リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

オペラのドレスコード?

新国立劇場がバイラルマーケティングを始めたのかと思った。
バズったのはこちら(炎上というには気の毒だし

togetter.com

新国立劇場さんが後でツィートなさっていたとおり、運営サイドとしては撮影に劇場を使用されたのでご紹介というのがほんとのところだと思う。
なにもこんな恰好で入場しないといけないとか、お客にはこのようにドレスアップして来てほしいと(たぶん)のお考えではないだろう。
劇場によく行っている人々は、観客や自分がこのような服装をしていないということはよく知っている。失敗は、これから行こうとちらっとでも考えた人に対して思い切り敷居を高くしてしまったことだ。
そのため「実際にこんな服装の人はいない」と、いう意見が続出したのだと思う。
逆にいいところもあったと思う。ここからちょっと興味をひかれた人々も少なからずいただろう。なんにせよ、名前とやっていることを知られなくては、劇場もオペラも認知度は上がらない。
私がこれはもしかしたらバイラルマーケティングかと考えたのは、そういうことだ。

 ところで「オペラやクラシックコンサートに出かける時の服装」というのは、行く頻度が高い人でも時々は気になるものだと思う。知らない劇場や音楽祭に行く時だ。
新しくオープンしたヴェニューに行く友人に突然「ドレスコードどんな?」ときかれたことがある。行ったことないからわかりません!
不安になるのはよくわかるが、私の印象では、どこに行っても年々カジュアルになっているので、一般人がロングドレスやタキシードなど着なくてはならない場はないような気がする。音楽祭やシーズンオープニングでエクスクルーシブな公演があるヴェニューも存在する。しかしそもそも庶民はそんなとこには行かないのでドレスや宝石の心配をする必要はない。
私の少ない経験内で、上記の服装に近い観客を見たのはスカラ座のシーズンオープニングだ。*1 その時私は着物で、たまたまいっしょに行くことになった現地在住の人は私に合わせてタキシードを着てきてくださった。それでもタキシードの男性は数えるほどで、男女とも黒のスーツやブラックドレスが多かった。
そもそもドレスコードというのも、都市伝説のようなものになっていて、それを明記しているのはグラインドボーン音楽祭くらいだと思う。

www.glyndebourne.com

ここに書かれているドレスコードの理由、それは私の考えと同じだ。
演奏家や劇場に敬意を表するためにドレスアップをすることは重要だと考えている。かといって普通のヴェニューにイブニングドレスで行ったら完全に浮くと思う。
そこで便利なのが、日本人の場合「和服」なんである。目立ちはするが、少なくともクラシック音楽の演奏会ではどこでも浮くことはない。
目立つのがいやな人はやめた方がよいが、外国でも日本でも場違い感というのは驚くほどない。新国立劇場でも、イブニングドレスの人はいなくても和服の人の方はよく見かける。男性でも「浮く」のではなく目立ってステキ、なのだ。

そうは言っても毎度敬意を表するためにドレスアップするのは、日常の延長で演奏会に行く場合にはありえない。女性ならお仕事服を少しドレッシーにしたかんじ、男性ならスーツでいいんじゃないかな。

私もせっせと着物でオペラに出かけるが、それはfavouriteのために着ているのであって、彼と関係ないものにはけっこう(浮かない程度に)カジュアルな格好で行っている。それと遠征の場所とか荷物の問題もあるので、そう単純にはいかない場合もある。
ともあれ、衣装の話題は女性にはけっこう楽しいことである。

*1:もちろん値段が普段の10倍になるほんとの初日ではなく、一般価格のオープニングの日