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リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

《メッセニアの神託》 at 神奈川県立音楽堂 28022015

Opera

マドリードから成田空港には28日9時30分頃到着。スーツケースは宅配便で自宅まで送ることにした。それからカプセルホテル9h *1へ行き、大急ぎでシャワーを使った。もちろん顔洗って~としてたら、たいへんなことが。メイク用品を送ってしまったスーツケースの中に入れていたのだ。泣きたくなった。ほぼすっぴんで演奏会に行かなくてはならない…。まあ、誰も私の顔なんか気にしないからいいか、と気をとりなおして横浜まで。
さて、欧州のオペラ、コンサート以上に楽しみにしていた《メッセニアの神託》である。
神奈川県立音楽堂でも懇切丁寧なサイトがつくられ、⇒⇒⇒ バロックファンが大集合と期待が大きい公演だ。音楽監督ビオンディのプレトークにもたくさんの人が来ていた。

 カールスルーエのヘンデルフェストに行って、すぐこっちに来たような人はたぶん他にはいないと思うので、最初に言っておく。あくまで私の感想である。

この上演はヘンデルフェストの2作品よりだんぜん佳かった。近頃はチケット代を出して*2 観に行った素人ファンの率直な感想でも、アーチストに読まれて気にいらないと怒られちゃったりするから、書きにくいことこのうえないんだけど、この公演は掛け値なしによかったので、その心配はない。

Vivaldi: L'Oracolo in Messenia

《メッセニアの神託》by アントニオ・ヴィヴァルディ

あらすじは(今回みっつめ)バロックオペラによくある貴種流離譚(決定打がなくすぐに信じてもらえないのがちょっと変わってるかな)とお国騒動と交錯した恋愛関係。筋はあまり関係ないだろう。オペラの体裁であるがスター歌手の歌をきゃーきゃー言って聴く、というコンサートに近いような気がする。

Polifonte: Magnus Staveland    
Merope: Marianne B. Kielland 
Epitide: Vivica Genaux 
Emira: Marina De Liso 
Trasimede: Julia Lezhneva 
Licisco: Franziska Gottwald
Anassandro: Martina Belli

Europa Galante
Director/violin: Fabio Biondi 

エウローパ・ガランテの演奏、どこかへトリップしているらしいビオンディの采配、広くはないオーディトリアムにみっちり詰まった「音楽」。

この密度、というのは男役のほとんど*3がメゾソプラノで歌われたせいもあると思う。私はバロックオペラの男性役はできれば男性歌手で見たいという願望があるから、カウンターテナー(の上手い歌手)が気になる。望みどおりにカールスルーエでそれらの舞台を見てきたが、こちらでメゾの安定感と巧みなアジリタ、すごくステキな舞台姿*4(可愛らしすぎて、向いてるのかな?と思ったユリア ちゃんでさえ、とっても凛々しくて立派)を体験し、それをひっくりかえさざるを得なかった。
危うくヴィヴィカ様に惚れそうになった。*5
予想どおり、というかそれを上回る Julia Lezhneva のハイパーパフォーマンスがとにかくすごかった。Cecilia Baltoli の得意曲、son qual nave がこの作品の中でLezhneva 演ずるトラシメーデに割り振られている。Baltoli はこの曲を歌う時、音を自由自在に響かせ、大嵐が見えるかのような力強さで歌う。Lezhnevaはずっと涼やかな美声で、なめらかで明るいコロラトゥーラだ。響きを楽しむ、という風ではないが、声そのもののプロジェクションがとてもいい。軽々と歌う様が鮮やかで快い。
聴き終わってしまうのが惜しいくらいだった。
今回はGenaux の超絶技巧的なところは聞かれなかったが*6、堂々たるヒーローぶりだった。Sabaちゃんよりかっこよかった。
他のメゾソプラノの人たちも皆見目麗しく、芯のしっかりした美声であった。黒一点で、かつバロックオペラのテノールというのは、他でのバスやバリトンに振られる役柄が多い*7ので地味めになってしまいがちなところ、上背のある堂々とした姿でもあり、きっちりと物語の重心をとって好演だった。
女性役のソプラノさんたちも艶やかな声や姿であった。幕切れのふたりの葛藤の場面など、サスペンスちっくな緊迫感があって、いやがおうでも盛り上がってしまった。

簡単ではあるが、能舞台を模したステージで、一部仕舞のような演技もあり、ミニマムでハイセンスな演出だった。衣装もそれぞれギリシャ風だったり、武士風だったり、ancient avant-garde とでも名付けたいデザインだった。緞帳代わりに板絵襖みたいなものが使われるのもおもしろかった。
低予算で苦しい時のビデオ頼み、らしいのが見てとれた《テゼオ》も、このくらいの潔さでつくられていたらどうだったろう。舞台の大きさを考えるとちょっと無理があるのかな。でも、舞台の奥行を半分くらいにしたらできないか?などといらんことを考えてしまった。
ろうそく上演だって薪能みたいにすればできる。

欧州ぐるぐるで、終着点がまたこのようなすてきな舞台で楽しかった。

ということで、無事に感謝して、この項終り。

 

*1:シャワー1時間1000円で利用できる

*2:これ重要。招待されたり稿料もらってるレビューアーとちがうし。これも金だしてりゃ何言ってもいいのか、と反論がきそう。悪いけど、こどもの発表会じゃないんだから、時間とお金をかけるんならそれなりのパフォーマンスを期待するのがお客でしょ。だからこそ、何か問題ありそうなときは、事前にエクスキューズ(風邪ひいてるけど歌いますとか)があるわけだし。興行ってそういうものだと思う。異論は歓迎。それは間違ってると思われたら、ご意見きかせてください。ただし、自分のひいき歌手については当てはまらない。溺愛心情的にこどもと同じだもの。

*3:当初予定されていたカウンターテナーのSabataがメゾに代わったので、テノールのポリフォンテ役以外全部

*4:私はヅカに興味はないが、初めて男役にあこがれる気持ちがわかった

*5:しかしわたくしはかのバスバリトン氏に貞節を誓っているので、これはあってはならんのである

*6:彼女も、もともとすごい技巧派なのだ

*7:お父さん、おじさん、怪物、悪者など