リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Theater an der Wien と《フィデリオ》または《レオノーレ》

今回出かけたのはウィーン芸術週間のプログラムとしての《フィデリオ》。アンデアウィーン劇場の通常公演には入っていないものだ。
シカネーダーが創設したこの劇場の最初の音楽監督は、当時新進気鋭の作曲家だったベートーベン。彼の作曲した唯一のオペラである《フィデリオ》の第1稿・第2稿*1もここで初演された。
今年の1月には第2稿《レオノーレ1806》が上演されていた。過日亡くなったHarnoncourt が指揮の予定であったが、この時点では引退表明していたのでお弟子のStefan Gottfried が指揮を執った。ORFIIIでのテレビ放送がyoutubeに全編アップされている。アンデアウィーン劇場の様子と在りし日のHarnoncourt御大のインタビューも見ることができる。

Festkonzert FIDELIO „Leonore 1806“ im Theater an der Wien

コンサート形式上演となっていたが、衣装はつけている。テキストの改編があり、歌手は歌うだけになっている。
favourite がピツァロを歌うことが多いため、自然といろんな上演スタイルの《フィデリオ》を聴くことになっているこの頃の私*2
どのようなスタイルが好みかと考えてみると「通常のジングシュピール形式で2幕2場の前にレオノーレ序曲第3番が入るもの」かな。

 私は国立歌劇場へ行く時も、宿はアンデアウィーン劇場の隣にあるホテルベートーベンにしている。カールスプラッツ駅のセセッション側出口からすぐなので、オペラ座へ行くのにも近いのだ。ホテルの中二階にあるサロンの窓からは、もとの劇場入口のパパゲーノ門が見える。滞在中は1日中流れているベートーベンの曲を聴きながら、ぼんやりとここから外を眺めている時間が多い。

*1:

当初タイトルは《レオノーレ》

*2:どなたもそうだと思うが、比較したくなるからいろんな上演版を聴いてしまうことにもなるのだ

Fidelio in Wiener Festwochen at Theater an der Wien 18062016

またしても到着当日、開演ぎりぎりに劇場にすべりこむ予定で出発。しかし、乗継が30分ほど遅れたため、ウィーン到着も30分遅れ。
荷物が出てくるのを待つ時間もないので、機内持ち込み手荷物のみ*1。ちょうどCATに乗ることができ、ミッテ駅まで最短の16分。U-Bahn に移動するより早いかとタクシーに乗ってみたら運転手さんはナビをセットした後「今日はレインボーパレードがあったから、近い道は通れないかも…」「え〜!」楽友協会の近くで少々渋滞はあったもののなんとか劇場真横のホテルに到着。もう開演時間はすぎていた。
荷物を置いて、着替えもせずにメイクをちょっと直して出かけた。
チケットを引き取る*2 時に係の人*3が「もう始まってるからね」「わかってるよ、ここで待ってればいい?」「あと25分あるから、立ち見席に連れてってあげる。休憩の後に自分の席に行けばいいよ」4階の立ち見席に誘導されているとき、ちょうど私のfavouriteの一幕の登場アリアを歌う声が聴こえた。間に合った!
4階はなかなか見晴らしがよく、音もよいところだった。ずっとここでもいいな、とちらっと思ったくらい。

*1:お得意の着物一式入り

*2:Festwochen のチケットは、イベント事務局で引き取りが基本。公演当日には開演1時間前から公演のある会場で引き取ることができるが、通常の劇場カッセとは違う窓口になる。その点注意。

*3:Festwochenのスタッフは若者ばかりだ

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ウィーンに来てます

ウィーン芸術週間のプログラムの一つ、アンデアウィーン劇場で上演されている《フィデリオ》を観に、またしてもウィーンに来ています。
4月から、仕事で身動きとれなかったのが、やっと休日出勤分の代休が取れるようになったので、(若干心配はあるものの)堂々こちらに参りました。
到着日の公演には、乗継便が少し遅れたため遅刻してしまいましたが、休憩前から入らせてもらうこともできました。
もう一度楽日の公演を観て帰ります。
指揮のミンコさん、以前ROHの《イドメネオ》をstrange staging て言ってましたけど、こちらの方があきらかにstrange! 

Annaのエルザデビュー、Nadjaのオルトルートデビュー

5月から6月にかけて、Anna Netrebko は、ゼンパーオパーと、マリインスキー劇場でエルザ*1 のロールデビューを果たした。彼女は2年後にバイロイト音楽祭でもエルザを歌う予定。
ワグネリアンとファンの間でも賛否両論であった。彼女自身はワーグナーの作品が好きだと以前語っていたし、リリカルでドラマティック…というエルザの役に声は合っているのではないかな、と私は思う。しかし、どうしてもディクション*2 と表現がワーグナーの作品向きではないとも感じる。
ゼンパーオパーの方では、Piotr Beczala がこれまたローエングリン像を塗り替える*3ロールデビュー。
いわゆるワーグナー歌手の存在というものは、今はもうワグネリアンたちが持っている幻想ではないのか、と考えてしまった。
また、マリインスキ劇場での公演では、Nadja Michael がオルトルートデビューだった。Nadja はメゾからソプラノにスイッチした人で、ワーグナー以外のレパートリーが、私の大好きな W.Meier 様に似ているし、ドイツ人であることからもまったくこの役に違和感はない、と思った。
マリインスキ劇場の方は、男声陣をアンサンブルの中でもかなり強力なワーグナー歌手でそろえていた。
それにこの劇場の持っている《ローエングリン》の舞台は非常に美しい。
私は常々この舞台を見てみたいと熱望しているのだが、実際に行くには難しい。この公演も白夜祭のプログラムで一回限りだし、連続で上演されることがあまりないからだ。
どの程度信頼のおける情報かはわからないが、今回はAnna のおかげでどうも秋頃に録画がブルーレイで発売される予定があるらしい。
ほんとだったら、どんなにうれしいことか。ぜひ実現してほしい。

サンクトペテルブルクテレビのニュースビデオ。素敵な衣装と装置がおわかりいただけると思う。


Anna Netrebko sings Elsa in St. Petersburg 2

Nadja のインタビューもMariinsky En の方のチャンネルにアップされた。


Nadja Michael at the Mariinsky

*1:言うまでもなく、ワーグナーの《ローエングリン》で

*2:ドイツ語に似て非なる言語に聞こえる

*3:誉めてません

集中!5月21日のウェブキャスト

月一更新になりつつある…。

が、5/21になぜか微妙な時間差で私の聴きたいもののウェブラジオ放送があるのでメモとお知らせ。

まずは先の記事に記載したテアトロレアルの《パルジファル》
Radio Clasica  El fantasma de la ópera 19:00 - 23:30  日本時間 5/22 02:00-06:30

www.rtve.es

ザルツブルグ聖霊降臨祭音楽祭《ジュリエッタとロメオ》19:30-22:00  日本時間 5/22 02:30-05:00

oe1.orf.at

 

ロイヤルオペラハウス《タンホイザー》18:30-22:30  日本時間  5/22 02:30-06:30

www.bbc.co.uk

本放送後、OE1 と Radio Clasica は1週間、BBC radio 3 は1か月間オンデマンドで聴ける。

近況

Twitterが動いているので、私が活動しているのはおわかりいただけると思う。
先月までの予定では、今日、マドリードに発ち、テアトロレアルで上演される《ルイザ・ミラー》と《パルジファル》*1を鑑賞するはずだった。
ところが4月になって、次々と職場でトラブルが勃発し(いちおう)管理職である私が休暇をとってる場合ではなくなった。
仕事では沈着冷静、鋼の精神力と機動力を旨としているわたくし。自分のせいじゃないのでさすがにちょっと腹が立って「航空券キャンセルお願いしたいんですけどっ!」と半ギレで自分の机から*2エアのキャンセルをし、友人に頼んでオペラのチケットは引き取ってもらい…と、心の中では大号泣である。
年に複数回海外遠征に行っているが、有給休暇は余っている状態だし、いなければならない時期は必ず会社にいる。「なんでこんなに有休余ってるんですか?」と不思議がられるくらいなのだ。
まあ、今回はしかたないが、トラブルのこともあって、ほとほと勤め人生活に嫌気がさし、もう少し時間をかけて準備しようと考えていたことを、この一年で勝負してしまおうと思う。
私の遠征はfavouriteのパブリシティとフォローいう仕事の一環になっている。もちろん無償だけど、大事な「お仕事」なのだ。

テアトロレアルの《パルジファル》は、21日の公演がRTVEとHispasatが共同で映画館等で4K映像配信された。スペイン国内のことなのでもちろん観られなかったが、この映像はDVDになるそうで、とても楽しみ。
またラジオ放送は、レアルの広報によると5月21日にEBUのいずれかの局で放送予定とのこと。

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21日のカテコ写真。現地友人が撮影。

*1:同プロダクションを二期会の公演で観てはいるが

*2:終業後、自分の携帯電話からです、念のため

3月観たもの聴いたもの、まとめて

予告どおりに、Stanislav Kochanovskyの日本デビューのため、オーチャードホールまで行ってきた。

私が彼の演奏の録音を聴いたのが2年前。それ以後、彼の活躍は目覚ましく、ヨーロッパ中を飛びまわっているようだ。地元のマリインスキ劇場でも頻繁にオペラを振るようになった。

トピックス | N響オーチャード定期2015-2016シリーズ | Bunkamura

彼の指揮ぶり、音楽づくりというのは丁寧で、演奏するオーケストラに対して最大限の敬意を払って指揮をしているというのがよくわかる。
まだ若いこともあって、自己主張はあまりなくスマート、という感じか。
N響とのコンビネーションもぴったりで、チェロコンチェルトの2楽章は非常に美しかった。金管群の正確さが、さすがN響。きれいな倍音が鳴っていた。
また、今回のチェロコンチェルトでもそうなのだが、私が考えるKochanovskyの優れたところは、ソリストをうまく演奏させ引き立てるという点だ。
オーケストラとのバランスが絶妙で、ソロの音を格段に浮き上がらせる。
最初に持った印象とまったく変わらない采配ぶりに、うれしくなった。
次は彼が振るオペラをぜひ聞いてみたい。
終演後、歓迎と感想を伝えようと、オーチャードホールのステージドアで、待ってみた。出待ちの人は少なく、男性ばかりだった。
「私はヨーロッパにはよく行くんだけど、ロシアは行ったことないんだ」
「サンクトペテルブルクにおいでよ。来なきゃいけないよ、君は」
(そうですね、行きたいんですけどね…)
実際にお会いすると、意外と小柄でもの静か、都会的な人だった。話し方もやさしく、どっかのうるさくてでっかいお兄さんとはえらい違いだな。

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