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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

LOHENGRIN at Dutch National Opera 26112014

Opera 2014 Amsterdam, London

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Heinrich der Vogler: Günther Groissböck 

Lohengrin: Nikolai Schukoff
Elsa von Brabant: Juliane Banse
Friedrich von Telramund: Evgeny Nikitin
Ortrud: Michaela Schuster
Der Heerrufer des Königs: Bastiaan Everink

Musical Director: Marc Albrecht
Stage Director: Pierre Audi

Orchestra: Netherlands Philharmonic Orchestra Netherlands Chamber Orchestra

Chorus: Chorus of Dutch National Opera
Chorus Master: Ching-Lien Wu

 DNOで12年ぶりに上演された『ローエングリン』。演出と指揮と合唱は、再演を待ち望んでいた人々の期待にじゅうぶんに応えた。

Audiの演出は、具体的な読み替えはいっさいない*1。ただ独特のシンプルなデコールと衣装が目をひき、歌手と合唱団の動きと所作が綿密に計算されていることがわかる。
デコールは直線の組み合わせで、特に第一幕の合唱が座っている格子状の壁*2がすごい。
他は第三幕になるまで大きな装置はなにもない。合間に柱状のものがあるくらいか。
むだに広い空間を埋めるのは、歌手陣の衣装だ。ブラバントの民衆と貴族は折り紙を思わせる大きな上衣を着けている。これが集団で走り去る時など、舞台いっぱいに広がるように見えて視覚的に非常におもしろい。
また王の伝令役は、黒の衣装に隠れているが、高下駄状のものでかなりかさ上げしてるらしく常に舞台の人物の中で最も目立つようになっている。指に銀色の長い指揮棒のようなものをはめて、指揮官のようにも見える。
シンメトリーで水平な動きが多用されていて、これは能舞台に似ていると思った。
第三幕のローエングリンとエルザの閨の装置も、寺社でみる階段そっくりにつくってあった。
ローエングリンの登場と白鳥はちょっと理解不能で、白鳥はオールの束が舞台の床に敷かれたレールを滑ってくることで表現される。ローエングリンはその後をそろそろと出てくる。(上掲の写真参照)川をボート漕いできたんかな。重い鎧を着けた騎士を一羽の白鳥がひいてくるなんて無理だろうから、こんだけのオール使ってというのはけっこう現実的だ。白鳥がよくわからない以外は、洗練された美しい舞台だと思った。物語への介入ではなく演出家の美的感覚が発揮されている舞台というのは、Robert Wilson *3みたいかな。

演奏では、先の記事で書いたとおり、合唱とテルラムント伯夫妻が素晴らしかった。
特にSchuster の気迫と声の威力は凄まじく、こりゃ全員魔法にかけられます!と錯覚する。重唱になると、艶やかな彼女の声が音の束の芯になっているのがはっきりわかる。
拵えがまるでMarlene Dietrich のようだったし、彼女の婀娜っぽい所作にもドキドキした。
私のfavourite であるテルラムント伯役のNikitinは、今回がDNOデビューだったのだが、Schusterとはすでに同役で共演しているし、他の歌手に比べたらベテランのワーグナー歌手だ。Schuster と共に、よく音楽的に牽引していたと思う。
困ったことに、途中*4で彼の上半身タトゥー全開になる。そのインパクトが大きくて、歌唱よりそっちの方が評判になっていたようだ。はいてるのも漁師か下水処理の作業員みたいで、これはやりすぎなのでは〜。私は彼の気品のある声とキレのある動き*5は、どんな舞台でどんな衣装着せられても変わらないと思っているけど。
ローエングリンが高音でへなへな〜となったり、なんとも言えない緊張感*6を醸し出し、エルザはエルザで必死さが漂いすぎてこれまたはらはらさせられる歌唱だったので、悪役夫妻がいなかったらどうなったのだろうというのが正直なところだ。
王様と伝令は、それなりの仕事をしていたがいまひとつぱっとしない。
Groissböck は、日本で何度か聴いていて悪くないと思っていたのだが、声に輝きがなく、つまらなかった。力が入りすぎていたのだろうか。
しつこいが、合唱は素晴らしい。そしてMarc Albrecht の采配。
最初から最後まで颯爽と振りまくる。ローエングリンの歌唱の品下がるところを、オケがよくカバーしていた。全体に繊細でやわらかすぎると思えるところもあったが、非常に品よくまとめていたと思う。第三幕の舞台転換の音楽のところで、2階3階のバルコンにふたりづつトランペットを配置して鳴らしていたのもおもしろかった。ちょっと遠くてマヌケっぽい音がするのがまた、ブラバントの平原の風景が見えるようだった。
そして私はやっぱりこの作品、『ローエングリン』が大好きだ。
ラジオ放送からの録音、第二幕の『私の名誉は地におちた』をyoutubeにアップロードした。テルラムント伯の泣き言をご堪能ください。

 

Evgeny Nikitin sings 'Du fürchterliches Weib' -- Lohengrin - YouTube

*1:大工だったり、ネズミの大将だったりはしないのだ

*2:高い位置に座っている人たちはかなり怖いのではないかと思う。ここのオペラをかなりの数観ておられるKさんによると、合唱団に危ないことをさせる演出がよくあるそうだ

*3:こちらもお能のような舞台をつくるが、歌手にもっと過酷な演技付けをする。そこまでひどくない

*4:ローエングリンに負けて落ち武者的なかんじのとこですね

*5:BSOの来日公演をご覧の皆様はご存知、オペラ歌手にあるまじき大立ち回りをやってのけた

*6:ちゃんと歌いきるのだろうかというドキドキ