リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Impression of Wagner opera arias

今日は私の favourite= Evgeny Nikitin のお誕生日です。ご本人はウィーン国立歌劇場の《ホヴァンシチナ》の最終舞台公演。
せっかくソロ・アリア集が出たことだし記念に感想を書いておきましょう。

Richard Wagner:
Der fliegende Holländer: Overture
Die Frist ist um (from Der fliegende Holländer)
Lohengrin: Prelude to Act 3
Erhebe dich, Genossin meiner Schmach! (from Lohengrin) Michaela Schuster (mezzo-soprano, Ortrud)
Wie Todesahnung...O du, mein holder Abendstern (from Tannhäuser) Götterdämmerung: Siegfried's Funeral March
Leb wohl, du kühnes, herrliches Kind! (from Die Walküre)

 

Evgeny Nikitin (bass-baritone)

Orchestre Philharmonique Royal de Liège,
Christian Arming (conductor)

 世には録音にきちんと歌唱の魅力が入る人もいますが、彼の場合はそうではありません。セッション録音のCDに入るのは実際の70%くらいではないかと思います。
なので、正直に言うと「あまりおもしろくない」のです。
たいへん丁寧に、言葉を大切に歌うのはいつでも同じです。その丁寧さが仇になり、曲のもつ情感を弱めているような気がします。Michaela Schuster との《ローエングリン》第2幕導入部、このふたりで演じたアムステルダムの舞台での緊張感とは比すべくもなく*1
粗がみえないのはいいところ。いつも微妙にはずれるんじゃないかとドキドキすることもなく、フレージングも完璧(と思う)。
少し前から、音のレンジが高い方にシフトしてきたなとは感じていましたが、バスバリトンの低音域も無理なく出るし、今回初のヴォルフラムの『夕星の歌』は予想以上の美しさでした。
私はこれはキーツの詩、『ブライト スター』に似てると考えています。そして彼の解釈は、ちょっと硬派でよりキーツの詩に近いような気がします。オランダ人のモノローグは舞台付き、コンサート形式とさまざまに聴いてきましたが、やはりこれは聴衆の前で訴えかける場面でなければ、彼のカリスマを感じることはできません。一方、ヴォータン。自然の中にこそ神を見ているという彼は、北欧あるいはゲルマン神話のこの神とキャラクターとして親和性が高いのです。マリインスキー劇場の公演でしか演じていないため、なかなか評価は謎です。私は彼の高貴な声と少し粗野な表現に、古の神々の存在を感じます。

リエージュフィルの演奏は軽めで上品、ややゆっくり。コンサートで聴いた印象とあまり変わりません。指揮の Arming は、彼のことを「ワーグナー歌手の大スター」と紹介してくれたから、それだけで大感激、良い印象しかありません!アホですね…。

あまりおもしろくない、と言いつつ、やはりワーグナーのアリア集というのは、本当に嬉しいです。次にロシアオペラのレパートリーアルバムが出たらいいな、と思います。
その期待をこめてリメイクしたムソルグスキー《死の歌と踊り》

youtu.be

 

 

*1:バイエルン国立歌劇場来日公演ではMeier 様とごいっしょでしたが、あまり印象的ではなく…