リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Fidelio at Opera di Firenze 30042015

フィレンツェオペラ劇場は、2011年に新しい劇場が竣工。オペラは2013年から上演されるようになった。

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SMN駅から歩いて15分程*1。フィレンツェ五月音楽祭の創設者 Vittorio Gui の名を冠した広場が劇場の前に広がり、街中の騒がしさとは隔絶された静けさがある。
劇場自体はそれほど大きくないが、ホワイエとカフェは広く、オーディトリアム以外のところにやけに空間がある。今のところは新しいし、なかなか気持ちのよい建物だとは思う。*2

 フィレンツェ五月音楽祭で上演されるオペラのひとつ《フィデリオ》を観にのこのこと、苦手なイタリアまでやってきた。
4月30日、開演が8時30分からなので、8時15分頃劇場に着いた。普通に上演があるものと思い込んでいるから掲示など何も見なかったし、とりたてて異変も感じなかった。
実は席に着くまでそれに気がつかなかったのだ(恥)。
オケが舞台に乗っている…!!!合唱団用の椅子がその後に並んでいる…ということはコンサート形式でも上演はあるはず。
何の気配もなかったのに、突然舞台スタッフたちがショーペロをやらかしたということを瞬時に理解した。
何らかの方法でお知らせはあったものと思う。客席はがらがらだった。私の席の並びには、日本からの音楽ツアーの方々が座っていた。きいてみると、そこの添乗員さんは直前ではあるけど事前に知っていたようだ。今回初めてそのツアーにここが組み込まれたそうで、いきなりこんな目にあったら次回はないな。
当然開演前にアナウンス係が出てきて、舞台スタッフのショーペロにより云々、の言い訳があった。
上演は時間とおりに始まった。「コンチェルタントで行います」というアナウンスに偽りはなく「完全にコンサート形式」だった。
せりふの部分は全部抜いて、各人のアリアと重唱でつなげていく。2幕の舞台転換の位置に「レオノーレ序曲第3番」が入ったのは、短くなりすぎるからだと思ったが、後日実際の舞台上演でも入っていたので、これを入れる上演版だったのだ。
これが素晴らしかったので、ちょっと得だった。
歌手たちの衣装ももちろんなく*3、普段着なかんじの出で立ちだった。レオノーレ役 Ausrine Stundyte は、かろうじて見栄えのいいドレスを着て登場していたが。
各人非常にパワフルで歌唱に集中した丁寧な演奏だった。合唱がなぜか挙動不審で、遠慮がちだった。ドイツ語が苦手な連中なのかと憮然としてきいていたのだが、あとになるとまとまりがよくなってきた。舞台では合唱団にも演技付けがかなり細かにされていたし、拍子抜けしちゃっていたのかな。
2幕からしか出てこないフロレスタン、Burkhard Fritz のパワーアップぶりに感心した。
私は彼が好きだしひそかに応援している。地味で、これといって特徴がないけど、知的で堅実な歌いぶりというのは非常に好感が持てる。
一年半前に横浜であったドイツカンマーフィルの《フィデリオ》にも出ていたので、ご記憶の方も多いと思う*4
その時より高音が正確に出るようになって、ものすごく聴きやすかった。
演奏が終わったあと、客席からも舞台からもMaestro Mehta に絶大な拍手。もちろん演奏者全員にも。お疲れさまでした。

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とはいえ、もう一度コンサート形式を見るはめになるのかな…とちょっと暗い気持ちになって帰路についたのであった。

Don Fernando: Eike Wilm Schulte
Don Pizarro: Evgeny Nikitin
Florestan: Burkhard Fritz
Leonore: Ausrine Stundyte
Rocco: Manfred Hemm
Marzelline: Anna Virovlansky
Jaquino: Karl Michael Ebner
First prisoner: Pietro Picone
Second prisoner: Italo Proferisce

Conductor: Zubin Mehta
Orchestra and Choir of the Maggio Musicale Fiorentino

Maggio Danza

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ここの劇場は新しすぎてどこにステージドアがあるかわからなかった。
劇場でスタッフに訊ねたところ「あちらですよ」と、いちおう私が見当をつけたところを教えてくれたので、それを信じたところ、まったく違っていた。
この日はステージドアにたどり着けずに、後で怒られるという踏んだり蹴ったりの始末になってしまった。

 

*1:トラムの駅とバス停がすぐ近くにある

*2:数十年経った時にどう見えるかはわからない。ただの古くさい建築にみえるようになるのかも

*3:私のfavouriteはちゃんともってきてたのか、いつものコンサート用スーツだった

*4:「昨年横浜でもきいたよ!」と言ったら、「一年半前だね」とにっこりと訂正されてしまった。時の経つのがはやすぎてわかんなくなるのよ