リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Franco Fagioli at Teatro Real Madrid 07112023

モーツァルトがカストラートの声のために書いた声楽作品を集めたFranco Fagioliのソロアルバム Anime Immortali のコンサート。楽団付きツアーとして欧州を回っているものだが、連続ではないのでそのせいなのか何なのか、マドリード公演は録音で担当したアンサンブルではなく、ポーランドのピリオドアンサンブルのCapella Cracoviensisと一緒だった。 

開演前におしゃべりした友人が「コントラバス担当は私の友人。いいアンサンブルだと思う*1。それにしてもオケ付きツアーなんてお金持ちだね。」と言っていた。
席はオンラインで買うときに前方席はペアでないと購入できず、しぶしぶシングルで買える席*2にしたのだが、ちょうどフラちゃんの位置の前で音も良いところだった*3


F. Schubert (1797-1828) - Sinfonía nº 5. Primer movimiento. I. Allegro

W.A. Mozart (1756-1791​​​​​​​) - Se l'Augellin sen fugge (La Finta Giardiniera / Ramiro)

F. Schubert - Sinfonía nº 5. Segundo movimiento. II. Andante con moto

W.A. Mozart - Ah! se a morir mi chiama (Lucio Silla / Cecilio)

F. Schubert - Sinfonía nº 5. Tercer y cuarto movimientos. III. Menuet. Allegro molto y IV. Allegro vivace

W.A. Mozart - Parto, parto, ma tu ben mio (La Clemenza di Tito / Sesto)

- intermission -

W.A. Mozart - Deh, per questo istante (La Clemenza di Tito / Sesto)

- Quinteto para clarinete (I. Allegro, II. Larghetto, III. Menuetto - Trio I - Trio II, IV. Allegretto con variazioni) KV 581

- Exsultate, jubilate KV 165

-- encore

W.A. Mozart

- Lungi le cure ingrate (Davidde penitente, K. 469)

- Voi che sapete(Le nozze di Figaro)

マドリードでのプログラムは上記の通り。Kammerorchester Basel とのツアーの時はモーツァルトと同時代のクラウスのシンフォニー等が器楽プログラムに入っているが、こちらではシューベルトの古典派っぽい交響曲5番が演奏された。後半に入っていたのはモーツァルトのクラリネット五重奏曲。全て立奏。
2010年に初めてフラちゃんを聞いた時のオケがKammerorchester Basel だったので、また聞いてみたい気はしたが、結果今回のCapella Cracoviensisでかなり得した。
シューベルトの小編成交響曲とクラリネット協奏曲が素晴らしかったのだ。前半のParto,partoではクラリネットのオブリガートがつくが、この時にバセットクラリネットが登場した。こちらはB管。クラリネット協奏曲はA管に持ち替えていた。
フラちゃんセストとのクラリネットの対話と言ったら!オペラの場面そのままだった。
カウンターテナーは、高く澄んでいてちょっと可愛い感じの声が多いけど、フラちゃんの声は頭声で歌っていると感じないほど強く、男らしい。広いレンジのせいで高音にもかなりの余裕があるためだと思う。曲芸みたいなアジリタは健在だが、バロックオペラのような華やかさではなく、氷を彫刻していくような精密さと少しの冷気。不滅の魂というタイトルそのままに時代を超えるモーツァルトの音楽の魂を感じる演奏だった。
アンコールもぜひ聞きたい2曲だった。Voi che sapeteをリクエストしようかな〜とまで考えていたのだ。*4
地元のマドリードということもあっただろう、終始リラックスした雰囲気で、客席とステージの親密さが濃く、離れて聞いているようではなかった。気分はシューベルティアーデ。なるほどこういう場を作りたかったのか。聴衆の集中力と一体感も高く、フラブラやらフラ拍が昨今話題になるが、こういう集中力があればそういうことは起こらないのではないか、と思う。

優れた演奏は多くあるけど、そこまで聴衆を引っ張る演奏はそうはない。
マドリードに聞きにきてよかった!

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宿泊したホテルは、テアトロの楽屋口からすぐのホテルオペラだったので、余裕で出待ちをしてみた。

いつもと同じスタイルのフラちゃん。出待ち人たちは初めのうちは外で待っていたのだがあまりにフラちゃんの出が遅いので扉の中で待った。
知り合いの人が多かったようで、フラちゃんと親しげにみんなと話していた。みなさんはCDのブックレットにサインをもらい、一緒に写真を撮っていた。私も若い男性に頼まれて写真を撮ってあげたり。ファンのみなさんとの様子を見てるのも楽しい。
私の番になったとき、フラちゃんはすかさず一緒に撮る態勢だったのだが「日本にいるファンに届けたいから、スマイルください」と言ってこちらをget

「日本のコンサート覚えてる?東京でvo solcandoリクエストしたの私だよ」と話すと、爆笑して「覚えてる〜!また会えてよかった!」とあの時のように、きゅっ、と握手してくれた。楽しかったよね。また日本に来てくれないかなあ。

出待ちを捌いてから、リュックにスポーツバッグ、何か大きなボール箱まで持ってフラちゃんはメトロの駅方面に歩いて行った。あんな大荷物でメトロに乗るんかいな?

*1:彼女のオケの優劣判断はコントラバスにかかっている

*2:しかも高い!

*3:事前にカッサでごねてみたのだが、ここすごく良い席だから変えない方がいいと言われた。その通りだった。

*4:後に出てくる例の方法でw