaの『フィガロの結婚』、と次の『コジ・ファン・トゥッテ』に続いてダ・ポンテ三部作のCDとして出る予定のものだ。CDはセッション録音で、*2 キャストも違うだろうが、とりあえず見てみた。

 事前に出ていたプロモビデオや写真では、マネキンばっかり出ててなんだか気持ち悪いなと思った。
演出はValentina Carrasco、彼女はLa Fra dels Bausに参加していたこともあるそうで、なるほど全体にLa Fraの劣化版みたいな舞台だった。
映像を使用したり、客席をパフォーマーが走るとかそんなとこだ。*3

マネキンがいっぱい出てくるのもわからないけど、登場人物がドン・ジョヴァンニ以外ヘルニアとか骨折で固定したりするのに使う治療用の装具を何かしら身につけているのだ。
そういうお店なのか、装具自体に意味があるのかわからない。
それ以外はごく普通の現代風の衣装で、装置もたいしたものはない。それぞれのシーンを「はい次、はい次」とつなげて、演技をこなしていくだけ…のような印象だった。地獄落ちはドン・ジョヴァンニがマネキンみたいに解体されてなくなる*4、というもの。
実際見たらおもしろいかもしれないけど、何度も見たいとは思わないんじゃないかな。

演奏は良かった。今回ペルミのはプラハ初稿版で、今までで気に入っているのはRené Jacobsの盤*5だから、CDが発売されたらそれに代わるお気に入りになるかもしれない。
*6歌手陣は騎士長にMika Karesが配されていたのをはじめ、古楽系の歌手がほとんどだった。ドン・ジョヴァンニ役は、イタリア人のSimone Alberghiniで、他でもドンジョを歌っている人だが、華がないところがいまひとつ。ドンジョ役にはカリスマがないとね。『フィガロの結婚』の録音ではバルバリーナを歌っていたNatalia Kirillovaがここではエルヴィーラ役でかなりがんばっていた。
歌手陣の自由な装飾と、闊達なオケの演奏は、『フィガロの結婚』と同じく生き生きと新鮮なものだった。
来年CDが出るのが楽しみだ。
序曲はこんなかんじだった。ストリーミングがyoutubeだったので、音質はあまりよくない。


Don Giovanni overture by Lyudmila7309 - Hear the world’s sounds

 

*1:ほんとにいろんなところでゲリラ放送か!ぐらいの勢いであるので油断も隙もない

*2:レコーディングキャスト: Andrei Bondarenko (Don Giovanni), Mika Kares (Commendatore), Simone Kermes (Donna Anna), Karina Gauvin (Donna Elvira), Tilman Lichdi (Don Ottavio), Vito Priante (Leporello), Nadine Koutcher (Zerlina), Guido Loconsolo (Mazetto). 

*3:La Fraのパフォーマンス自体も、広い空間や野外であれば生きるもので、狭い劇場の中だとよくわからないと思う

*4:そう、思い出したがLa Fraが関わっていた映画「パフューム」の最後のシーン、グルヌイユが人々にばらばらにされるみたい

*5:これはウィーン稿でプラハ版にある部分は補遺収録になっている

*6:ウェブキャストのあった日の出演者