リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Siegfried at Philharmonie de Paris 22092018

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フィルハーモニー前のデジタルサイネージ

マリインスキー劇場の引っ越し公演で昨シーズンにリング前半、今シーズンで後半を上演することになっていた。
Gergiev親分は、国外でワーグナーの作品を主に演奏会形式だが、上演することに非常に熱心だ。ドイツ人の歌手を招ぶこともあるが、自身で育てた立派なワグネリアンシンガーもマリインカにはたくさんいる。
Orchestre du Mariinsky
Valery Gergiev, direction
Mikhaïl Vekua, Siegfried
Andreï Popov, Mime
Roman Burdenko, Alberich
Elena Stikhina, Brünnhilde
Evgeny Nikitin, Le Wanderer
Mikhaïl Petrenko, Fafner
Zlata Bulycheva, Erda
Anna Denisova, Waldvogel
Marina Mishuk, chef de chant

 マリインスキー劇場コンサートホールでワーグナー作品を上演する時はたいていオケの後ろにソリストが並ぶ形式になっている。フィルハーモニーでもこの並び方だった。登場する人物が多くないので、下手に寄っていた。
全体に声を届かせるのは容易ではないだろうが、これをやってしまうのが彼らだ。
親分の指揮棒は今回はつまようじだった。*1
オケの音圧というのはあまり感じられない。もしものすごい厚みのある音だったら、ソリストの声が聞こえなくなってしまうだろう。
ところどころ音の隙間があってそこからソリストの声が聞こえてくる。
舞台のないせいもあろう、完全に人間の声も楽器であり、オケと一体化しているように思われた。そのため、さすらい人とミーメのなぞなぞタイムやジークフリートのノートゥング鋳造なんかもいつの間にか終わってしまった。
今回ブリュンヒルデを歌ったElena Stikhinaは、これからのワーグナー歌い。若くて美人なので見た目は申し分ない。かなり頑張っていたが、他のベテラン勢に比べると少々聴き劣りがした。
いつも安定の素っ頓狂さで好演なのはミーメのPopov この人の声というのは本当にミーメにぴったりで上手いのだ。
このところずっとマリインカではワーグナーのヘルデン役を歌っているVekua の自然さとパワーはすごい。今やベテラン中のベテランのZhenya とPetrenkoもドイツ人のワグネリアンシンガーと遜色ないと思う。
なかなか他の劇場でワーグナーを歌う機会は彼らには巡ってこないけれど、もっと評価され、オファーがあってもいいんじゃないか。

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青いドレスがブリュンヒルデ

パリには親分好きな人が多いのか、もともと公演も多いせいか大喝采で終演。親分はいつも子供たちを見守るお父さんのようでアプローズの時にもこのように佇んでいる。

*1:つまようじ、焼き鳥の串、何も持たない、と演奏会によって変わるのでいつもチェックしている。そういう人は多いですよね?