リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

パリの人類学博物館

私はフォークロアが好きだ。音楽に限らず民俗学の分野全般に関心がある。神話伝説など伝承文学、伝統音楽、伝統楽器、少数言語、庶民の生活史等伝承の類別は問わない。
なかでも特にフォークカトリシズム*1を代表とする土着の信仰とメジャーな宗教との融合や少数言語の保存について。
愛徳姉妹会のメダイユ教会*2やカタコンブにも行きたかったが、なにしろ滞在日数が少ないのでそちらは次回に回すことにして、今回はシャイヨー劇場に近いふたつの人類学博物館に行ってみた。

*1:「ローマカトリック教会の長女」であるフランス国ではこの点追及するネタも多くある

*2:奇跡のメダイを大量に販売していることで有名だが、ここには「地球の聖母」といわれる聖母の出現に立ち会ったカトリーヌ・ラブレーの遺体が安置されている。ルルドの聖女ベルナデッタもそうだが、腐敗しない遺体というのも聖人認定の際には重要な判定基準になる。《ボリス・ゴドゥノフ》で言及されるウグリチのドミトリ皇子も正教会で列聖されている。これは劇中でシュイスキーが「他の遺体と異なり、眠っているかのような…」と腐敗していない状況を描写していることで、列聖の基準をクリアしていることがわかる。もうひとつは彼の名のもとに盲目の翁の目が見えるようになったという奇跡に拠る

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Toneelgroepamsterdam: Roman Tragedies at Théâtre national de Chaillot 30062018

Performed by Toneelgroepamsterdam

Director:  Ivo van Hove
from william shakespeare's  Coriolanus, Julius Caesar,  and Antony and Cleopatra

オペラの他に何か観るものはないかな~と探していた時に、シャイヨー劇場のプログラムにIvo van Hoveの代表作《ローマ悲劇集》を見つけた。大喜びできっぷを予約。この時きれいに後部座席だけ残っていることになんの疑問も感じなかったが、後日劇場からきたメールを読んで仰天した。いわく「予約した席番は無効です。役者も観客に混ざります。席は自由です、観劇中飲食も自由です。劇場にいらした時にスタッフの指示に従ってください」どういう状態なのか見当がつかない。まあ行くしかないよな。自由席なら早く行けば好きなところに座れるわけだし、飲み物とお菓子を持っていくことにした。

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Boris Godunov (1869) at the Opéra Bastille 29062018

オペラ座職員のストライキにより演奏会形式上演

Conductor: Vladimir Jurowski
Xenia: Ruzan Mantashyan
Fyodor: Evdokia Malevskay
Nurse of Xenia  Alexandra Durseneva
The Innkeeper: Elena Manistina
Boris Godunov: Ildar Abdrazakov
Pronce Shuiski:Maxim Paster
Pimen: Ain Anger
Grigori Otrepiev: Dmitry Golovnin
Varlaam: Evgeny Nikitin
The innocent: Vasily Efimov
Andrei Chtchelkalov: Boris Pinkhasovich
Mitioukha: Mikhail Timoshenko

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パリ再訪、オペラ座ストライキ騒動

パリの国鉄ストライキは続いている。5月の《パルシファル》では劇場の設備トラブルにより前半の舞台がキャンセルになる事件があった。その後はつつがなく上演されていると思いきや、なんとオペラ座職員の賃上げ交渉のためのストライキが始まってしまった。
比較的恒常的に行われていることで、昨年観たパリオペラ座のドキュメンタリー映画『新世紀 パリオペラ座』でもしっかりその様子が描かれていた。*1 
こういうことを想定して可能ならば2回公演を観る予定にしているのが私の常である(そのおかげでパルシファルは1回観ることができた)が、今回は仕事の都合でそれがかなわなくなった。つまりばっちりストに当たるかもしれない。
私が持っていたのは6/29のきっぷ。6/25と6/26は公演がキャンセルになってしまった。
キャンセルしそうだからと言って、行くのをやめるわけにはいかない。自分の強運に賭けて出かけた。
乗継の時点でZhenyaからストライキでキャンセルの可能性があることを知っているかとメッセージが届いた。
到着後も「85%キャンセルになると思う。プランBはあるか?」と言ってきた。「日本ではストライキなんかないよ」「ここはフランスだ。そういうカルチャーなんだ。ストライキをするのがフランスのカルチャー、しないのは日本のカルチャー。その違いだけだ」

翌日(公演当日)昼過ぎには告知が出る。その日の《トロバトーレ》は演奏会形式になっていた。29日分のボリスもおそらく演奏会形式になると私は予想していた。
果たしてその通り、舞台セットはなし。多少の衣装は有りの演奏会形式とメールがきた。キャストにはその少し前に連絡が来ていたので「no set」というのはわかっていた。
通常は公演中止でない限りリファンドできないが、演奏会形式になったことで客側にリファンドするかそのまま観劇するか別の公演に振り替えるか選択できることになった。余分にきっぷを買っていたの*2をリファンドできたのはすこしラッキーだったかな。
3年前に一度、フィレンツェで同様のストライキから演奏会形式上演になったことがあった。ストライキ耐性もその時よりは上がっていたのか演奏がとても素晴らしかったせいか、結局は満足度の高い鑑賞経験になった。レポートは次の記事で。

 

*1:映画では組合交渉がうまくいって無事に上演された

*2:当初2回みるつもりで29日分は少し遠い席を買っていた。1回鑑賞に決めた時に最前列を買い直したため2枚持っていたのだ

ツァーリと民衆、そしてこどもの死 パリオペラバスチーユ《ボリス・ゴドゥノフ》雑感

 現在パリオペラバスチーユでは、ムソルグスキーのオペラ《ボリス・ゴドゥノフ》の初稿版が上演されている。1869年初稿版はここでは初上演とのことだ。指揮はVladimir Jurowski 演出はIvo van Hove である。
このふたりの指揮(音楽、舞台において)によるこの上演は非常に有意義であると私は考える。言わずと知れた Ivo van Hove はシェイクスピアの悲劇演出について高名である。(シェイクスピアの悲劇で彼が手がけていないのは《リア王》だけ。これも演出をする予定はあるそうだ)《ボリス・ゴドゥノフ》はシェイクスピアの《マクベス》《ジュリアス・シーザー》《リチャード3世》のテーマを引き継いだ史劇として語られることも多い。特に王位簒奪者ではあったが実際は為政者として評価すべき人物であったマクベスとは似ている部分が多く、しばしば引き合いに出される。
V.Jurowski は、初稿版の音楽的価値と優位性を表現する上演をすでに行っている。

 

lyudmila-galahad.hatenadiary.jp

 上記は再構成版と言っているが、楽譜自体には手を加えておらず、現代的な舞台とHIPな演奏は矛盾することはないとの意見である。今回のパリオペラ座の舞台はユロ兄の追及する《ボリス》がさらにスケールアップしたものではなかろうか。

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Fidelio at NNTT 27052018

ネタばれがありますので、これからのご鑑賞の方はご注意を。

何かと舞台演出が話題になってる新国立劇場新制作《フィデリオ》、簡単にいうと…

第1幕:モーツァルト風味《トスカ》

第2幕:モーツァルト風味《トリスタンとイゾルデ》とベートーベン作曲《アイーダ》のミクスチュア (レオノーレ序曲付き最終稿による)

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シャルトルの中世祭り

行きたいと思っていたクリュニー中世美術館が7月まで閉館とのことで*1、どこに出かけようかと少し考えた。国鉄はストライキ中だが、週3、4日は間引き運行している。よし、シャルトルへ行こう。所要時間は1時間半程度だし。メトロでモンパルナス駅まで出て国鉄の駅に行ったらシャルトル方面へ行く電車の出るホールはえらい遠かった。
やっとたどり着き窓口は閉まっていたので券売機で切符を買おうとするとチップ付きのクレカしか受け付けてくれない。そのようなクレジットカードを持ってこなかったためどうしたらいいのかと考えることしばし。海外の鉄道切符をオンラインで先に買うのはしょっちゅうしているんだから、とSNCFのアプリをダウンロードしてそこから購入することにした。これならプリントしなくてもモバイルチケットがアカウントから見られるので何の手間もいらない。電車は通常1時間に2本のところ1本になっていた。1本見送り、次の電車が来るまでには何とか切符の準備ができた。(ただ、これもストライキのせいか、検札も来なかった・・・)

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