この公演はBenjamin Bruns*1 以外はA,Bでキャスト総入れ替えの公演だったが、私はBキャストの公演については、時間があれば観ようと考えていたのできっぷは買っていなかった。
あまり他の人との比較には興味ないのかな?と思っていたfavouriteが「この公演はもう一組のキャストで上演される。そっちは観るのか?」と私にきいた。「ううん、いまのところはきっぷ買ってない。」「観てくれよ、それで比較してほしい。」*2「行く時間があったらね」結局Bキャストの日は日曜だったため開演時間が早く、ぐたぐたしてたら間に合わなくなってしまったので行けずじまい。
20日はDVDのためのレコーディング、23日はウェブとテレビストリーミングの予定だった。
20日の午後、レアルの「20,23日はE.Nikitinはキャンセル。代わりにS.Youn」というツイートに仰天。「今日キャンセルしたの!?」ときくと「そう、体調不良」と返事がきた。今までは病欠してもなんとかストリーミングの日は出られていたのに。
何も言わないようにはしたが、録画の日のオランダ人をS.Younにもってかれたのは4年前のバイロイト降板を思い出され、私にとってはひどくつらいことだったのだ(もちろん本人も落胆したのだろうが、後で意外にあっさり「落ち着いたよ」と言っていた)。
ということで、主役が代わってもう一度鑑賞ということになった。 Bキャストとの比較にはならないが。 この日の席は平土間の5列目をとっていたので、舞台全体が良く見えた。
Daland: Kwangchul Youn
Senta: Ingela Brimberg
Erik: Nikolai Schukoff
Mary: Kai Rüütel
Dalans Steersman: Benjamin Bruns
Der Holländer: Samuel Youn
Conductor: Pablo Heras-Casado
Director:Àlex Ollé (La fura dels Baus)
* 休憩なし一幕構成。救済の動機あり
まったく違うチームに放り込まれたオランダ人は、少しとまどっているようにも見えた。唯一Brunsだけは、Bにも参加しているし、同じ役でバイロイトでも共演していたので、そこが拠りどころか(しかし、関わるところはない)。
《さまよえるオランダ人》は、休憩なし一幕形式で上演される場合、舞台装置の転換はないことが多い。今回の演出でも、装置は変わらない。最後の海に沈む風景はビデオプロジェクションが使用されていたので、長い階段が下りてくるくらいの変化しかない。
砂地と廃船、たしかに南の暑い地域というのはわかる。やはりノルウェイがこのような場所に変わるのは違和感がある。いくつか見てきた演出では、海が出てこないのもけっこうあるが、設定されている場所は北であろうというものがほとんどだったし。
コンセプトは悪くないと思うし、よくあるゼンタの妄想系のものではないところも、私にとっては好ましかった。
歌手陣はやはりK.YounとBrimbergが目立って良かった。声自体はやや暗くそれほど魅力があるとも思えないが、S.Younの醸し出す雰囲気は頼りなげで悲しい。Brimbergのゼンタは、意思が強く落ち着いている。指揮がはやめのテンポをとっていても余裕をもって歌っているように聞こえた。コントロールがよく、すっきりと通る歌声は安心して聴けるものだった。
地元スウェーデンだけでなく、他の国でもどんどんドイツオペラを歌っていってほしいな、と思う。
23日の公演がライブ配信され、録画メディアが発売された。
《さまよえるオランダ人》は、カペラコロニエンシスとMDLGが初稿版の録音を出している。初稿の大きな特徴は救済の動機のないこととゼンタのバラードがイ短調で歌われていること。通常演奏されるト短調のゼンタのバラードと両方歌っている録音があるのはAnija Siljaくらいではないか。
同じソプラノが両方を歌うのはけっこう珍しいと思う。今回ラジオ放送があったので、Ingela Brimbergの両方歌っている音源がこれで手に入った。比較ができるようにクリップを作ったので、ぜひ聴いてみていただきたい。
これを聴いてみると、やはり曲としてはイ短調の方が違和感がない。どうしても初演の歌手に歌ってもらいたかったワーグナーが、彼女に合わせて一音下げてしまったそうだが。
20日のカテコ
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この日は終演後、Sさんの出待ちをして近くのオケメンバー御用達というバルに連れてってもらった。
20年近くレアルのオケで演奏しているという彼女の話は楽しかった。パワフルですてきな人だ。同僚のチェリスト氏も、彼女は優れたバイオリニストだと誉めちぎっていた。
劇場以外の仕事のこともきいて、また彼女たちオケメンバーの活躍を聴きにマドリードに来たいな、と思った。