リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

TOSCA at Wiener Staatsoper 10022016

「稼ぎに来てるのに、ギャラをもらわずに帰るなど言語道断。必ず歌う*1」との宣言通り、我がfavouriteは復活。しかし今回はアンジェロッティ役と堂守役が降板。

f:id:Lyudmila:20160225131605j:plain ← はじっこのピンクの紙に変更が記載されていた。

 

Patrick Lange: Dirigent
Margarethe Wallmann: Regie

Angela Gheorghiu: Floria Tosca
Jorge de Leon: Mario Cavaradossi
Evgeny Nikitin: Baron Scarpia

 ウィーン国立歌劇場の現行舞台は、1992年に亡くなったMargarethe Wallmannの演出を使用している。オーセンティックな、昔ながらの「オペラ~」というものだ。
《トスカ》の舞台設定は1800年6月17日、ローマ。そこから一ミリも逸脱していない。トスカのドレスはエンパイアラインだし、スカルピアはちゃんと制服的なカツラを装着*2している。
舞台装置もきっちりとピリオド感があるものだ。最後にサンタンジェロ城でトスカが身投げするところ、下がどうなっているのかわからないが、初日にAngelaは一瞬ためらっていた。けっこう高さがあるから、やっぱり怖い思いはするんだろうな。でも一瞬のためらいはもしかしたら、演技かもしれない。《トスカ》というオペラそのものに興味がない私が、ちょっとだけトスカに感情移入できたから。そういうところもさすがAngelaである。
トスカという人物はいったいどういう女なのか。私にはよくわからない。強いのか弱いのか。「歌に生き、愛に生き」の内容とか、カバラドッシが言うように、優しくて信心深く、女性らしい…(好きではない言いつつ上演機会は多い作品だから、私もそれなりの回数は観ている)というキャラクターを体現したようなトスカは、観たことないような気がする。
気が強く、美しいプリマドンナ、というキャラクターだとしたら、それにぴったりだったのは、今回のAngelaだ。
努力の賜物と思われるが、本当に美しい。そして声が強い。最初から最後までAngela劇場だった。
つい最近新国立劇場でも歌っていたカバラドッシ役のJorge de Leon*3も、たいへん声がよく出る人で、長々歌っていても声量が減らない。かなり立派だった。
実は一番割をくっていたのは、他ならぬ私のfavouriteで、Angelaの後で聴くと、なんとなくものたりない気がしてならなかった。
(病み上がりだったため、一幕終わりの「テ・デウム」とかもうヒヤヒヤしながら聴いていたのだが、そちらはきっちり合唱もオケも乗り越えて歌いおおせていた)
まあ、言ってみれば、品が良すぎる。あくどいかんじがまったくないため、Angelaの強く鋭い声と完全に分離していた。
ホームのマリインスキ劇場では、それこそなんでも歌っているが、プッチーニとかそもそも向いてないやろ…。
Angelaが怖すぎというのもあったが、殺されかたは上手だった。Volleとは倒れる方向も演技も違っていて、Volleの時は、かなり唐突な倒れ方だったので、観客からちょっと笑いが出たほどだった。
演奏の方も、もちろん正統的で「声」を引き立てるものだった。何人もプリマドンナのお歌のじゃまをしてはならないのだ。
私はほんとにプッチーニの音楽の聴き方がわからない。どなたか教えてくださらないかなあ。
とりあえず、ヨーロッパでのロールデビューを確認するという、今回の私のお仕事はこれにて完了。

f:id:Lyudmila:20160224111927j:plain  メインキャストがシェアしてたFBのお写真

********************

楽屋口を入ったところは、出待ちの人でごったがえしていた。すると見たことのある丸顔のおじさんが登場。誰かが「Ramón Vargas!」と呼びかけた。たちまち彼もサイン攻勢にあった。数日後に上演される《マノン》のために、彼もここに来ていたのだろう。客席にはDiana Damrauがいたとも報告されていた。
Angela様はいつも最後にご登場される。写真を撮る人が多い。私も撮らせていただきたかったが、人を避けることが難しいので断念。
お美しいが、すごい厚化粧とちょっと変わったファッションセンスに気圧されるから、余計なおしゃべりなどはできる雰囲気ではない。
諸事情により、今回も私のfavouriteは、別出口から脱出。彼を待っていた人もたくさんいたのだけど…。

*1:職業なんだからそれはごもっとも…。うまく説明できないんだけど、もやもや感。私、観客だし、なんかもうちょっと夢のあること言ってほしい

*2:本来の彼の身体特性というかスタイルをそのまま使ってくれるドイツやオランダとは違うが、制限があるのにもすっかり慣れたようだ。ピアスも指輪もちゃんとはずしていた

*3:失礼にも全然知らず、Angela様が連れてきたイケメンなテノールだと思っていた