リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

フィレンツェ、フレスコ三昧

見所が狭い範囲に集まっているフィレンツェ。また来るかどうかわからないので、いちおうウフィツィ美術館は入場予約をしていってみた。
入館までにとにかく並ぶ並ぶ。人の多さにまったくうんざりしてしまった。
たしかに好きなメムリンクやミケランジェロ、ラファエロの作品をたくさん見られたし、「ヴィーナスの誕生」やら「プリマヴェーラ」の実物は画集で眺めるのとはまったく違う。光と影の企画展もおもしろかったけど、やはり大量にありすぎるとどれも記憶に残らなくなってしまう。

大規模な美術館はもういいな*1、と思っていたところへ友人がサンマルコ(修道院)美術館をすすめてくれたので、そこに行くことにした。
フラ・アンジェリコの「受胎告知」がある美術館である。

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f:id:Lyudmila:20150511220454j:plain 私の好きなモチーフ「ノリ・メ・タンゲレ」

大きな作品は「受胎告知」であるが、もとの僧房には小さな画がある。


修道僧の生活がわかる展示もいくつかあり、それぞれ興味深いものだったが、目をみはったのは文書館だ。

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見事なイルミネーションの写本の数々。典礼用で、個人持ちではないためどれもが大きい。写字と装飾のためのインクや顔料、バインディングの道具などもガラスの展示箱の中に整然と並んでいた。写本マニアの私にはいつまでもいたくなる場所だった。

サンマルコ修道院の横、反対側の道沿いに、「スカルツォの回廊」と呼ばれる洗礼者ヨハネ信心会の修道院回廊がある。洗礼者ヨハネはフィレンツェの守護聖人でもある。
小規模な回廊の壁面全体はヨハネの生涯を描いたモノクロのフレスコで飾られている。

f:id:Lyudmila:20150512210420j:plain フレスコのリスト*2

f:id:Lyudmila:20150512210749j:plain ザカリアへのお告げ

サロメのダンス、なんて画もちゃんとあるし、保存状態は様々だがいずれも素晴らしい技術と温かさに満ちた作品群だった。モノクロームのため、彩色のあるフレスコよりはぼやけてみえるのだが、その繊細な陰影のため、はなれてみるとレリーフのようにも見える。
入口には名前を書くノートがあるだけで、観覧は無料。ふたりの尼僧が「写真はかまいません、フラッシュはだめです」(イタリア語でゆっくり)などと注意だけしてくれる。
開館時間は月・木・第1,3,5土曜日と第2,4日曜日の8:15〜13:50 と限られているのでご訪問の際には気をつけて。

その後はそこから少し離れた(歩いて500mほど)旧サンタポッローニア修道院の「カスターニョの最後の晩餐」を観に行った。

f:id:Lyudmila:20150512212818j:plain 入口はこんな。国旗が目印。

ここも11世紀頃にできた女子修道院だが、19世紀初頭に閉鎖され現在はカスターニョの美術館になっている。

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この他に三つの「キリストの受難」の絵画も観られる。これも実物を見なくては圧倒的なこの画の力というのはわからないと思う。
ミラノのダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のように時間制限もないし、こちらも無料でいつまでも見ていられる。ただし、ここも開館時間は8:15〜13:50。第2,4月曜日と第1,3,5日曜日が休館。*3 観覧は無料で名前を書くだけであるが、喜捨50セントを、私も受付の机に置いてきた。

他の美術館を見なくても、このサンマルコ広場周辺の静かな鑑賞でじゅうぶん満足。
いつもボケボケしていて劇場以外のことはあまり調べもしない私に、すてきな場所を教えてくださったみなさんに感謝。*4
ここだけは年をとったら再訪したいかも。

*1:これがベルリンやミュンヘンだとこう思わないのが不思議である。これほど人がいないせいだろうか

*2:ピンクのコートは写りこんじゃったわたくしです

*3:もちろん他と同様1/1,5/1,12/25はお休み

*4:すぐに行っちゃうので、旅先でも私がいかにヒマ人かわかってしまうが。