私は今回、新制作の《ホテル・メタモルフォシス》がどうしても見たく、買えなくなることを恐れるあまり5演目のアボネで購入してしまった。27日はミュンヘンとかぶるので諦め、28日の《エディプス王》から行く予定をしていたがその日は雨*1で(まあ雨続きだったんだが)夕方から腹痛もありそちらも諦めた。ザルツブルク音楽祭の鑑賞初めはこちらも新制作のチェーザレ。12年前にCecilia Bartoliがザルツブルク聖霊降臨祭バロック音楽祭の芸術監督に就任した時に最初に手掛けた作品もチェーザレでこの時はご自身がクレオパトラを歌っていた。私はそのプレミエも観ており、その時トロメオ役だったDumauxがチェーザレということで楽しみにしていた。
パルケットの中央あたりの席に着くと、すぐ前の席になんとBartoli様が!Haus für Mozartの席は列で重ならないように配置されているので、私はBartoli様の横顔をうかがいながらの鑑賞となった*2。得した?
Conductor and Harpsichord: Emmanuelle Haïm
Director and Sets: Dmitri Tcherniakov
Giulio Cesare: Christophe Dumaux
Cleopatra: Olga Kulchynska
Cornelia: Lucile Richardot
Sesto: Federico Fiorio
Tolomeo: Yuriy Mynenko
Achilla: Andrey Zhilikhovsky
Nireno: Jake Ingbar
Curio: Robert Raso
演出はD. Tcherniakov バロックオペラの演出は初だそうだ*3。彼のロシアオペラの演出はおもしろいと思うが、ほかの作品にだと戦時下っぽい舞台ばかりになる。果たしてチェーザレも堂々戦時下舞台だった。ベルリンなどで見るBunker(防空壕と訳されるが、日本人が思いうかべる施設とちょっと違う。ベルリンの地下遺構にあるシェルターがそっくり)が装置でこれは固定されていてずっと変わらない。避難(?)警報が鳴り響いて始まり、逃げ場のない閉塞した空間でヤクザの抗争みたいな事件に置き換えられている。場が変わる時にアラートが鳴り、不要な緊張感をずっと強いられるような舞台だった。
歌唱はもちろん、かなり高度な演技力も求められている内容で、難なくこなしていた歌手陣には驚くばかりだ。
タイトル役のDumauxは容姿も貫禄がついたが、声の貫禄がたっぷりで、以前のきりきりとした鋭い音色から厚みがあっておちついたものに変わって、連続で聞いてはいない私には別人みたいに思えた。威厳があってチェーザレにぴったり。身体能力の高さもそのままで言うことなしなんじゃ…。
トロメオのMynenkoも体積がだいぶ増えていたが声は変わらず。
セストのFederico Fiorioがなかなかの暴れっぷりでおもしろかった。ただ演出上そうなるのかわからないけど母のコルネリアとふたりとも、どうにも下品な歌いぶりが気になった。オブリガートがつくアリアが、なぜかどれも落ち着かなく歌い飛ばされているようなのもどうかと思った。
まさにレジーテアターの見本みたいな舞台にもめげず、演奏もお見事で指揮者も歌手も称賛されてあまりある。


黒のミニドレスの方がクレオパトラ、ロングドレスは指揮者。

《エディプス王》はこちらで映像が見られるからとりあえずよしとしよう