リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

サグラダファミリア

2014年以来のバルセロナ、パンデミックを経てすっかり元の観光客でごった返す街に戻っていた。
リセウ劇場に行くのが目的なので、ランブラス通り沿いに滞在した。
まずは急速に工事が進んだサグラダファミリアへ。いつまでたっても完成は100年後と言われていた頃もあったが、2026年に完成予定とのことで、なるほど行ってみるとほぼほぼ出来上がっているように見えた。15分に300人程度と入場も管理されていて、予約をしておかないとならない。午後からの英語ツアーを予約しておいた。

メトロから出るとある表示

新しい塔の入口

15人程度のグループで、ガイドの話を聞きながら聖堂の中を歩く。主にステンドグラスや内陣の彫刻や絵画の解説。以前は地下のガウディの墓所や工事中のところも見られたのだが、当然ながら今はそうではない。ステンドグラスから射す虹色の光が美しかった。1時間程度のツアーが終わると、あとは個人でミュージアムなど見学する。
メトロの駅は近いし、予約をしておけば待つこともなく見学できるので、どこか他を観光してからここに来るのもちょうどいいと思う。ずいぶんあっさり来られるようになったもんだ。

入場予約はこちらから

www.sagradafamilia-tickets.org

現地ツアー会社からではなく、公式サイトで予約がよろしいかと。

 

Lohengrin@the MET 18032023

  朝のMET

François Girard: Production

Yannick Nézet-Séguin: Conductor
Tamara Wilson: Elsa
Christine Goerke: Ortrud
Piotr Beczała: Lohengrin
Evgeny Nikitin: Telramund
Brian Mulligan: King's herald
Günther Groissböck: King Heinrich

METの17年ぶりの新演出《ローエングリン》は、当初ボリショイ劇場とのコープロだった。実際に昨年4月、François Girard演出版はボリショイ劇場で上演された。しかしロシアのウクライナ侵攻により事実上両劇場の交流は途絶えたため、セットや衣装その他舞台に必要なものはすべてMETで制作し直しての上演となった。演出家は同じだが、ボリショイとのコープロの記載は消えていた。ハインリヒ王役のGünther Groissböckはボリショイ版にも出ていたが、モスクワから帰るのにたいへんなことになっていたらしい。
テルラムントのNikitinは出演が危ぶまれたが、METのGMは明確に親プーチンと見做されるアーティスト以外は拒否することはないとのことだった。
François Girardは10年前に《パルシファル》をてがけ、今回の《ローエングリン》は《パルシファル》の第2章と語っていた。私は《パルシファル》の舞台もちょうど5年前の再演の時に観ていた。たしかに、衣装や舞台装置、全体のコンセプトはパルシファルの踏襲のように見えたが、私は圧倒的に《パルシファル》の舞台の方が好きだと思った。

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Boris Godunov at NNTT 15&23112022

新国立劇場で《ボリス・ゴドゥノフ》を上演するらしいという噂は数年前からあった。これまでの芸術監督だったら期待はできなかったが、大野監督は「バロックオペラとロシアオペラをシーズンプログラムに入れる」と宣言し、実際そうやってきた。そろそろガチロシアものが来てもおかしくはないわな、と思っていた今年の初め。
2/22にいつものウェブパトロールでワルシャワオペラのトップページにこれを見つけた。

(スクショ撮っといてよかった)

ポーランド国立歌劇場の新演出《ボリス・ゴドゥノフ》はなんと新国立劇場との共同制作!
狂喜であった。タイトル役はEvgeny Nikitin  メインキャストはそのまま日本に来る可能性があるが、確定かどうかはわからない。
ところが2/24にロシアによるウクライナ侵攻が始まった。あっという間にあらゆるジャンルでのロシア排除が広がった。3/1、新国立劇場の新シーズンのプログラムが発表され《ボリス・ゴドゥノフ》は、開場25周年の記念プロダクションとして入っていた。メインキャストもポーランドと同じ。嬉しくてZhenyaにテキストを送ったところ、すぐに「(このことについては)忘れろ」と返ってきた。何があったかと急いでワルシャワオペラにアクセスすると、このプロダクションの上演は中止するとあった。おそらくZhenyaは新国立劇場での上演もなくなると考えていたのだと思う。世界は分断されつつあり、私はもう何も言えなかった。
ロシア人キャストは来られないかもしれないが、大野監督は日本人だけでも上演できるように考えている、とおっしゃっていた。上演が叶うか心配な方々も多かったと思うが、結局無事に成された。もちろん当初のロシア人キャストはキャンセルになった。

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バウツェン行きと鉄道のこと

チェコの国境に近いゾルブ民族の町、バウツェンに行ってきた。

バウツェン駅

ゾルブ語にはチェコ語に近い言語とポーランド語に近い言語があり、バウツェンのゾルブ語はチェコ語に近い言語だ。
ライプチヒからドレスデンまではICE、そこからはTrilexのTLで40分ほど。
駅から歩いて15分ほどで旧市街地に着く。
着いたらお昼過ぎだったのでさっそくゾルブ料理店へ。外の席に案内されて座る。お料理は当然ゾルブのお料理を選び、飲み物はアプフェルショーレ。

これでお腹いっぱい。アイスとかデザートどう?って聞かれたけど食べられないの。

民族衣装のおねえさん

ランチの後、ツーリストインフォメーションに行って簡単な地図を買い、目指すはゾルブ民族博物館。オルテン城の隣にある。

(ゾルブ美術館という普通の市立ミュージアムが旧市街の入口にあるが、それとは違うのでもし行かれる方がいたらご注意を)

ゾルブ民族は文化的に比較的細かく分かれていて、それぞれ可愛い民族衣装がある。民族とシチュエーションによって違う衣装がたくさん展示されていた。
ソ連占領下に言語は弾圧されていたが、その後学校でゾルブ語の教育が再開され、その展示も1コーナーを占めていた。
入場料はオーディオガイドこみで5€。他の見学者がいなかったので、英語のガイドを聞きながらゆっくりみて回った。他に人がいるとオーディオガイドをなぜか鬱陶しく感じるので、きちんと聞きながら見学するのは私にしてはとても珍しいことなのだ。
街の広場には観光客がけっこういたのに、ここまで来る人が少ないのには少々驚いた。
ゾルブ民族博物館は、旧市街の奥にあり、手前の給水塔やお城を見て満足する人が多いのだろうか。
ともあれ、私は20年来念願のバウツェンを歩けてそれはそれは嬉しかった。

欧州も連日気温が高く、しばらくぶらぶらしていたが、だんだんキツくなってきたので駅に向かった。ドレスデンまで戻る列車は1時間に1本程度。16時すぎのに乗るつもりでDBのアプリできっぷを買っていた。その列車はだんだんと遅れ(アプリ上でタイムテーブルが見られる。刻一刻と状況が変わるのもリアルタイムで更新される)ドレスデンでの乗り換えが危うくなってきた。
乗り換えに遅れそうだと「乗り継ぎの列車を逃す恐れがあります、他の列車の御検討を」というアラートメールまでくる。遅れてもどうせ乗り継ぐ予定の列車も遅れるはずだからとたかをくくっていたのが、ドレスデンが近づいても様子は変わらない。
そして乗り換え駅ぎりぎりで届いたメール「乗り継ぎ予定の列車も遅れるので、乗り継げます」というのを電波状態が悪くて見ることができなかった。
乗り継げたのに、諦めてしまい残念なことだった。

DBでは今6、7、8月にそれぞれ1ヶ月有効の9€チケットというのを出している。
特急以外の交通機関が9€で1ヶ月乗り放題なため、お得感がすごく買ってない人はいないんじゃないかと思う。私も7月のは買ったので、まだ有効なのを持っている。
それにしても列車の遅れっぷりとかキャンセルが尋常ではなく、ちょっと遠くに行く時は早めにして万が一の時に別のルートとか考えておかないといけない。
今回はフランクフルトin-outでライプチヒまではそこそこ時間がかかるので、気が気ではなかった。

2年半ぶり海外遠征出入国について覚書

2020年2月以来の欧州渡航してきたので、出入国に関しての手続きについてメモしておきます。

厚生労働省ウェブサイトで水際対策のページを参照。現在外国は青・黄・赤のカテゴリに分けられている。今回出かけたドイツは青に分類されている。

 

www.mhlw.go.jp

出国前に用意するものは「ワクチン接種証明書」。ドイツ入国に際しても提示必要だと思いこみ、イミグレでパスポートと一緒に証明書を出してつっ返されたのにおおいに不満だったが、後でドイツ大使館のサイトを確認すると

「2022年6月11日(土)0時00分(中央ヨーロッパ時間)より、ドイツへ入国する際の新型コロナ(COVID-19)による制限はすべて、当面の間解除されました

この時点以降、日本からドイツへの渡航は旅行目的を問わず(観光、知人等の訪問を含む)認められます。ドイツ入国にあたっては、ワクチン接種証明書、快復証明書、検査証明書の提示は不要となりました。」とあり、すでに必要なかった…
ともあれ、ワクチン接種証明書は日本入国時に必要となるので、3回接種完了した人は準備しておく。

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The Rocking Baritone by Bertrand Normand

先の記事からずいぶんと経ってしまいましたが、3/10からBertrand Normandのドキュメンタリー映画 The Rocking Baritone発表のためのクラウドファンディングが始まりました。

 

6年間かけて撮影し、約60時間に及ぶフィルムを編集したものです。最後の仕上げのために€7000の資金を募ります。
この金額は集まると思います。それ以上の目標は映画そのものを多くの人に知ってもらうこと。
Normand監督は世界中で上映し、テレビ放送やウェブ配信も目指しています。監督は私が作成し運営しているEvgeny Nikitinのサイトを高く評価してくださっており、なぜ彼をフォローするのか、と私に尋ねました。
私の答えは「以前からよく日本で公演をしていたマリインスキ劇場のソリストとしては知っていた。でも彼が特別なアーティストだとわかったのは2012年に新国立劇場の招聘でオランダ人を歌った時から。その夏にバイロイト音楽祭を降板する事件があった時、私は非常に落胆した。それから彼が本当に稀有な才能を持つアーティストだと多くの人に知って欲しかったから情報提供をするウェブサイトを作った」
監督は、スキャンダルの周辺にあった「オペラとヘヴィメタル兼務の珍しい歌手」「もと不良の名門劇場ソリスト」のような内容ではなく、彼がアーティストとして芸術に真摯に向き合っている姿を描こうとしています。
順調にいけば来年6月にプレミエ上映が行われるでしょう。

応援と賛同をいただけると幸いです。

youtu.be

 

 

 

 

2020年

2020年はこれまでとはまったく様相の違う年になりました。
3月に退職し、勉強してからフリーランスで働こうと考えていたところ、COVID-19のパンデミックによる経済的な対策(フリーランスや中小企業のためのセーフティネットとして元からあるものです)の実施に人手がいる為、そちらを手伝うことに。
その後もつい何日か前まで、休日も出勤する繁忙状態でした。退職したはずなのに、最も働いた日々であったように思います。

そんな中、11月にパリ在住の映画製作者からメールをいただきました。
長い時間かけて撮ってきたEvgeny Nikitinのドキュメンタリーフィルム 'The Rocking
baritone' がもうすぐ出来上がるという内容でした。
製作者のNormand氏は、これまでもサンクトペテルブルクに通い、マリインスキー劇場やVishneva のドキュメンタリーを発表しています。2013年からはNikitinを追い、世界各地の公演場所で彼を撮ってきました。私は2014年にリセウ劇場で彼に遭遇していました。すっかり忘れていたのですが、彼に「バルセロナで会ってるよね」と言われ、一人で大きな撮影用カメラを操っていた人がいたのを思い出したのです。
ご多聞に漏れずフランスも経済状況がよろしくないため、フィルムのリリースのためにクラウドファンディングをする予定とのこと。
どれだけ協力できるかわからないけど、宣伝には尽力をするつもりです。
ずっと頭を押さえつけられ、狭い場所に閉じ込められているような閉塞感が少し緩んだような気がしました。

外国どころか日本国内でも行き来がままならず、不自由な日々が続いています。
苦しい生活を余儀なくされている方々も本当に多く、早くこの禍が収まり、安心して過ごせる日が戻るようにと願ってやみません。