リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

ジーザス・クライスト=スーパースター ミレニアム版

私はロックオペラ、ジーザス・クライスト=スーパースターが大好きで、大昔にレコードを買った記憶がある。今どこにやってしまったかわからない。

 

ジーザス・クライスト=スーパースター(1973) [Blu-ray]

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有名な映画版を見てその後劇団四季のふたつのバージョンを何度か観てきた。
楽曲がとにかく好きなのだ。
歌唱と演出は1973年の映画版がとにかく優れていると思う。70年代ロックとヒッピー文化満載で、劇中劇の体裁をとっているのであまり悲壮な雰囲気になっていないところもいい。
で、おくればせながらNYCの新演出舞台版がテレビフィルムとして映像化されているというので見てみた。これがたいへんおもしろかったのである。

ジーザス・クライスト=スーパースター (2000) [Blu-ray]

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1973年版はジーザスがいかにも教組らしい。細くて柔和な外見と落ち着きがあり、物腰も歌も優しく思慮深い。 見た時は、これでも結構キてるなと思ったけどミレニアム版の弾けっぷりははるかに上をいっている。

 まず使徒たちがみんな細マッチョイケメン(一部除く)。無駄にかっこいい。ジーザスはどういうわけか随分と子供っぽく描かれている。子犬系で可愛い。指導者的な部分が全くうかがえない。何かあるとブチきれたり拗ねたりする。ユダに対してものすごく愛情と信頼感を持っていて、ユダはジーザスの保護者のようだ。
マグダラのマリアにも甘えっぱなし。ジーザスとユダとマリアとは熾烈な三角関係と見える。全体に聖書の描く救世主の物語というより、世の中に抵抗する若者たちの物語になっている。
すごいな、と思ったのはエルサレム入城のホサナから熱心党のシモンと民衆の大騒ぎ

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ご覧ください、このシモンのイケメンぶり。かっけ〜〜!カラシニコフのAK101シリーズ配っちゃってこりゃテロリストの集団。というかもともと熱心党というのはローマ帝国時代にローマの支配に抵抗する過激派組織だったので、これは正しい。
ジーザスが「こんなことになっちゃってどうしよう…、いや、蜂起なんかしたくないって!」と言わんばかり。
このあとどんどん組織は危うくなり、ジーザスは捕まってしまう。この版の演出の巧さは、ユダは決して裏切り者でも浅慮でもないということ。彼の決断は必然であると思わせるところだろう。そしてそれでもなおジーザスはユダを愛し、信頼しており最後まで二人は一心同体だ。
私はローマ総督ピラトが好きなんだが、ミレニアム版の宇梶剛士を上品にしたようなピラトも超お気に入り。すごい響く声と顔芸が面白すぎるし大見得の切り方が歌舞伎っぽい。「どうしてもお前を助けたい」というところでは、なにこれBL?っつーくらいジーザスへの愛を隠さない。

youtu.be

そしてジーザスとユダは苦しみ抜く。あまりこういう描写はないと思うが、ジーザスの苦しみ痛がる様子がリアルなのだ。
磔になる前の第24曲「Sperstar」で歌の合間にジーザスとユダは会話をしている。
ジーザスはユダに「help me」と言っているようだ。神の意志を「わからない」と言いつつ成就させようとしているのはユダのほうだ。

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Help me

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これは「ホサナ」の一場面。常にこんな二人

「こいつらお前に死ね、って言ってるぞ、どーすんだよ」「そ、そんなたいそうな…どーなっちゃうの」
このユダ役のジェローム・プラドンもとても気に入ってしまった。まだ俳優としては舞台に出ているようなのでいつか見たいなあと思う。
それとこの時点のこの方、ヘアスタイルのせいだけではなく今秋初来日する、カウンターテナーのフランコ・ファジョーリに似ている。

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Jérôme Jacques Olivier Marie Pradon

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Franco Fagioli