リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Der Rosenkavalier at Bayerische Staatsoper 17072016

ミュンヘンオペラフェスティバルの各演目のきっぷは、あらかじめリクエストをしておくことになっている。私はまず《炎の天使》のリクエストを入れておき、そちらの確保ができてから《ばらの騎士》の希望を入れた。しばらく経って、BSOから「☓☓のお席を取れました。なお~~」というメールがきたので、よく読みもしないで「あ、とれたんだ。良かった」と放置。いっこうにきっぷが郵送されてこないため、問合せをしようとして再度メールを読んでみた。なんと席はとれたが引き落としのクレジットカード番号が間違っていたようで、正しいものを知らせないとリリースされるという内容だった。期限は過ぎ、きっぷはとっくに流されていた。Die Frist ist um!
17日のきっぷは完売になっていたがあきらめきれずに、ミュンヘン在住の友人に頼ってみた。BSOのフォーラム内にあるチケット売買プラットフォーム*1を利用して、首尾よく取ってもらうことができた。

きっぷの受渡しや代金のやりとりは、やはり外国からだと難しい。友人にはお手数をかけてしまったが、ほんとにありがたいことだった。

 私はリヒャルト・シュトラウスの作品の中で最も好きなのは《影のない女》で、《ばらの騎士》をはじめ「おしゃれ系」*2は苦手。といってもプッチーニが苦手というのとは次元がまったく違う。あまり良さがわからない、というのが正確か。時々出てくる《影のない女》っぽい音型に耳をそばだてて喜んでいる程度なのだ。
こんなだが、Kirill Petrenkoが指揮ということにおおいに期待して臨んだ。

Musikalische Leitung:Kirill Petrenko

Nach einer Konzeption von Otto Schenk, Jürgen Rose
Chöre:Sören Eckhoff

Die Feldmarschallin:Anja Harteros
Der Baron Ochs auf Lerchenau:Günther Groissböck
Octavian:Daniela Sindram
Herr von Faninal:Martin Gantner
Sophie:Hanna-Elisabeth Müller
Jungfer Marianne Leitmetzerin:Miranda Keys
Valzacchi:Ulrich Reß
Annina:Heike Grötzinger
Ein Polizeikommissar:Scott Conner
Der Haushofmeister bei der Feldmarschallin:Dean Power
Der Haushofmeister bei Faninal:Kevin Conners
Ein Notar:Christian Rieger
Ein Wirt:Dean Power
Ein Sänger:Yosep Kang

時代設定があるのなら、そこにきっちりあてはめていくOtto Schenkデザインの舞台が、この演出版ではもとになっている。
この作品に関しては、トンデモ演出が少ないような気がする。圧倒的にロココな雰囲気の舞台が多いと思う。
ミュンヘンの舞台も18世紀ウィーンの再現だ。華麗で美しい衣装が見目麗しいキャストたちに非常に似合っていた。特に目玉ともいえるオクタヴィアンの白銀の装束の麗しさといったら。*3
演奏全体も品がよく、ことに元帥夫人役Anja Harterosの端麗さは素晴らしかった。
時の流れを嘆く様は、モーツァルトの《フィガロの結婚》における伯爵夫人の2幕初めのアリアより一段薫り高いものに聴こえたし、終幕の佇まいは実に堂々たるものだった。一歩ひいた冷静さが一貫して感じられた。私はあまりこの作品のシチュエーション*4が好きではないのだが、Harterosのように女の矜持がはっきりわかるキャラクターの表現であれば、納得できると思った。潤いのある細い細いピアニシモ。
ゾフィーとオクタヴィアンも、作りつけたようにこの舞台にぴったりだった。
また、Groissböckのオックス男爵というのも若くて上品、なものだった。
単なるセクハラ親父でもなく、近い将来のオクタヴィアン…として想像できる姿というか。*5
Harterosの存在感によって、これは「元帥夫人の物語」としてひとつにまとまっていると思えた。
Kirillの指揮も素晴らしい。統率感があり、曲全体にブレない中心軸がたしかにある。
これは前日のユロ兄にも感じたものだ。嫌味がなく、エレガント。
じたばたしてしまったが、やっぱり観てよかった。

最初のパウゼの時、Svetlanaさんがいるのを見かけた。昨夜と同じリトルブラックを着ていたのですぐわかった。
私の二列後の席に彼女はいたのだ。レパートリーに持っているのかは知らないけど、彼女のシュトラウスも聴いてみたいな、と思った。

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*1:こちら

https://forum.staatsoper.de/ 

*2:と勝手に名づけているが、《カプリッチョ》《アラベラ》などロココ風な作品のこと

*3:ちなみに何でもミュージカルにしてしまう宝塚が、このようなまさしくヅカ的な演目を放っておくわけがなく、10年以上前に《愛のソナタ》という謎のタイトルにて翻案舞台を上演している。いまいち人気はなかったようだが。

*4:自分の半分くらいの年齢の若い恋人がいて、自分が老けてくのを嘆く

*5:私はこの人の役では《ルサルカ》のとーちゃんが好き