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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Riccardo Primo at Badisches Staatstheater 24022015

HÄNDEL-FESTSPIELE KARLSRUHE では毎年二作のオペラ作品を上演する。
《リッカルド・プリモ》は昨年の新演出で、Benjamin Lazar のろうそくのライティング、バロックジェスチャーを使った演出と初演のピリオドに則した*1デコールと衣装が特徴だ。もちろん歌手も素晴らしかったが、地元の観客たちも「演出が非常におもしろい」と話していた。


Internationale Händel-Festspiele: RICCARDO PRIMO - YouTube

実際は、ろうそくだけでなく、普通のライトも使用しているようだ。どのように使用されているかというのはDVDになっている同じ演出家による《聖アレッシオ》を見ていただけるとわかるだろう。


S. Landi : Il Sant' Alessio 1 - YouTube

 

数々の武勇伝のある、イングランド王リチャード1世*2の婚約者がキプロス近海で遭難し身代金目当てでキプロスの総督に捕らえられたのを救いに行ったというエピソードをオペラにしたものだ。実際の人名と役名は変わっているが、あらすじはそのまんまである。リブレットはこちら ⇒⇒⇒

Riccardo I.: Franco Fagioli リチャード獅子心王
Costanza: Sine Bundgaard リッカルドの婚約者 物語の始まりではふたりは顔を知らない
Isacio: Lisandro Abadie キプロス総督
Pulcheria: Claire Lefilliâtre イザーチョの娘 父の命令でコスタンツァになりすますが即バレ
Oronte: Nicholas Tamagna シリアの王子でプルケーリアの婚約者 わけのわからんイザーチョの作戦に怒ってリッカルドに協力、後にキプロス領主となる
Berardo: Andrew Finden コスタンツァのいとこ

Musikalische Leitung: Paul Goodwin
Regie: Benjamin Lazar
Bühne: Adeline Caron
Kostüme: Alain Blanchot
Lichtdesign: Christophe Naillet
Cembalo & Leitung der Rezitative: Thomas Leininger
Dramaturgie: Bernd Feuchtner / Michael Fichtenholz

とにかくこの作品ではリチャード1世のアリアは威勢がよく、華やかで聴いていてわくわくする。

初演の歌手は大スターカストラート、セネジーノだったというこの役はFranco Fagioli の声と歌唱力にぴったりだと思う。骨太で男らしい。
広いレンジを跳躍するテクニックも十分楽しめるし、バロック楽団といっしょなら余裕で声も上に乗る。ROHのイダマンテもそれなりの価値はあったと思うが、やっぱこれだよ。

特に3幕の闘いに赴く超絶アリアAll'orro delle procelle のすごいことといったら。
ここは演出もかっこいい。城壁を模した装置の階段を駆け上がり、そこから降りて下でポーズを決めながらすらりと剣を抜くとこなんか、失神しそうだった。


Händel - Riccardo Primo - All'orror delle procelle - Fagioli - YouTube


かなり優れた運動能力を持っていると思しき彼のバロックジェスチャーもいちいち決まっていた。歌舞伎の見得を切るようなポーズが随所にある。
これがまた中世の絵画のようなのだが、その証明となるタペストリーを翌日カールスルーエ城のBadische Landesmuseum 内で発見した。
click to enlarge

f:id:Lyudmila:20150308162733j:plain 中世期タペストリの一部

f:id:Lyudmila:20150308162805j:plain Foto: Falk von Traubenberg
Fagioli のポーズ

そっくりでしょ?

上演形式も時代風。レチって歌って退場、の繰り返し。アリアの後にいちいち拍手って今はあまりないから、けっこうめんどくさい。Fagioli やBundgaard が歌った後は「うわ〜、すごーい!」って自然に拍手が出るのだが…。 このふたり、けっこう音量の差があるのに、デュエットになると自然に寄り添うようにボリュームも合ってくるのだ。そのへんがすごい。
昨年とはコスタンツァの歌手が代わっていて、今年のSine Bundgaard はベテランの趣で上手な人だった。ペースの配分が極端なタイプのようで、後になるほどボルテージが上がっていった。
もうひとりのCT、Nicholas Tamagna はたいへんに優しい声を持っている人で、ともすると消え入るようになってしまうのが残念であった。Fagioli とTamagna はCTの中でも、かなり安定感がある発声をするタイプだが、長い上演の間ずっと不自然さを感じさせずに歌うことがどんなにたいへんか、ということは翌日《テゼオ》で絶不調のCTを聴いて実感したことだ。
プルケーリアやベラルドの役は、まあまあなとこで。一生懸命さは伝わってきた。

ろうそく上演は見るに興味深い*3が、灯のゆらぎで眠くなってしまうのが難ではある。

f:id:Lyudmila:20150308172226j:plain カメラの設定が悪かったためか、やたら暗くなってしまったカテコ写真。もちろんフラッシュはオフ。

 

 

*1:いわゆるHIP上演は、ここカールスルーエではすでに《ラダミスト》で成功している

*2:私はお子ちゃまの頃にKate BushのLion heart を聴いて初めてリチャード1世のことを知った

*3:舞台装置も人力で動かしてたりして、いちいち時代的