リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

徳川美術館特別展覧、源氏物語絵巻をみる

友人のご厚意にて、徳川美術館の賛助員向け特別展覧にうかがった。
現在、特別展【源氏物語の世界】が開催されている。徳川美術館には12世紀に制作された国宝の源氏物語絵巻三巻が収蔵されており、額面装から本来の巻物装に修復*1したものを今回展示している。
館内の展示も鑑賞したが、特別展覧は実際に広げられた絵巻を展示ケースごしではなく、拝見できるというものだった。マスクを着けて、掌を絵巻の上にかざしたりしてもいけない。竹河二、宿木三、東屋一の三巻。
細い墨文字のテキスト部分の文字は非常に美しく残っている。絵はやはり褪色してかすれてしまっているが、典雅な筆致はそのまま再現されている。金銀の箔は変色しているとはいえ十分に装飾の効果はあげている。台紙は茶色になってしまっていたが、濃い茶色部分はもとは蘇芳、薄い茶色部分はピンク色だったそうだ。今見るよりずっと鮮やかな和の色彩がここにあったのだなと想像できた。いくら巧みに描かれていたとしても、後世に作られたコピーとはまったく違っているのだと思う。
徳川御三家のうち、尾張徳川家のみがこのような美術工芸品を保存展示する施設を持っている。
尾張徳川家のお膝元にいてよかったとつくづく思う。

 お天気がよかったし、徳川美術館へは着物で伺った。パリでおろした淡黄に染めた刺繍の附下に唐織の帯。帯揚だけ抹茶色に銀杏の葉模様で11月仕様。
鑑賞コースの途中でいただいたお茶の席にもぴったりだった思う。
日本国内で着る自信がなかったけど、こういう場にだったらもっと着てみていいかな。
お茶やお琴を習っていた頃は、着物誂えから着付まですべて祖母にしてもらっていたため、自分でやるのはちょっと心配だったのだ。
着物そのものが工芸品だと思うし、19世紀末、英国のラスキンやモリスが提唱した「生活の芸術化」*2 を日本でそのまま体現できるのはそれを着用することであるし、なにより芸術に敬意を表するのにはやはり効果的。

*1:額面装にすると常時空気にふれていたり、台紙にテンションがかかり長期の保管に適さないと判断されたそうだ

*2:ジャポニズム含む