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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Verdi: Requiem at Teatro Monumental, Calle de Atocha 26022015

Concerts 2015 Frankfurt-Madrid

マドリードを拠点とするRTVE交響楽団および合唱団*1 の定期演奏会に行ってきた。

 f:id:Lyudmila:20150313212720j:plain  開演前。舞台はこんなかんじ

 まずはチケットの取り方。

スペインのチケット総合販売サイト entradas com.  に入り、ここの一番右端のカテゴリ(categorias)の conciertos からMúsica clásicaを選ぶ。次にTodos (都市)でマドリードを選ぶと、ずらずらと今後のマドリードでのコンサートが出てくる。そこから行きたい公演を選んでチケット購入ボタンぽち。 席のカテゴリを選ぶと、座席選択画面へ。買いたい席指定。あとは通常のチケット購入と同じ手続き。
席の選択画面に行ったところで、謎のスペイン語メッセージが出てきた*2。なにやら注意事項らしい。英語に翻訳してみてもよく意味がわからないため、スペイン在住かつ語学習者の友人を頼った。*3 いわくBANKIAというマドリードの銀行ATMでチケットを受け取る方式が推奨されている*4。劇場の窓口は混雑するからなるべく来るなと。
この時点ではホームプリントという選択肢は出てこなかった。
チケットの郵送料は国内10€、そして国外60€*5という驚きの値段が提示されていた。ということは絶対に郵送などする気はないと理解した。現地でBANKIAのシステムに挑戦すると決め、決裁を終えたところで、なんと ticket print のボタンが出たきたのだ。もちろんe-ticket なのでスマホに転送して保管可能。 郵送希望なんかしなくてよかった。

現地に行ってみたらプリントチケットなんて少なくとも私の前後で持っている人はいなかった。通常プリントはバーコードリーダーでチェックされるものだが、ここは違った。ろくに文面を見もせず、普通のチケットみたいにはじっこをぴりっ、と破ってくれただけだ。いいのか、それで。

 会場となるテアトロモニュメンタルは、マドリードの主要駅アトーチャ駅から地下鉄で一駅のAnton Martin 駅を出るとすぐ。歩道の脇になんのアプローチもなく入口がある。なるほど、窓口に並ぶなと注意されるわけだ。

建物はきれいとはいいがたく、ロビーも狭い。どうも普通のコンサートホールらしくないと思ったら、もともと映画館だったのを改装したホールなんだそうだ。座席数もそんなに多くない。ホールの椅子は私にはたっぷり大きく余裕があった。やはり舞台が高いので、3列目までは見上げるようになるため、5列目のかみて寄りの席をとった。*6放送響の本拠であり、放送前提としているホールであるから、音響はかなりドライで、ちょっとものたりなく思われる方もいるだろうが、残響が多いのがあまり得意じゃない私にはちょうどよかった。

満席ということもなく、ほどよく席は埋まっていて、地元の人たちがリラックスして聴きにきている雰囲気だった。ドレスアップ…なんすかそれ?みたいだし、私もちょっとドレッシーな黒のカットソーとレースのフレアスカートという格好にしておいてよかった。

G. Verdi: Requiem

Orquesta Sinfónica y Coro de RTVE Coro Nacional de España
Carlos Kalmar: director

Angelina Ruzzafante: soprano
Mª José Montiel: mezzosoprano
Aquiles Machado: tenor 
Evgeny Nikitin: bajo

直前までサイトではテノールはYosep Kang になっていたが、舞台に現れたその歌手はどう見ても韓国人ではない。配布された当日のプログラムにはAquiles Machado という名前が記載されていて、事前に変更のアナウンスもなかったので、当日変更したのではなかろう。びっくりしたが、このMachado がドラマティコないい声で、ヴェルディのレクイエムにはよく合っていると思った。メゾのMaria José Montiel は新国立劇場でもカルメンを歌ったことがある、艶がありしっとりとかつ伸びやかな声でたいへんなセクシーさ。地元出身ということもあり、ここにはたびたび出演している。大御所感がすごい。
対してソプラノのAngelina Ruzzafante は、容姿も声も少しまじめっぽく、いかにも教会で歌うのが似合いそうなタイプ。
私にとって重要なバスパート。やや軽めでクリアな声と上品でまっすぐな歌いまわしはいつもと変わらない。ときおり突き放したような音の切り方をする。音域の高い方にレンジが広がっているので、全音域で安定した美声が発揮できる。
メゾとテノールの声の質感(しなやかで艶があり、ビロードのようだ)、ソプラノとバスの質感(透明感があり、まっすぐでやや軽い)がそれぞれ合っていて、おもしろい効果をあげていたと思う。
ソリストたち相互、また合唱とぴったり合って一枚の音の織物を織り上げていくような演奏なのだ。経糸緯糸に異素材を使い、絵柄を織り出していくゴブラン織。
私は実際この演目を聴いたことは少ないし、録音も数ある中、そんなに聴いているほうではない。しかし、これだけソリストが合唱に溶け込み、かつ絵柄が文様のように浮き出す演奏を聴いたことがない。セクエンツィアでソリストそれぞれが転調しながら旋律を引き継いでいく部分と、ラクリモザでの独唱から合唱に引き継いでいく様の美しさといったら。
このオーケストラのシェフ、Carlos Kalmar の指揮、音楽づくりも私の好みに合っていた。あっさりと、洗練されていて、過剰にオペラチックではない。金管はしっかりサラウンドに聴こえ*7丁寧なつくりこみ感があった。

この前にちょうどラジオ放送を聴いていたLSO(ユロ兄指揮)のヴェルレクは、指揮者の采配は知的であり、合唱ももっと大規模で爆演だった。ソリスト(特にバス)がちょっと残念だったけど。LSOのオペークでがっちりとした演奏とRTVEのクリアでしなやかな演奏は好対照だと思った。
かようにあっさりとした演奏であったのに、なぜか途中で何度も涙を落としそうになりながら、最後まで息をのんだままきいてしまった。
この一時間半ほどの演奏一回のために、フランクフルトからマドリードまで飛んで、バカみたいと思わないこともなかったが*8、自分の大好きな声のために来て、こうしてこの演奏が聴けたことはやはり幸運なのだ。
ここの定期演奏会はたいてい2日同じ演目で、金曜日の分がrne radio clasica でライブ放送される。アーカイブでも聴けるのでどうぞ


Fila cero - Orquesta Sinfónica y Coro de RTVE - 27/02/15, Fila cero - RTVE.es A la Carta

いちおう私のyoutubeサブチャンネルの方にも全曲アップロードしてある

 

www.youtube.com

 

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f:id:Lyudmila:20150313233000j:plain テノールのMachadoの向こうにいるのが指揮者。すみません、わざとじゃないんです。私の席からだとこうなるの!むしろ今回で好きな指揮者のリスト入りですから!!

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諸事情により、ここでは出待ちはしなかった。*9
私が思いあまって欧州中、Nikitinの追っかけ*10を始めたのは、彼がバイロイト音楽祭のオランダ人を降りた後からだ。絶対このままでは終わらない、と信じて聴いていくことにした。そしてその後、たしかに全部完璧とはいかないが、それまでよりずっと成長し、進化し続けている。少なくとも、私が聴きにいったものでがっかりさせられたことはない。
バスバリトンとしては盛りの年齢ということもあろう。なにより、Maestro Gergievの厳しい指導と要求のもとで今日までマリインスキー劇場のリードバスとして生き残ってきたのだ。
彼とおしゃべりしていても、仕事のことはあまり話したがらないくせに、必ず一度はGergievについてのエピソードが出てくる。彼がいかにGergievとマリインスキー劇場を愛しているかがよくわかる。どうみてもまっとうじゃない外見とインタビューで正直にしゃべりすぎたり、態度が悪かったりするので誤解されてることが多いと思うけど、実際は勤勉ですごくまじめな人だ。*11 私ができる限りは、これからも応援していこうかな、と思う。

*1:創設は1965年という欧州では比較的新しい放送交響楽団だが、演奏技術は高いと評判。レパートリーは古典派から現代音楽までが多い

*2:ここだけは言語選択を英語にしてもスペイン語なのだ

*3:amanさんありがとう!

*4:たしかにこのATMは街中にいくつもあった

*5:チケットの値段の3倍

*6:あらかじめホール内の写真をみて予測できた

*7:PAか?

*8:それに特に有名なオケとかソリストがいるわけでなし

*9:もともと出待ちをすることはなかったのに、ここ数年ですっかりステージドアリサーチャーになってしまった。遺憾である

*10:私はこの言葉が好きではない。文字通りなんだが、何かもっといい表現はないものか

*11:オペラでいっしょに仕事をしたという人が「プロフェッショナルですごくいい人!」と絶賛していた。