リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Rusalka at Wiener Staatsoper 09022016

どうも風邪が流行っていたようで、ルサルカ役も降板、代わりにNylund がジャンプイン。図らずも12月に続いて、Vogt, Nylund ペアを鑑賞することとなった。
favourite が出るから観るが、私はプッチーニがたいくつでしかたない。同時期に《ルサルカ》が上演されていて本当に良かった。《トスカ》だけだったら、憤慨して帰ってきたとこだ。
舞台寄りバルコンの一列目だったため、舞台の三分の一ほどは見えなかったが、値段が安い割には良い席だと思った。

f:id:Lyudmila:20160221142044j:plain こんなかんじに見える。

《ルサルカ》は、ご存知、人魚姫やフーケのウンディーネと同様のモチーフ。異種婚姻譚の悲劇だ。ほんとにこの王子はろくでもないヤツで、どこまでルサルカにつらい思いをさせるのだ、と観るたび怒り、またルサルカに同調して泣いてしまうのだ。

Tomáš Netopil: Dirigent

Sven-Eric Bechtolf: Regie

Klaus Florian Vogt: Der Prinz
Elena Zhidkova: Die fremde Fürstin
Jongmin Park: Der Wassermann
Camilla Nylund: Rusalka
Monika Bohinec: Jezibaba
Gabriel Bermúdez: Heger 
Juliette Mars: Küchenjunge 
Valentina Nafornita: Erste Elfe
Ulrike Helzel: Zweite Elfe 
Miriam Albano: Dritte Elfe

 

 こちらもBechtolfの演出で、舞台は1幕、3幕が二階建て構造。モノトーンで雪が降り積もっている森の中。二階部分にはすりガラスのようなアクリル板があり、歌われている対象の人物*1がその後に立って見せる、という構造になっていた。
最初にルサルカは黒髪で長い裾の黒衣。ずるずるとひきずる裾が水の精というよりレイミアみたいで、ものすごく不気味だった。人間になる前のルサルカはちっとも愛らしくない。ヴァッサーマンも黒いスーツに銀の長髪(LotRのエルフみたいだ)。森の精は白黒のコンビドレス。人間になったルサルカは白いスリップドレス姿になる。
2幕では外国の王女の深紅のドレスに合わせて、舞台装置も紅色が加わった。それでも舞台上はごくシンプルで、舞踏会の場面でもダンスはダンサーが一組踊るだけ。
ここのコリオグラフィは実に多弁でコミカルだった。
全体に衣装はオーセンティックなものなのに、なぜか森番だけ半裸で、その意味はよくわからなかった。
3幕で1幕と同じ舞台に戻るが、ルサルカの髪は銀色になっている。彼女はもとに戻ったわけではないから。
最後にルサルカが、王子を黒い布で立ち木にしばりつけていく。顔を覆うまで、だんだんと締め上げていく様が、緊迫感がありゾクゾクした。

どこか明確な時代や場所、ものごとに置き換えられているわけでもなく、物語の暗い部分を前面に出した演出のように思われた。

今季の最初のランの初日で、さらに題名役が突然変更になったため、演奏の方は万全といえるわけではなかった。
歌唱は全体に不安定に聴こえることが多く、ローエングリンではあんなに見事な Vogt さんもアクートが決まらなかったり、チェコ語のせいだろうか、時々不相応にぶれるかんじがつきまとっていた。一心不乱と表現したくなったのは、ヴァッサーマンの Jongmin Park で、びっくりするほどデカい声で熱唱。かなり若い方とお見受けしたが、そのせいか父ちゃん的な雰囲気は皆無だった。
《ルサルカ》という作品は、オペラの体裁だが、物語を語っていくのは歌ではなくオーケストラの部分だと私は考えている。オーケストラは雄弁で素晴らしい。
ボーカルパートは、「月に寄せる歌」でもう終了してしまった感すらある。
今回の指揮者 Tomáš Netopil は、まっとうにオーケストラを語らせていたと思った。
聴衆である私は、ドヴォルザークのオーケストレーションにじゅうぶん浸ることができた。

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こちらもちょっとしたミッションがあったため、終演後ステージドアへ。
Vogt さんは、早々と登場なさってサインやら写真撮影に応えていた。私も外に出てらした時につかまえて質問させていただいた。

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飛び込みの Camilla さんにもお会いしていこうと、またしばらく待っていた。
あちこちで歌っているので、少し前のことは覚えていないようだ。
アムステルダムで会ったよ、と言うと「演目何だったかしら…?」
次は東京でね、と熱心なファンを装ってきてしまった。

 

 

*1:王子が湖に泳ぎに来るとかいうとこでは、平泳ぎしてたりして、なんか妙に説明的でへんてこ