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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

3月観たもの聴いたもの、まとめて

予告どおりに、Stanislav Kochanovskyの日本デビューのため、オーチャードホールまで行ってきた。

私が彼の演奏の録音を聴いたのが2年前。それ以後、彼の活躍は目覚ましく、ヨーロッパ中を飛びまわっているようだ。地元のマリインスキ劇場でも頻繁にオペラを振るようになった。

トピックス | N響オーチャード定期2015-2016シリーズ | Bunkamura

彼の指揮ぶり、音楽づくりというのは丁寧で、演奏するオーケストラに対して最大限の敬意を払って指揮をしているというのがよくわかる。
まだ若いこともあって、自己主張はあまりなくスマート、という感じか。
N響とのコンビネーションもぴったりで、チェロコンチェルトの2楽章は非常に美しかった。金管群の正確さが、さすがN響。きれいな倍音が鳴っていた。
また、今回のチェロコンチェルトでもそうなのだが、私が考えるKochanovskyの優れたところは、ソリストをうまく演奏させ引き立てるという点だ。
オーケストラとのバランスが絶妙で、ソロの音を格段に浮き上がらせる。
最初に持った印象とまったく変わらない采配ぶりに、うれしくなった。
次は彼が振るオペラをぜひ聞いてみたい。
終演後、歓迎と感想を伝えようと、オーチャードホールのステージドアで、待ってみた。出待ちの人は少なく、男性ばかりだった。
「私はヨーロッパにはよく行くんだけど、ロシアは行ったことないんだ」
「サンクトペテルブルクにおいでよ。来なきゃいけないよ、君は」
(そうですね、行きたいんですけどね…)
実際にお会いすると、意外と小柄でもの静か、都会的な人だった。話し方もやさしく、どっかのうるさくてでっかいお兄さんとはえらい違いだな。

 オーチャードホールの翌日は新国立劇場の《サロメ》初日を観に行った。ヘロディアスを《イェヌーファ》にも出演しているHanna Schwarzが急遽歌うことになったということで、高齢の彼女が連日大丈夫かと思った。開演前に前日の《イェヌーファ》でも、突出して元気なデカ声だったと見た方からうかがったが、そのとおり。
私は彼女のヘロディアスを一昨年に見ている。その時も(実際の年齢を全く知らなかったし)、年期は感じるが年齢は感じない歌唱だった。
ヘロデのFranz、ナラボート、小姓もそれぞれ余裕で立派。ヨカナーンは、私はfavouriteの声が耳についているので、Grimsleyの声も変換してしまう。それでもけっこう引き戻されるかんじだった。この方、お若いと思いこんでいたのだが、実際アラ還ときいてものすごくびっくりしてしまった。
年末からなぜか定期的に聴くことになったNylund。踊りもちゃんと自分で踊っちゃうし、パワフル。世界中飛び回って歌っているのに、パワーが落ちないのがすごい。
ただかなり力まかせ、に感じないこともない…。
終演後に、楽屋口に行ったら、すごい人。日本人ってもしかして世界一サイン収集に熱心かも。外国の劇場のプログラムやら、どこで撮ったのか、という歌手さんたちの写真やら、サインネタを皆さんどーしてそんなに持ってるの?
Camillaさんには永遠に近寄れないかと思うほど、たくさんの人に囲まれていた。
それでもなんとかたどりついて再会を喜ぶことができた。

f:id:Lyudmila:20160327211036j:plain かなりお疲れ。ぼーぜんとなさっている一瞬も。

 

f:id:Lyudmila:20160327211117j:plain アラ還には見えない人

この演奏会のついでに上野でカラバッジョ展とボッティチェリ展を観に行った。
カラバッジョの方は、世界初公開の「マグダラのマリアの法悦」のために大混雑かとびびりつつ出かけてみたが、それほどでもなく余裕をもって観られた。世界初公開の作品より、要所要所にあるカラバッジョの武勇伝つき解説がおもしろかった。
ボッティチェリもそうだが、「工房」作品が多い。
私としてはボッティチェリ展の方がよかったかな。

もうひとつ、今月のメインイベント、Anna Netrebkoと彼女のダンナさんYusif Eyvazovのコンサート。
Annaが日本に来るのはひさしぶり。以前の可憐な雰囲気ではなく、すっかり世界のディーヴァ然としていた。
プログラムはほとんど私の守備範囲のものではなかったが、彼女のアリアはどれもそのオペラ作品全体を凝縮したものだった。
特に演技をする、というわけではない。一瞬でその役柄に入ってしまうようで、こちらも一緒にその舞台にすっとひきこまれるのだ。
10年程前にはあった、頼りなげなはかない部分は影をひそめ、芳醇な声と自信にあふれた物腰にほれぼれ。
「ついで」感がすごいダンナさんも、なかなかにがんばるテノールで、声がとにかくデカい。力があって声質もいいのだが、おおざっぱ。*1
しかしデュエット終わってからAnnaが「あなた、よくやったわね」とねぎらう様子を見せられると、こちらも「うん…、がんばってて、もしかしたら素晴らしかったのかもしれない…」と首を傾げながら認めてしまうような…。不思議な雰囲気ではあった。
お若いみたいだし、これからもAnnaを引き立ててがんばっていくことだろう。
《アンドレア・シェニエ》のデュエットの時、最後に「アンドレア・シェニエ!」と呼ぶ役、白いスーツのおじさまが舞台袖にいきなり出てきて呼ばわったのでびっくりした。慣れてる様子に誰だろう、と思ったら、マネジャー氏であったもよう。good jobだった。
アンコールの《チャルダーシュの女王》、可愛かった!

 

 

 

 

*1:席が最前列でAnnaの目の前という好条件が仇になり、彼が歌うときには耳が痛くなってしまった