リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

パリの人類学博物館

私はフォークロアが好きだ。音楽に限らず民俗学の分野全般に関心がある。神話伝説など伝承文学、伝統音楽、伝統楽器、少数言語、庶民の生活史等伝承の類別は問わない。
なかでも特にフォークカトリシズム*1を代表とする土着の信仰とメジャーな宗教との融合や少数言語の保存について。
愛徳姉妹会のメダイユ教会*2やカタコンブにも行きたかったが、なにしろ滞在日数が少ないのでそちらは次回に回すことにして、今回はシャイヨー劇場に近いふたつの人類学博物館に行ってみた。

 まずはエッフェル塔に近いケブランリー美術館ことMMMに行った。周囲の景観に溶け込む建物と中庭の造形が素晴らしい。ヨーロッパ以外の文明と芸術が常設展示の基本。
セーヌ河沿いの道をエッフェル塔方面に歩いていくと、わかりにくい入口がある。荷物検査の関所を通るとチケット売場(さらにその先の建物本体)まで行くにはちょっとした森の中の小道みたいのをたどることになる。蚊がたくさんいそうなかんじ。虫よけスプレーがあったらよかったなと思った。企画展はちょうど「アジアのお化け」というのをやっていたので常設と合わせて12€(別々だと10€ずつとられる)のコンビチケットを購入し、11時の開館まで(まだ10時すぎたところだった)敷地内のカフェで待つことにした。

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カフェから見たエッフェル塔

開館時間少しすぎにおもむろに入場。人も少なく余裕で見られる。さっそく企画展へ。
中国、韓国、タイ、ベトナム、ハイチ(?)、日本の妖怪怨霊の類の絵画、オブジェなどの展示。入口に「お子様の観覧注意」の表示。いきなり地獄絵図がくり広がる。我が日本の幽霊代表は「東海道四谷怪談」のお岩さんと「番町皿屋敷」のお菊さん。お岩さんは「Japanese ghost star」なんだそうだ。昔よくテレビで放送があった怪談ドラマとか寺山修司のなんか怖い映画のワンシーンとかのビデオがあった。昭和な怪談映画ポスター展示などは日本でもあまり見られないのでは。妖怪はやはり水木先生の「ゲゲゲの鬼太郎」から。日野日出志の漫画も展示があった。

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妖怪ラインナップ

中国はキョンシー、タイやベトナムの妖怪はよくわからなかった。ハイチのブードゥー教についてはゾンビが外せないので入れられていたのか。途中で展示室に他の人がいなくなってしまったのがちょっと不気味だった。
なぜかお茶やら手ぬぐいやら日本のお土産がたくさんあるミュージアムショップをのぞいてから常設展示を見物。こちらは様々な地域の民俗的な資料展示になっている。民族衣装や伝統的な楽器や工芸品など。建物が新しく細長い設計なので、見やすい動線が取られていた。

MMMを出てからシャイヨー 宮に向かった。セーヌ河畔の道は砂地のため歩きにくいし砂埃が大変。トロカデロ駅から行く方がよかった。

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シャイヨー宮の庭からのエッフェル塔

トロカデロ駅の近くでランチをとり、シャイヨー劇場の隣にあるMusée de l'Homme(人類博物館)に入場。こちらは人類と文明の進化と歴史が主な展示。
世界の言語分布マップ、随所にある解説タッチパネルなどインタラクティブなコーナーが多い。比較的最近改装されたと思われる。MMMより人類学生物学的内容だった。
今回のミュージアム巡りはこれでおしまい。いつもいきあたりばったりだけど、楽しいものに出会えている…と思う。

*1:「ローマカトリック教会の長女」であるフランス国ではこの点追及するネタも多くある

*2:奇跡のメダイを大量に販売していることで有名だが、ここには「地球の聖母」といわれる聖母の出現に立ち会ったカトリーヌ・ラブレーの遺体が安置されている。ルルドの聖女ベルナデッタもそうだが、腐敗しない遺体というのも聖人認定の際には重要な判定基準になる。《ボリス・ゴドゥノフ》で言及されるウグリチのドミトリ皇子も正教会で列聖されている。これは劇中でシュイスキーが「他の遺体と異なり、眠っているかのような…」と腐敗していない状況を描写していることで、列聖の基準をクリアしていることがわかる。もうひとつは彼の名のもとに盲目の翁の目が見えるようになったという奇跡に拠る