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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

LOHENGRIN at Het concertgebouw Amsterdam 18122015

2015 Amsterdam Opera

一年前は同じくアムステルダムのネザーランドオペラの方で《ローエングリン》を2回鑑賞した。

 

lyudmila-galahad.hatenadiary.jp

 

今年はコンセルトヘボウで演奏会形式*1 だ!とワクワク。オケはもちろんRCO、合唱はネザーランドオペラのコーラスだし、歌手はワーグナーのオールスターキャスト*2といえるメンツ。指揮者は当初 Andris Nelsons の予定だったが、肩の故障により降板、Sir Mark Elder に変更された。
また、どうしたわけか多少の演出がつくセミステージ形式の上演となり、舞台装置はないが、演技はけっこうしっかりあった。

Koninklijk Concertgebouworkest
Groot Omroepkoor Koor van De Nationale Opera
Sir Mark Elder - dirigent
Falk Struckmann - bas, Heinrich der Vogler
Klaus Florian Vogt - tenor, Lohengrin
Camilla Nylund - sopraan, Elsa von Brabant
Evgeny Nikitin - bas, Friedrich von Telramund
Katarina Dalayman - sopraan, Ortrud
Samuel Youn - bas-bariton, Heerrufer des Königs

 ポディウム席の半分はコーラスのメンバーで埋まり、さらに舞台を少し手前に出していたので、前方の席は3列目まではなくなっていた。
中央の通路から舞台までに階段が設えられ、そこでなにごとかされることは自明だった。
コンヘボでは指揮者、ソリストはたいてい二階の扉から登場し、階段をさっそうと降りてくる。
演奏が始まると、登場順に階段の上にソリストが姿を現す。
ところが、エルザとローエングリンは花道よろしく客席後方の扉から現れたのだ。
ローエングリン登場時というのは、ただでさえもったいぶったかんじなのに、この登場というのがどう反応したらいいのか…お伴の白鳥が左腕に手袋みたいな白鳥の首をはめ、衣装はフリルがついた白いスーツの男性ダンサーだったのだ。そいつがくねくねしながらローエングリンを先導してくる。コントかと思った。
この白鳥ダンサーは、常にそこかしこに現れてくねくね(たいへん鳥っぽい仕草ではあるが)しているので、気になってしかたなかった。
装置や衣装(女声陣は役柄に合ったドレスを着用していたが)がなく、移動する場所が少ないなりにかなり工夫した演出になっていたとは思う。
特にオルトルートの魔力の象徴と思しき、彼女のマスクをかぶった数人*3が客席や舞台に配置されていたり、テルラムント伯やオルトルートは客席二階バルコンで歌う場面があったりなど。
ローエングリンとエルザ、テルラムント伯夫妻には、かなりの演技付けがされていたので当然なのだが、譜面を持っていたのは王様だけ*4だった。譜面台など置いてる場合じゃないので、お手持ちで。
そして演奏はといえば、これはもう申し分なかった。
おそらく多くの人が「世界一のローエングリン」と認めているだろう、Vogt の清澄極まりない歌唱。以前聴いた時よりも、少し重みが増し、高音の細く抜けるようなところがなくなったような気がした。
やや重めであるが、静的で柔らかいNylundの声とも合っている。*5
最初から最後まで声量の配分もぴったりだった。
王様は実は、最近の録音など聴くと、ずいぶん年寄りっぽい歌唱になってしまっていたので、ものすごく心配していた。へろへろに歌われたらどうしよう〜、などと。
しかしこれはまったく杞憂。さすが Struckmann であった。見た目も今はこういう役柄の方が似合ってきているのだろう。
伝令の Youn、この人の声は少し暗いところがあるのだが、こちらもよく歌う役。見た目の若々しさと声自体の張りが頼もしい。
オルトルートとテルラムント伯、Dalaymanも Nikitinも凛とした品のあるタイプの声なので、この役柄の身分の高さと矜持がじゅうぶんに感じられる。Dalayman のあまり表情を変えない演技が、彼女のマスクをつけて立つ人々と一致して、不気味だった。
Nikitin は、近年この役もお得意なので、パフォーマンスとしては最上級。余裕で客席スキャンしてるのがまるわかりなのは、ちょっと気をつけたほうがいいと思う。
Sir Mark Elder の音楽はごく丁寧で、きっちり。あるべきところに音がある、というつくりであったが、枠を超えないなかでも熱が入っているのがよくわかった。合唱はこれまた迫力で、ソリストが入って歌うと、彼らが負けじと張り上げるのでとんでもない爆演状態になっていた。
全体の音の密度が非常に高く、聞き応えのあり、ほんとうにあっというまに5時間近くの演奏が終わってしまった。

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この演奏会は12/27 の日本時間22時からNPO radio4 で放送されるので、ぜひご一聴を。

www.radio4.nl

 

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私のfavouriteからは「終演後忙しい…」と連絡をもらっていたのだけど、ステージドアには出てくるかな(結局そこからは出てこなかった。楽屋口としてはそこだけだが、ボックスオフィス側の通常出入口を使うのかも)と、行ってみた。けっこう人が待っていて、その中にすぐ近くにお住まいという*6、ソリストの写真をたくさん持ったおじさんがいた。
おもしろい人で、とりわけNylundがお気に入りのよう。彼女が出てくると「Camillaは美人で歌も素晴らしくて、おまけにオランダ語もしゃべれるんだよ〜」とベタ誉め。オランダ語がしゃべれるかどうかはわからないが、私は彼女をアムステルダムで聴くのも二度目だし、ここでイチオシの歌手なんだと思う。
誉めつづけるおじさんを軽くいなして、彼女は私たちに向き直り「日本からね?私、来年2月、3月にNew National Theatre Tokyoに行くのよ」(え!どうしよう…知らない…何の演目?????て、そんなこと言えない)「はい!楽しみにしております!たくさんの人があなたをお待ちしています」「ええ、待っててね、またあちらで会いましょう」しっかり目を見て手を握ってくださって、美人に弱い私はふにゃふにゃ。(二度目の公演の後にもいて、また握手してくれたりしたので、きっと私が彼女のすごいファンだと思ったことだろう)。で、失礼にもその時点では把握していなかった、彼女が歌う新国立劇場の演目は《サロメ》⇒⇒⇒ 
やはりファンが多いVogtさんは、忙しそうに劇場の中と楽屋口をいったりきたりしながら、待っている人たちにサインをしたり写真撮影に応じたりしていた。

*1:私はこの作品が大好きなので、へたな演出がつくよりは音楽だけ聴かせてもらったほうがありがたいのだ

*2:ローエングリンと王様がドイツ人(Younもたしか現国籍はドイツ)、Nylund がフィンランド Dalayman がスウェーデン、 Nikitin はロシア人だが、ルーツはノルウェー(と本人が言い張っている)みごとに北よりのヨーロッパ出身者、バリバリのワグネリアンシンガーばかりだ

*3:これについては二度目の鑑賞の時にどういうものかきくことができたので、そちらの記事にまわす

*4:皆様ご存知と思うが、Struckmannといえば今まではテルラムント伯役だったのだから

*5:このふたり、見た目も長身美男美女であるから、ぴったりなのである

*6:たしかに自転車で、バイバーイと叫びつつ近くの住宅街へ走り去っていった