リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

驚異のカウンターテナーズ&テノール Artaserse @ Oper Köln 27.12.2012

ナンシーを皮切りにツアーの先々で激賞されてきた『アルタセルセ』プロジェクト。 最終日に突撃してまいりました。
ケルンオペラは現在改装中で、まんまミュージカル用のテントのような仮小屋が中央駅のすぐそばにあります。 キャッツシアターの中に、オペラ劇場の座席が並んでいる状態を考えてください、そんなかんじ。
ミュージカルを想定しているのでしょうから音響板なし、音響調整たぶんなし。 外の音(救急車のサイレン) 聞こえる、と必ずしも良い条件とは思われませんでしたが、ダイレクトで真摯な演奏を聞くことができたと思います。 それぞれの生の音、声の個性がよくわかりました。
チケット完売につき、ほんとに満席。

Leonardo Vinci   ARTASERSE

Artaserse : Phillipe Jaroussky
Mandane : Max Emanuel Cencic
Artabano : Juan Sancho
Arbace : Franco Fagioli
Semira : Valer Barna-Sabadus
Megabise : Yuriy Minenko

Conductor : Gianluca Capuano
Orchestra : Concerto Koeln

 風邪が流行っているということで、キャストチェンジがないか心配でしたが、異変はない模様…と思いきや、舞台に現れた指揮者がちがう!ハゲてない! 最後に倒れたのはファソリス氏でした。 残念。 でもオケはもう完璧だし、代役指揮者も無問題でした。

演奏会形式の上演で、レチタティーヴォは大部分削られ、各者均等に歌が割り振られるようにアリアも減らされていましたが、全員暗譜で人の出入りと演技もいくらかついていましたし、 3幕などはずいぶん演技が盛り上がってました。

アリアの割り振りを書いてみました。 間違いがあっても気づかなかったことにしてください。

Sinfonia

1幕1場

Mandane e Arbace

Mandane : Conservati fedele ← ひとりで歌います。 おっかけっことかしません。

12

Arbace, poi Artabano

Arbace : Fra cento Affanni e cento

13

Artabano, poi Artaserse e Megabise con guardie

Artabano : Su le sponde del torbido Lete

14

Artaserse e Megabise

15

Semira e detti

Artaserse : Per pieta,bell’idol mio

16

Semira e Megabise

Megabise : Sogna il querruer le Schiere ← ちょこちょこ逃げ惑う白鳥姫が見たいとこですが、立ち去った後です。太鼓どんどこなので、この曲好き。

17

Semira : Bramar de perdere

110

Semira, Artaserse, Mandane e Artabano

Artaserse : Deh respirar lasciatemi

112

Mandane, Semira, Arbace, Artabano, Megabise e guardie

Artabano : Non ti son padre

113

Arbace, Semira. Mandane e Megabise e guardie

Semira : Torna innocente e poi

114

Arbace, Mandane, Megabise e guardie

Mandane : Dimmi che un empio sei

115

Arbace con guardie

Arbace : Vo solcando un mar crudele ← 進化する聴かせどころ。 装飾がフリル状。 

21

Artaserse : Rendimi il caro amico

22

Artabano e Arbace con alcune guardie

Arbace : Mi scacci sdegnato

23

Artabano e Megabise

24

Semira e detti

Artabano : Amalo e se al tuo sguardo ← 父さんの出番が多いような気がするが…。

25

Semira e Megabise

Megabise : Non termer ch’io mai ti dica

26

Mandane : Se d’un amor tiranno

27

Semira : Se del fiume altera l’onda

210

Artabano, Artaserse e Mandane

Mandane : Va’ tra le selve ircane

214

Artaserse e d Artabano

Artaserse : Non conosco in tal momento

215

Artabano : Cosi stupisce e cade

31

Arbace : Perche tardo e mai la morte

Artaserse : L’onda dal mar divisa

33

Megabise : Ardito ti renda

3幕4

Artabano : Figlio se piu non vivi

36

Semira : Non e ver che sia contento

37

Arbace, poi Mandane  

Arbace : Tu vuoi ch’io viva, o cara

Mandane : Oh dio, che pena amara!   ← 泣けます。

Mandane : Parti dagli occhi miei

A Due : Se in cosi gran dolore

38

Luogo magnifico destinato per la coronazione di Artaserse. Trono da un lato con sopra scettro e corona, Ara nel mezzo accesas con simulacro del Sole. Artaserse ed Artabano con numeroso seguito e popolo.

310

Mandane, Semira e detti ← 劇団パルナッソス ここらへんが大いにウケてるとこ。

3幕最終場

Arbace e detti 

Coro : Giusto re, la Persia adora

アンサンブルは、プリズム。 きらきらと輝く彼らの声は、宝石のようでした。 その輝く箇所はそれぞれ違うし、色も違う。 ジャルスキーの声はクラリティが高いし、拡散せずに真っすぐのびます。 強固といえるまでに安定した技術に裏打ちされた気品のある歌唱。
プロジェクトの企画にも関わっているチェンチッチは、途中風邪で不調の回もあったようですが、この日は絶好調。 曲の表現力とデュナーミクは他のキャストの追随を許さないという出来に加えて、ステージ付きではないのにみごとな姫っぷりでした。 彼とファジョーリの非常に美しい第三幕のデュエットは、チェンチッチの演技にファジョーリがぴったりついていくので、更に感動的でありました。
冷静に舞台上を見ると、男性二人で愛の二重唱なんですから珍妙ではあるのですが…。(あくまでチェンチッチは女性役に徹しているので、ゲイゲイしいとかそういうもんでもありません)
ミネンコは、身体がデカいので声もデカい。 このキャストの中ではちょっとかすんでしまうタイプですし、どこに魅力があるかと言われると困るかも。 でも手堅い歌唱と密度の高い声質、気を抜かない演技が好印象でした。
一人テノールで、悪い父さん役のサンチョはアジリタも巧みだし、聴いてるこちらの横隔膜あたりにびりびり響く声で私はかなり好きになりました。 細い身体から切れ目なく出てくる太めの声にちょっとラテンっぽい響きがあってなんとなくシャレてるし。
もう一人のスカート役のサバドゥス。 まだ26?歳の若さ。 この人も録音には入り切らない声の魅力を持っています。  実際に聴いてこそ、高音になると密度やきらめきが増すこともわかります。 物憂げにおっとりした雰囲気もあるし、いつも長めの前髪をふわりとさせて可愛い。
大ブレイク中のファジョーリ、ちょっと音量にむらがあるのかこっちの耳が慣れないのか、「あれ?」と拍子抜けするようなとこもありましたが、さすがのテクニック。 毎回変えているのかな? 華麗な装飾もまた違っていたし、広いレンジに均等な音質とたぶん多くの女性の胸をざわつかせるであろう、胸声と頭声のミックス部分。 技術と求心力はさらに進化してるし、男前ぶりも上がってきたとはいえ、顔芸と踏ん張って歌う姿は以前と変わっていないかも。
最終場面勢揃いは、大盛り上がり。 チッチの「きゃああ」とか昏倒しかける演技が大ウケ。
総スタンディングオベーションでした。 それに応えて、もう一度最後の合唱。 ちょっと間違えたフラちゃん(ファジョーリ)が、顔を赤くして「ぎゃ、僕としたことが!」と恥ずかしがってるのが思わぬオマケでおもしろかったです。 (#^.^#)
この公演を聴きにくることができたのが、今年一番のいいこと、だったかな。 こういうのを聴ける「今」に立ち会えたことに感謝!です。

番外編 : カオスなサイン会

予想されたこととはいえ、さばく人がだれもいないので、すごい混雑。 方向も何もかも定まっていないので、どう並んでいるのかもわかりませんでした。  チビの日本人にはたいへん。かろうじて、サンチョ父さん半分とフラちゃんの頭。その横はPJ。

私は預かり物があったので、サインをもらうのは二の次だったんですが、いくつかはいただきました。

   全然手に入らなくて持って行けるか心配した『パルミーラのアウレリアーノ』、フラちゃんは「わあ、これ見たの?」と喜んでくれました。 なぜか隣のサンチョ父さんが「なんだこれ?」って先に手にとってしげしげと眺めていたのでした。

「日本のあなたの熱烈なファンたちからキスと声援をあずかってきたよ、受け取ってね。」と伝えてきたけど、フラちゃんに日本にはファンがたくさんいるよ、印象つけるのには成功したかな。