リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Paavo Jarvi 指揮 《ドン・ジョバンニ》 at NHKホール 09092017

NHK音楽祭2017の最初の公演《ドン・ジョバンニ》を聴いてきた。
オペラをあまり振らないPaavoさんではあるが、そういえば《フィデリオ》も観たなあとか、ちょっと前のことだとすぐ忘れてしまう。
演奏会形式だが、衣装や演技もそれなりについていて、セミステージと言ってもいいのじゃないかと思った。歌手の質、いわずもがな、演奏も高品質でたいへんコスパのよい演奏会だった。

指揮は随所でぴりっとスパイスが聴いていて音はくっきりと際立ち、N響は常に真面目にいい仕事をするので次の場面が楽しみ~と音楽を追っていくうちに終わってしまった。
ひさしぶりに聴くBernard Richterは、声があまりにもデカいんでびっくりしてしまった。以前聴いた時にはこんなにデカくなかったはずなのに…。アンサンブルでもひとりだけ目立っていた。そこで目立たなくてもいいとは思うが。
私の好きなバスのひとりAlexander Tsymbalyukが騎士長役。最初と最後にしか出ないのが残念。
ドン・ジョバンニとレポレッロも、芸達者の美形コンビだった。暇乞いはスマホで、とかドン・ジョバンニと指揮者が話しながら出てくるとかオケが舞台に乗っている状態を有効活用した現代風の演出もおもしろかった。
全体的に明るく楽しい舞台と演奏で、ドン・ジョバンニの暗い部分というのがまったくなかった。最後に地獄におちてしまったはずのドン・ジョバンニが、何食わぬ顔で登場(カテコではない)してくるのも、ハッピーエンド(?誰にとって?)のような、ちょっと不思議な気がした。
私はもともとバロックとモーツァルトのオペラが好きなのだ、ということを、当該作品を聴くたびに実感する。定期的にそれらを耳にしていると精神安定上いいように思う。
脚本がどうこうというより、純粋に音楽が美しく楽しいのだ。

NHKホールは、オペラの聴衆にとってはあまり評判が良くないヴェニューであるが、私はN響が演奏して、席も選べばそんなに悪くはないと思う。大きすぎるのと、ホワイエ部分が複雑なつくりになっているのが(迷子になってしまうので)難点である。
しかしまた3週間後には、ここでバイエルン国立歌劇場の公演を観る予定だ。