リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

ザルツブルクいろいろ

ザルツブルク音楽祭では会場となる祝祭大劇場、モーツアルトのための劇場に近い旧市街のホテルに宿泊するのがいいのだが、一点問題がある。動物の名前がついた昔風のホテルにはエアコンがないところが多いのだ。夏の音楽祭では気温が高くなる場合を考えて新市街にあるホテルがいい。で、さらに価格が高い。さまざま検討のあげく新市街ミラベル庭園の近く、中央駅からも歩いて10分程度の新しいアパートメントチェーン masterのアパートに決めた。今はこんなサービススタイルのホテルも増えているようだが、チェックインカウンターがなく事前にオンラインでチェックイン手続きをしておくと入口と部屋に入るためのPINコードが送られてくる。
オンラインチェックインをすると「到着日当日にPINをお知らせします」と返事が来るが実際は到着予定時刻の30分前にPINが送られてくると思っていた方がよい。決められたチェックイン時刻の15時にアパートに行くとその時間帯にはスタッフが数名いて、質問に答えてくれる。私はこの時間に行ってよかった。なぜかというとミラベルの建物は2棟あり、私はB棟の部屋を割り当てられていたが、そちらの入口はわかりにくく、たまに入口にPINを入れても入れないことがあったからだ。A棟がメインでそちらの連絡通路でB棟に入ることができた。それは初日にスタッフに会えて説明を聞いたから可能だったので、いない時間だったら困ったことだろうと思う。スタッフのいるオフィスへ電話かwhatsAppで連絡すればすぐに答えてくれるそうだ。A棟の地下にはランドリーとロッカーがあった。ロッカーは使用不可となっていたので、いつも使えるものなのか不明。ランドリーには無料で使える洗濯機と乾燥機が3台ずつあり、これは便利だった。
部屋には一般的なキッチンの設備とアイロンなどがあり不便なことはなかった。

劇場までは徒歩17分程度。近くのバス停から劇場のすぐ近くまでバスで行ける。行きはいいが帰りが23時過ぎになると近くまで来るバスがなくなってしまう。
私が行った時は天気が悪く気温も低かったため、旧市街のホテルに泊まったほうがよかったかなと思った。

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31072025 Hotel Metamorphosis @Haus für Mozart

ヴィヴァルディのオペラの様式は当時流行っていたパスティッチョ*1がほとんどで、この《ホテル・メタモルフォシス》はその様式にのっとって制作された新作オペラだ。演出家のKoskyとドラマトゥルグのSchmitt(制作側に名前が出ていないがおそらくBartoliとJarousskyも加わっているだろう)渾身のバロック様式オペラになっていた。このプロダクションが発表された時にどうしても見たい!と思ってやってきたが、狙いは違わず素晴らしい作品だった。

A pasticcio with music by Antonio Vivald in two acts
Texts by Ovid in the German translation by Hermann Heiser
Arranged by Barrie Kosky and Olaf A. Schmitt

Conductor: Gianluca Capuano 
Director and Concept: Barrie Kosky 

Eurydice /Arachne: Cecilia Bartoli 
Statua/Myrrha / Echo: Lea Desandre   
Minerva / Nutrice / Juno: Nadezhda Karyazina
Pygmalion / Narcissus: Philippe Jaroussky  
Orpheus(Narrator): Angela Winkler  
Dancers: Rachele Chinellato, Jia Bao Beate Chui, Martje de Mol, Fanny De-Ponti, Matt Emig, Claudia Greco, Alessio Marchini, Prince Mihai, Rouven Pabst, Teresa Royo, Felix Schnabel, Rens Stigter 

*1:神奈川県立音楽堂でビオンディが上演したことがあるので日本のバロックオペラファンはよく知っていると思う

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30072025 Liederabend Damrau · Kaufmann · Deutsch @Großes Festspielhaus

午後9時開演。このてんこ盛りプログラムを見よ。各地でツアーをしているリサイタルなので計算しつくされ完成された内容だった。

Richard Strauss
Aus Acht Gedichte aus "Letzte Blätter" op. 10
Zueignung
Nichts
Die Nacht
Die Georgine
Geduld
Die Verschwiegenen
Die Zeitlose
Wer hat’s getan o.op. 84 A
„Allerseelen“ aus Acht Gedichte aus "Letzte Blätter"op. 10/8
„Liebeshymnus“ aus Fünf Lieder op. 32/3
„Schlagende Herzen“ aus Drei Lieder op. 29/2
„Ich trage meine Minne“ aus Fünf Lieder op. 32/1
„Einerlei“ aus Fünf kleine Lieder op. 69/3
„Nachtgang“ aus Drei Lieder op. 29/3
„Freundliche Vision“ aus Fünf Lieder op. 48/1
„Ich liebe dich“ aus Sechs Lieder op. 37/2
„Wie sollten wir geheim sie halten“ aus Sechs Lieder aus Lotusblätter op. 19/4
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Gustav Mahler
„Rheinlegendchen“ aus Des Knaben Wunderhorn
„Um schlimme Kinder artig zu machen“ aus Lieder und Gesänge
„Wer hat dies Liedlein erdacht?“ aus Des Knaben Wunderhorn
„Ablösung im Sommer“ aus Lieder und Gesänge
„Es sungen drei Engel einen süßen Gesang“ aus Des Knaben Wunderhorn
Aus Fünf Lieder nach Gedichten von Friedrich Rückert
Ich atmet’ einen linden Duft
Liebst du um Schönheit
Blicke mir nicht in die Lieder
Ich bin der Welt abhanden gekommen
Richard Strauss
„Leises Lied“ aus Fünf Lieder op. 39/1
Aus Sechs Lieder aus „Lotosblätter“ op. 19
Wozu noch, Mädchen, soll es frommen
Breit über mein Haupt
„Ich schwebe wie auf Engelsschwingen“ aus Fünf Lieder op. 48/2
Vier Lieder op. 27
アンコール
Gustav Mahler
"Geh du nur hin, ich hab mein Theil" aus Des Knaben Wunderhorn
Johann Strauß (Sohn)
Wiener Blut
Eric H. Thiman
Spring Wind

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29072025 Giulio Cesare in Egitto @Haus für Mozart

私は今回、新制作の《ホテル・メタモルフォシス》がどうしても見たく、買えなくなることを恐れるあまり5演目のアボネで購入してしまった。27日はミュンヘンとかぶるので諦め、28日の《エディプス王》から行く予定をしていたがその日は雨*1で(まあ雨続きだったんだが)夕方から腹痛もありそちらも諦めた。ザルツブルク音楽祭の鑑賞初めはこちらも新制作のチェーザレ。12年前にCecilia Bartoliがザルツブルク聖霊降臨祭バロック音楽祭の芸術監督に就任した時に最初に手掛けた作品もチェーザレでこの時はご自身がクレオパトラを歌っていた。私はそのプレミエも観ており、その時トロメオ役だったDumauxがチェーザレということで楽しみにしていた。
パルケットの中央あたりの席に着くと、すぐ前の席になんとBartoli様が!Haus für Mozartの席は列で重ならないように配置されているので、私はBartoli様の横顔をうかがいながらの鑑賞となった*2。得した?

Conductor and Harpsichord: Emmanuelle Haïm
Director and Sets: Dmitri Tcherniakov  

Giulio Cesare: Christophe Dumaux
Cleopatra: Olga Kulchynska  
Cornelia: Lucile Richardot  
Sesto: Federico Fiorio  
Tolomeo: Yuriy Mynenko  
Achilla: Andrey Zhilikhovsky 
Nireno: Jake Ingbar  
Curio: Robert Raso  

*1:滞在していたのは新市街のアパートメントでバスに乗って行けるが帰りは徒歩になるためちょっとつらい

*2:時折難しいお顔をされていたw

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27072025 Lohengrin @Bayerischestaatsoper

なんだかんだ言っても《ローエングリン》が好きな私、Papeさんの王様も聴きたいし~とミュンヘン最後の夜。前の方の列にずらっと「この後バイロイト行きます!」風の日本人グループをお見かけしてちょっと驚く。すぐ後ろの列にはBeczała夫人がいらした。

Conductor: Sebastian Weigle
Director: Kornél Mundruczó

Heinrich der Vogler: Rene Pape
Lohengrin: Piotr Beczała
Elsa von Brabant: Rachel Willis-Sørensen
Friedrich von Telramund: Wolfgang Koch
Ortrud: Anja Kampe

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26072025 Rusalka @Bayerischestaatsoper

エルルの受難劇から戻っていったん宿に戻ってから、劇場へ。
当然開始には間に合わず、休憩中に入って《ルサルカ》の3幕のみ鑑賞。

Conductor: Edward Gardner
Director: Martin Kušej
Rusalka: Asmik Grigorian
The Prince: Pavol Breslik
Ježibaba: Okka von der Damerau
The Foreign Princess: Elena Guseva
Vodník: Christof Fischesser

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26072025 Passionsspiele ERL 2025 @Passionspielhaus erl

カトリック教徒以外で「受難劇」を知っている人はそう多くないと思う。キリストの受難(十字架の道行き)を演劇として上演するものだ*1。有名なのはドイツバイエルン州オーバーアマガウの10年に1度上演される受難劇で、上演のない時でも受難劇場は観光資源として活用されている。今回行ったオーストリアチロル地方の村エルルでは6年ごとに受難劇が開催されていて、歴史はオーバーアマガウより古く400年以上続いている、オーストリアの無形文化財だ。
エルルには受難劇場の隣に音楽用の祝祭劇場というのがあり、こちらはJonas Kaufmannがインテンダントになり、たいへん魅力的な公演を打つようになっているためこれから行きたい人も増えるのではないかと思う。
受難劇の公演は基本5月から10月の土日にあり、上演時間は約3時間30分(休憩30分)開始は13:30なので、ミュンヘンにいる間に日帰りできる。ミュンヘンからは電車で最寄り駅のクフシュタインまで1時間10分程*2。そこからシャトルバスで30分で受難劇場に到着する。ミュンヘン-クフシュタイン間の電車は1時間に1本なので、駅で待つ時間はまあまああったりするが、目的地が山の中の割には行きやすいと思う。これは帰ってから友人に聞いたのだがクフシュタインは昔オーストリア国鉄の回廊列車*3が走っていて、鉄ちゃんには有名な駅なんだそうだ。
ミュンヘンからエルルのチロル音楽祭についての交通手段についてはWagnerienneさんの記事 ミュンヘンからTiroler Festival Erl /チロル音楽祭へ|Wagnerienne が詳しい。

*1:日本だと名古屋の南山大学の上演がやや有名なので地元の人は知ってると思う

*2:同じくインスブルックからは1時間5分、ザルツブルクからは1時間20分なので、音楽祭シーズンとかけて行ける可能性高し

*3:オーストリア国鉄が運行する列車だが一旦ドイツへ出て、再びオーストリアへ戻った方が早く、走行距離も短い場合がある。そういった区間を走る列車を回廊列車と呼んでいたがシェンゲン協定以後はなくなった

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