リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

読売日本交響楽団 メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」びわ湖ホール 23112017

11月22日、Dmitri Aleksandrovichの訃報に接し、ほんとうに残念で悲しいです。ご家族近親の方はもとより、世界中の多くのファンに愛されている偉大な歌手です。ご冥福とともに、深い悲しみに沈んでいる方々のお心に平安がありますようにと心からお祈りいたします。

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全曲日本初演ということで、聴いてきた。偉業であったと思う。
最後までキリキリと絞り上げていくようなオケ、4時間半の長い演奏中密度の高い音でホールが満たされていた。
複雑に変化するテンポと音符を完璧に操れるのは、この作品を24回手がけているというこの指揮者だけではあるまいか。
歌手陣もぴったりときまっていた。聖フランチェスコ役テクシエのゆったりと温かい声と、天使や鳥の声に耳を傾ける様はそのまま聖人のようだった。
そして、天使のバラートの声といったら!澄んだ可愛らしい声なのだが、どことなく力強さがあり(中性的な)天使そのものと聴こえた。すごい音でドアをぶっ叩くのもさもありなん。
3台オンドマルトノの音も、サラウンドに聴こえてきた。とにかく音がぐるぐる周りをめぐり、音源がどこにあるのかわからなかった。それが非常に心地よい…で時折意識を失ってしまった。鳥のカタログのところはおもしろいのだが、半分くらい寝てしまった。
東京の第1回目の公演から3幕の評判は絶大だった。
そのとおりで、合唱の「フランソワ」と歌う声が美しすぎた。天使が先に死んでしまった病気の人を伴ってやってくる、ということで、歌わないけれど病気の人役ブロンダーが神妙に天使の横に佇んでいるのは、ちょっぴり笑えてしまった。
終幕ではまさにカタルシスを感じるものだった。

f:id:Lyudmila:20171127093649j:plain  1幕後の幕間にちょうどびわ湖に虹がかかっていた。風が強く湖面は波立っていた。きれいな風景で、次の幕の鳥カタログの背景にちょうどいいなと思われた。


終演後、一緒に行った友達と楽屋口に。よく見る出待ちなメンツは見かけなかった。
ひととおり出待ち人たちにサインをし終わってからもテクシエが誰かを待っているのか、付近にいたので友人が話しかけた。
30日にやるリサイタルのことやレパートリーの話をしていて、驚いたのは自分はバスバリトンで、ヴォータンを歌いたいんだと言っていたこと。
フランスオペラがお得意なのでドイツものを歌うことを考えていらっしゃるとは予想外。そういえば、オランダ人は歌っていたな、と録音を引っぱり出した。聞いたときは、しかたなく*1歌っているのかと思っていた。ワーグナーを本気で視野に入れているとは。驚きすぎたのでyoutubeにアップしてしまった。いかかでしょう?

youtu.be

マエストロは出てこないのではないかと期待してはいなかったが、ちゃんと楽屋口にでてらした。(車寄せがあるから、ここから出るしかないのかな)
ものすごく優しく、温かい人柄に感じた。「ありがとうございました」というのに「ありがとう」と答えてくださる声ときらきら光る目に、たいへんな力強さがあった。


 

*1:このオランダ人のメインは私のfavouriteで、彼が出られない公演を代わりにテクシエが歌っていたのだ