リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Casa Vediのマエストロに聞くヴェルディの生涯

映画『カルテット!人生のオペラハウス』の老人ホームのモデルとして知った人も多いと思う、ミラノの「音楽家の憩いの家」カーサヴェルディ。その中で唯一の音楽家職員である指揮者フェルディナンド・ダーニ氏の講演を聴いた*1
作曲家としてたいへん多くの財を成したヴェルディの最後の傑作といわれたのがこの「音楽家の憩いの家」。主に演奏家が入居しているが、音楽に関わる仕事をしていたことが入居条件になっているので必ずしも演奏家でなくてもいいそうだ。
来年に公開される予定というドキュメンタリー『Viva Verdi!』

youtu.be

このトレーラーの紹介が講演の最初にあった。これに見られるカーサの日常に興味をひかれたので、公開されたらぜひ観に行こうと思う。
今回はカーサの紹介ではなく、その建設に至るまでのヴェルディの生涯を作品を追ってたどるという内容だった。

*1:神戸の講演&シンポジウムではカーサに在住なさっている日本人声楽家の方も登壇されたようだ

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ヨガで瞑想、気功でマインドフルネス

タイトルの二つのこと、日常的に私がヨガと気功のレッスンで体験していることだ。
瞑想はなんとなくぼーっとしていてなにも考えていないような状態、メインドフルネスは雑念を入れずにその時していることや見ているものに集中する状態、だと考えている。同じようでちょっと違う。しかし両方とも結局は意識を集中させる呼吸法が重要なのだ。
深く息を吸って、ゆっくり吐いて、怒りが湧いている時には沸騰した蒸気を抜くようにフーッと息を吐いていくとだんだんと気持ちがおさまっていく…と気功で学んだ。
またヨガと気功で共通することに、しっかりと大地(実際に土の上にいるのでなくても)に足をつける、というのがある。*1上方に腕を伸ばしたりするときにも上と下に引っ張られるように。これは身体が伸びるので物理的に気持ちがいい。
瞑想もマインドフルネスも、自分ひとりでやろうとしてもまだうまくできない。
呼吸というのも毎日しているのに、意識してしようとすると難しいものだ。
ヨガのレッスンで身体の柔軟性が高く、ポーズが取りやすいと感じる時は、呼吸がうまくできている時だ。
何かに焦っている時には、気功で先生が話してくださったことを思い返す。
息を抜いて、お腹に気をおさめる。呼吸を整えることで気持ちも整う。

この夏は信じられないほど暑くて、身体も気持ちも疲れている方が多いと思う。
9月は私のお誕生月だから、またここで気持ちをリセット。
呼吸がうまくできて地に足がついた毎日をすごしていきたい。

 

*1:これがいわゆるグラウンディングというのと同じかはよくわからない

着物コミック2題

先日はパリで着ようとして着物持っていったのに気温が高くて挫折した。

そんな私がいま楽しみに読んでる着物を着る女の子が主人公のマンガふたつご紹介

 ひとつめは現在連載中、大阪在住のOLが関西の実在の場所に(喫茶店・図書館・神社等)祖母から譲り受けた着物でお出かけするストーリー。季節と場所とそれにまつわる物語に合ったコーディネートが可愛い。

恋せよキモノ乙女 コミック 1-2巻セット

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 もうひとつは、少し前の作品。こちらも東北の城下町商店街にある小さな着物の店を営む二十代後半の女性が主人公。店にある和箪笥は祖母から譲り受けたもの。このおばあちゃんは存命なので、チマちゃん(これは大学時代の先輩に名づけられたもので、本名は朝子)の指南役にもなっている。

 

チマちゃんの和箪笥 (マーガレットコミックスDIGITAL)

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 両方とも冠婚葬祭や華やかな場面での着用ではなく、日常着としての着物が描かれている。チマちゃんのお店も主力製品は紬らしいし、恋せよ…の方の主人公ももちゃんも、あくまで日常のお出かけで(いわゆるちょいちょい着)着るもの。
読んでいると普通に着物でお出かけしたいなあと思えてくる。今は暑すぎるからちょっと無理だけど…先日40℃近い気温の時に絽の着物で地下鉄に乗っている若い女性を見て驚いた。夏きものって見てるぶんには暑そうではないんだよな。

 

パリの人類学博物館

私はフォークロアが好きだ。音楽に限らず民俗学の分野全般に関心がある。神話伝説など伝承文学、伝統音楽、伝統楽器、少数言語、庶民の生活史等伝承の類別は問わない。
なかでも特にフォークカトリシズム*1を代表とする土着の信仰とメジャーな宗教との融合や少数言語の保存について。
愛徳姉妹会のメダイユ教会*2やカタコンブにも行きたかったが、なにしろ滞在日数が少ないのでそちらは次回に回すことにして、今回はシャイヨー劇場に近いふたつの人類学博物館に行ってみた。

*1:「ローマカトリック教会の長女」であるフランス国ではこの点追及するネタも多くある

*2:奇跡のメダイを大量に販売していることで有名だが、ここには「地球の聖母」といわれる聖母の出現に立ち会ったカトリーヌ・ラブレーの遺体が安置されている。ルルドの聖女ベルナデッタもそうだが、腐敗しない遺体というのも聖人認定の際には重要な判定基準になる。《ボリス・ゴドゥノフ》で言及されるウグリチのドミトリ皇子も正教会で列聖されている。これは劇中でシュイスキーが「他の遺体と異なり、眠っているかのような…」と腐敗していない状況を描写していることで、列聖の基準をクリアしていることがわかる。もうひとつは彼の名のもとに盲目の翁の目が見えるようになったという奇跡に拠る

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Toneelgroepamsterdam: Roman Tragedies at Théâtre national de Chaillot 30062018

Performed by Toneelgroepamsterdam

Director:  Ivo van Hove
from william shakespeare's  Coriolanus, Julius Caesar,  and Antony and Cleopatra

オペラの他に何か観るものはないかな~と探していた時に、シャイヨー劇場のプログラムにIvo van Hoveの代表作《ローマ悲劇集》を見つけた。大喜びできっぷを予約。この時きれいに後部座席だけ残っていることになんの疑問も感じなかったが、後日劇場からきたメールを読んで仰天した。いわく「予約した席番は無効です。役者も観客に混ざります。席は自由です、観劇中飲食も自由です。劇場にいらした時にスタッフの指示に従ってください」どういう状態なのか見当がつかない。まあ行くしかないよな。自由席なら早く行けば好きなところに座れるわけだし、飲み物とお菓子を持っていくことにした。

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Boris Godunov (1869) at the Opéra Bastille 29062018

オペラ座職員のストライキにより演奏会形式上演

Conductor: Vladimir Jurowski
Xenia: Ruzan Mantashyan
Fyodor: Evdokia Malevskay
Nurse of Xenia  Alexandra Durseneva
The Innkeeper: Elena Manistina
Boris Godunov: Ildar Abdrazakov
Pronce Shuiski:Maxim Paster
Pimen: Ain Anger
Grigori Otrepiev: Dmitry Golovnin
Varlaam: Evgeny Nikitin
The innocent: Vasily Efimov
Andrei Chtchelkalov: Boris Pinkhasovich
Mitioukha: Mikhail Timoshenko

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パリ再訪、オペラ座ストライキ騒動

パリの国鉄ストライキは続いている。5月の《パルシファル》では劇場の設備トラブルにより前半の舞台がキャンセルになる事件があった。その後はつつがなく上演されていると思いきや、なんとオペラ座職員の賃上げ交渉のためのストライキが始まってしまった。
比較的恒常的に行われていることで、昨年観たパリオペラ座のドキュメンタリー映画『新世紀 パリオペラ座』でもしっかりその様子が描かれていた。*1 
こういうことを想定して可能ならば2回公演を観る予定にしているのが私の常である(そのおかげでパルシファルは1回観ることができた)が、今回は仕事の都合でそれがかなわなくなった。つまりばっちりストに当たるかもしれない。
私が持っていたのは6/29のきっぷ。6/25と6/26は公演がキャンセルになってしまった。
キャンセルしそうだからと言って、行くのをやめるわけにはいかない。自分の強運に賭けて出かけた。
乗継の時点でZhenyaからストライキでキャンセルの可能性があることを知っているかとメッセージが届いた。
到着後も「85%キャンセルになると思う。プランBはあるか?」と言ってきた。「日本ではストライキなんかないよ」「ここはフランスだ。そういうカルチャーなんだ。ストライキをするのがフランスのカルチャー、しないのは日本のカルチャー。その違いだけだ」

翌日(公演当日)昼過ぎには告知が出る。その日の《トロバトーレ》は演奏会形式になっていた。29日分のボリスもおそらく演奏会形式になると私は予想していた。
果たしてその通り、舞台セットはなし。多少の衣装は有りの演奏会形式とメールがきた。キャストにはその少し前に連絡が来ていたので「no set」というのはわかっていた。
通常は公演中止でない限りリファンドできないが、演奏会形式になったことで客側にリファンドするかそのまま観劇するか別の公演に振り替えるか選択できることになった。余分にきっぷを買っていたの*2をリファンドできたのはすこしラッキーだったかな。
3年前に一度、フィレンツェで同様のストライキから演奏会形式上演になったことがあった。ストライキ耐性もその時よりは上がっていたのか演奏がとても素晴らしかったせいか、結局は満足度の高い鑑賞経験になった。レポートは次の記事で。

 

*1:映画では組合交渉がうまくいって無事に上演された

*2:当初2回みるつもりで29日分は少し遠い席を買っていた。1回鑑賞に決めた時に最前列を買い直したため2枚持っていたのだ