リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Götterdämmerung (Le Crépuscule des dieux) at Philharmonie de Paris 23092018

リング4作品の中で最長の《神々の黄昏》を、演奏会形式で聴くにはかなり忍耐がいる。私はこの作品が大好きであるし、妙な演出ならない方がいいので演奏会形式大歓迎だが、登場人物が誰かわかるようなアイコンがあるといいなと思った。マリインスキオペラの親分Gergievが育てたワーグナーチルドレンの精鋭がこの日舞台に乗っていた。男性キャラクターのスキンヘッド率80%*1聴き分けはつくが見分けがつかん!いや、もう舞台なんかないんだから見るなってことか!

Orchestre et Choeur du Mariinsky
Valery Gergiev, direction
Tatiana Pavlovskaya, Brünnhilde
Mikhaïl Vekua, Siegfried
Roman Burdenko, Alberich
Olga Savova, Waltraute
Elena Stikhina, Gutrune
Evgeny Nikitin, Gunther
Mikhaïl Petrenko, Hagen
Zhanna Dombrovskaya, Woglinde, Third Norn
Irina Vasilieva, Wellgunde, Second Norn
Ekaterina Sergeeva, Flosshilde, First Norn
Marina Mishuk, chef de chant
Pavel Petrenko, chef de choeur

 《ワルキューレ》《ジークフリート》《神々の黄昏》の1幕目はとにかく長い。なぜかというと「これまでのあらすじ」タイムがあるからだ。ありがた迷惑と思うこともあるが、《神々の黄昏》ではあらすじ担当の3人のノルンがいかにも北欧神話的な雰囲気を出してくれるので、その点も好きなところだ。
今回は合唱が入るのでオケの後ろにソリスト、そのまた後ろに合唱が並んでいた。*2
舞台がない、ということは演技がついた場合にできる「間」がない。フレージングと表情で演技はついていると言えるが、実際に身体を移動させることはないのでかなりのスピード感を持って音楽は進む。
時々気が抜けたようになることもあるが、推進力があるオケなので、歌と器楽だけの部分の区別がなく、一続きの物語として音がある。そのため、気がつくと肝心な場面が終わっていたりして、いいのか悪いのかわからなかった。
寝落ちしていたわけではないのに、気がついたらもうジークフリートの葬送が演奏されていた…。ブリュンヒルデの自己犠牲もかなりあっさり。
歌手には余裕があってよかったのだが、拍子抜けするほどすぐ終わってしまったように思う。
ソリストはそれぞれ好演。昨日のブリュンヒルデはグートルーネを担当し、ヴォータンは(いつも通り)グンター担当。
年季の入ってきたPetrenkoのハーゲンとBurdenkoのアルベリヒが白眉だった。
ジークフリートは昨日から続投。Vekuaはもっと他の劇場でも歌っていいと思う。ジークフリート役は不足しているようなので、ぜひ活躍してほしい。
ブリュンヒルデは一気に貫禄のある Pavlovskayaに代わり、大喝采を受けていた。
マリインスキーのソリストによくあるタイプで、あまりにもいろんな役柄を歌うために憑依型にはならないというのが欠点か。必要以上にドラマティックではなく、声質もそれほど重さを感じないのであっさり、だった。
昨日のさすらい人に引き続き、Zhenyaの歌唱は完璧だった。実は今年3月の、《ワルキューレ》ではベルリンフィルの《パルシファル》の合間に歌ったため、声が減衰して散々な出来だったようなのだが、ここでリベンジが成功してよかった。輝きのある声と他の誰よりも完全なドイツ語ディクションは彼の強みだ。二作でこれが堪能できたことは私にとって大変幸せだった。

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みごとにスキンヘッドだらけでしょ

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この後、この人たちはなんとオマーンに引っ越し公演に行ってしまったのである。
親分は翌日からミュンヘンフィルに戻っている。ほんと、どうかしてる。



*1:4人のうち3人がスキンヘッド、Zhenyaが半分剃ってるという妙なヘアスタイルをしていたので80%とした

*2:男声合唱活躍するハーゲンの掛け声でギービヒの輩が集まる場面大好き