リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Béjart Ballet Lausanne 魔笛 18112017

Maurice Béjartは10年前の2007年11月22日に亡くなった。
東京文化会館のロビーにはこのパネル(ネコかわいい)

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私も3年前に第九交響曲で久しぶりにBBLのパフォーマンスを見た時に、Béjartの存命の時とは変わったんだなと思っていたが、今回の公演でもそのような感想をよく見かけた。私はそれが悪いとは思っていない。
パフォーマンスのレベルは高いし、作品に対するリスペクトは感じる。
ただ求心力を失っているのかもしれない。ちょっと寂しい。
私はBéjartのダンスは、ストーリーを物語るものではなく、音楽を表すものだと思う。
だからといって超絶技巧の歌唱に対応して技巧的な振付をしているのではない。
音の表現する感情であったり、象徴的な事象を目に見える形で表現している。それが簡素な舞台装置とコールドと一体化しているように見え、演出自体優れたものだと思う。
物語は語り手である弁者に委ねられる。語りはフランス語。音楽の歌唱部分は、ベルリンフィルの音源をそのまま使用しているのでもちろんドイツ語だ。ジングシュピールの語りの部分は省かれている。
善悪二元論とフリーメイソンの教義と思しきものが、コンセプトとしてある。舞台の幕が開き、最初に現れるのは五芒星の中央に横たわる弁者の姿。ここでもうスピリチュアルな雰囲気満載なのだ。
☓十年前にテレビ放送で初めてこの作品を見た時の、パミーナの白いレオタードばかりが記憶に残っていて、全体を無彩色だと思い込んでいたので実際の舞台がクレーかカンディンスキーの絵画みたいだったのにはちょっと驚いた。
そしてまあ、なんとJulien Favreau*1 のザラストロがすてきだったこと。オペラの《魔笛》の主役もザラストロだと思っているので、我が意を得たりってとこかな。
こういう舞台では、オケ付きでなく録音を音楽として使用する。私も生オケのほうがいい*2とは思うが、そういうもんだとすれば気にはならない。再生環境がいいところで、優れた演奏の録音であればそれなりに聴けるし。
コンテンポラリーの作品の場合、表現が優れていれば音源はあまり気にならないということもある。
とにかく久しぶりにBBLの魔笛に会えて、よかった。

 

 

*1:この人出てくるとやっぱり舞台の雰囲気が一変するのだ

*2:ロシアの劇場なんかはオケ付きで来るので、比較的クラオタ率も高い