リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Rubinstein: The Demon 1974

 

Demon

Rubinstein: The Demon [Boris Khaikin] [Melodia: MELCD 1002102]: Amazon.co.uk: Music

3月にメロディアレーベルの『The Demon』ハイキン指揮、1974年録音が初めてCDとして発売された。もちろん私はLPは持っていない。

イタリア語歌唱のものも含めて、いくつかCDは出ているし、DVDも出ているが、やはりこの録音はかなりいい。ロシア声楽作品が好きと言っておきながら、実はスラブっぽい歌唱が*1苦手で、歌の部分はかなり我慢して聴くことになったが。

 

チャイコフスキーと同じように、ルビンシュタインも題材はロシア、語法は西欧のスタイル。『The Demon』はドイツロマン派の色彩だ。テキストはレールモントフ叙事詩『悪魔』を題材としている。
<舞台はカフカス。世界を呪い彷徨う堕天使であるデーモンは、美しい乙女タマラを見初め恋する。彼女の持つ美と純真と愛が、彼をもとの姿に戻してくれる期待をもって。想いのあまり、タマラの婚約者を殺し、さらに彼女も殺してしまうことになる。
タマラの魂は天に迎えられ、デーモンは再び絶望に堕される。>
「悪魔」と訳されるが、デーモンにつけられた旋律はおそろしくロマンチックで美しい。やはり堕天使か邪悪な詩人といったところが適当か。
調べていたら英語対訳テキストがあった。 http://frankhamilton.org/jg/Demon.pdf 英語だとロシア語の豊かな詩情がいまひとつ伝わらないような気もする。

私の最も好きな場面は、1幕2場デーモンが初めてタマラをみとめ、彼女にだけわかる声で話しかける。いっしょにいた娘たちや乳母にはわからない、デーモンのことばの最後「おまえは世界の女王となろう、我が永遠の友よ」をくりかえしながら、タマラが去っていくところ。タマラの消え入るようなつぶやきが可憐。

オペラとして舞台にかかることがあまりなくても、デーモンの第1、第2のロマンスはバリトンのコンサートピースとしてよく歌われているから、歌ってる人はたくさんいる。
ご贔屓が歌っていたら幸い。それぞれきいてうっとりしてください。


На воздушном океане (The Demon, RUBINSTEIN) - René PAPE ...

 
Dmitri Hvorostovsky & Sergii Svintsitsky

レパートリーとして持っているマリインスキー劇場、V.Gergiev指揮の演奏が一番好き。
全体を聴くとよくわかるのだが、重みがあり、ちょっと荒っぽいアーティキュレーションが作品の舞台であるカフカスの雰囲気を伝えていると思う。


На воздушном океане (The Demon by Rubinstein) - YouTube

 何を言いたいかというと結局「せっかくいい盤が出たから、興味あるひとは全曲きいてみてね!」ってことだ。

 

 

 

 

*1:最近の若い歌手さんたちはそうじゃないから喜んできいてるし、大好きなのもロシア人歌手だ。加えてスラブ圏のポリフォニー音楽はまた全然別で大好き。