リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

ルクセンブルクの街

ルクセンブルクは日本から行く場合、フランクフルト、パリ、アムステルダムから空路で行くか鉄道で行くのが効率的だと思う。費用や移動にかかる時間を考えて、往路はパリCDG空港からルックスエアに乗ることにした。ターミナル2Dに到着後、荷物を受け取ってあらたにターミナル2Gでルックスエアにチェックインする。
どうやらえらく辺鄙な場所にあるらしい2G。移動に30分と記載されていてびっくり。前情報はtwitterで教えていただいた。*1
すごく小さくて少し前までバラック状態だったとか、飛行機には基本歩きかバスで搭乗とか。
ターミナル2Gには空港内の専用シャトルで移動するしかない。ターミナル2Fの2階からそのバスは出ている。バスに乗車している時間は10分程度。

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ターミナル2G到着

中に入るとすぐPAULの売店があった。チェックインカウンターはガラガラ。スタッフものんびりしていた。私はつい荷物を預けるのを忘れてしまった。いったんセキュリティチェックに入ってしまったが、係員が「スーツケース預けないと!うっかりしてたね」と注意してくれた。チェックインカウンターに引き返して自動バゲージドロップコーナーに行った。e-ticketのバーコードがどうしても読み取られずに困って、お客そっちのけでおしゃべりに興じているスタッフに聞いてみると、拡大してスキャンしないといけないことがわかった。なるほど。

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ゲート前の待合スペースは広い

ボーディング時間になったらゲートまで移動し、本当に歩いて乗った。間違えないか心配になったがルックスエアは一機しか停まってなかったので間違いようはなかった。小さいプロペラ機。定刻に出発。しかしずーっと滑走していた。あまりにも滑走時間が長いので飛ばずに陸路で行ってしまうのかと思った。
それでもやっと飛んで、約1時間でルクセンブルクフィンデル空港に到着。小さい空港なのであっという間に外に出られた。時刻は22時過ぎ、タクシーでホテルまで。料金は45€だった。公共料金は比較的安いルクセンブルクで、タクシー料金は高めかな。昼間ならバスやトラムで移動した方がお得だと思う。タクシーもそうだが、ホテル以外のお店ではまず「フランス語?英語?」ときかれる。表示はドイツ語とフランス語*2がほとんどで、人々の会話は基本フランス語だった。英語はパリ市内程度には通じる。

*1:顔の見える遠征猛者の私のFFさんたちはさすがである、直ちに様々なアドバイスをいただける

*2:例えばオペラの開演前の「携帯電話の電源をお切りください」等の告知はフランス語と英語、字幕はドイツ語とフランス語というように内容によって変わっていた

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パリ経由ルクセンブルクへ

f:id:Lyudmila:20181211201944j:image    見に行ったのはこれ。2年前にウィーン芸術週間でも観たプロダクション

今回、私はパリ経由でルクセンブルクへ行ってきた。4日にルクセンブルク着*1帰りは8日にストラスブールでいったん下車して友人と会ってからパリへ。市内で一泊して翌9日にCDG発。
パリは燃料税増税に抵抗する黄色ベストデモが毎週のようにあり、8日も行われていた。すでにデモではなく「暴動」「内戦」とまで報道される始末。8日はあらかじめ交通規制や商店等の臨時休業が告知されていた(らしい)。私は文字どおり時間が決められた「デモ」だと思いこんでいたし、観光をするわけではないので、シャンゼリゼ通りを中心とする立入り規制も無関係だとまったく気にしていなかった。
様子がおかしいと気づいたのは東駅に降り、タクシーに乗ろうとした時だった。

*1:CDGからルックスエアに乗り継いだので、往路は空港から出ていない

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Bis: Franco Fagioli and Venice Baroque Orchestra 東京オペラシティコンサートホール 22112018

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日曜の西宮に続き、初台に行ってきた。
兵庫芸文ではいきなり大ホールでほぼ満席に近い聴衆、初日ということ緊張の度合いも高くオケ合わせも慣れていないようだったが、聴衆の集中力と歌唱力もあり随分といい演奏会だと思った。
しかし、公演3回目のこの日は期待を数倍上回るものだった。今回もバロックオケにしては大きめかと思ったが、客の入りもよく(前宣伝がかなり功を奏していたようだ)、演奏の息も合ってきていた。
私の席は2階バルコニーL側舞台より。このコンサートホールではなるべくこの位置を選ぶようにしている。音の聴こえ方がまるで違うのだ。
思った通りオケの音がまるまって上に上がってくる。
またフラちゃんの声は驚異の全方位型。背後にも倍音が広がるのだ。あの響の広がりかた、音の放射性は、実際に聞かないとわからないだろう。
キレッキレのアジリタ、3オクターブの声域、パワフルな発声と繊細な表現力。
フラちゃん自身の技術力とオペラチックな表現力は年々増しているようだ。
さらに、私の位置からみて改めて確認できたのは、彼のアンサンブルを率いる統率力だ。ここはヴァイオリンのアンサンブルリーダーもチェンバロの通奏低音も当然統率できる力があるはずだ。
にも関わらず、完璧に楽器を操っていたのはフラちゃんだった。目配り、ちょっとした指の動き、果ては声のコントロールで。これができるソリストというのは実は少ない。
有名なオペラ歌手でも、さらに有名なピアニストをアカンパニストにすることがある。そうするとどちらも相殺されて凡庸になってしまうことが多々あり、素晴らしい組み合わせで聞いているはずなのにいまひとつ…ということはありませんでしたか?みなさん。
私はアカンパニストを操れる歌手こそ最高級だと考えている。*1
確かにVBOはバロックアンサンブルとしても素晴らしいのだと思う。でも器楽曲の時よりもフラちゃんの歌が入った時の方が断然音がいいのだ。歌ごころ倍増。
フラちゃんは、ヘンデルのアリアを一曲づつ丁寧に歌う。オブリガートがつく曲では一層ひとつひとつの音符に心を込めて楽器に寄り添って歌っているのがよくわかる。
そして彼の真骨頂である鬼神のごときみごとなアジリタはものすごかった。
技術的にこれほど優れていながら、情景を声で描くことのできる表現力と叙情性を併せ持つ。音楽のパラダイムシフトを起こした天才であるモーツァルトのようだ。ミューズに愛されている。
今回は最後のCrude furieでフラメンコ風の足さばきはあったが、ペンギンみたいな可愛い横移動がなくて残念だった。
それにしても最高潮のフラちゃんを聴けるという僥倖。招聘に尽力した友人たちが誇らしい。実際の招聘元、アレグロミュージックさんの計らいにもどんなに感謝してもしたりない。

*1:アカンパニストとして超一流の人もいるが

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Franco Fagioli and Venice Baroque Orchestra 兵庫県立芸術文化センター18112018

 

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ついにフラちゃんが日本にやってきた。有料プログラムに、この招聘に関わる日本のファンの尽力がわかる文章が書かれているのでぜひご一読いただきたい。
このフラちゃん招聘プロジェクトの発火点になったアルチーナさんと同好の友達と初日の西宮公演に行ってきた。
プログラム詳細は会場のサイトに載っているので略。日本のヴェニューは親切で、アンコールまで載せてくれるし。

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徳川美術館特別展覧、源氏物語絵巻をみる

友人のご厚意にて、徳川美術館の賛助員向け特別展覧にうかがった。
現在、特別展【源氏物語の世界】が開催されている。徳川美術館には12世紀に制作された国宝の源氏物語絵巻三巻が収蔵されており、額面装から本来の巻物装に修復*1したものを今回展示している。
館内の展示も鑑賞したが、特別展覧は実際に広げられた絵巻を展示ケースごしではなく、拝見できるというものだった。マスクを着けて、掌を絵巻の上にかざしたりしてもいけない。竹河二、宿木三、東屋一の三巻。
細い墨文字のテキスト部分の文字は非常に美しく残っている。絵はやはり褪色してかすれてしまっているが、典雅な筆致はそのまま再現されている。金銀の箔は変色しているとはいえ十分に装飾の効果はあげている。台紙は茶色になってしまっていたが、濃い茶色部分はもとは蘇芳、薄い茶色部分はピンク色だったそうだ。今見るよりずっと鮮やかな和の色彩がここにあったのだなと想像できた。いくら巧みに描かれていたとしても、後世に作られたコピーとはまったく違っているのだと思う。
徳川御三家のうち、尾張徳川家のみがこのような美術工芸品を保存展示する施設を持っている。
尾張徳川家のお膝元にいてよかったとつくづく思う。

*1:額面装にすると常時空気にふれていたり、台紙にテンションがかかり長期の保管に適さないと判断されたそうだ

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音楽博物館 Musée de la musique

ホールに附属して楽器博物館があるところは少なくないが、Cite de la Musique の中にある音楽博物館は、新しいうえにかなりの規模だった。
入場料は定期会員(3回コンサートチケットを購入すればなれる)割引で5€。オーディオガイド付き。オーディオガイドは日本語はないけれど、展示してある楽器の音が聴けるので借りたほうがいい。
時代ごとに楽器の展示と解説ビデオが見られるようになっている。中世期の階で大量の弦楽器の中をさまよっていると、ちょっとした舞台と椅子の並んでいるエリアに出た。小さなサインボードにミニコンサートの案内があり、1回目が11時と記載したあった。
ちょうどその時刻。私を含めて4、5人が並べてある椅子に座った。
すぐに演奏者がやってきて「前の方に来て座ってください」と促した。舞台のすぐ前にも椅子があったのだ。

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スピネット群の前の椅子

「中世トルバドゥールの歌を演奏します」と言うと彼女はヴァイオリン状の楽器を弾きつつ歌ってくれた。これが素晴らしく巧かった。私は中世音楽もフォークロアも大好きなので、このあまりのラッキーさにどきどきした。

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Domitille Vigneron


演奏が終わってから「その楽器はいつの時代のものですか?」と尋ねると「12世紀。 vièle っていうの」と教えてくださった。民族音楽に広く使用された中世フィドルの仲間だ。彼女はもともとヴァイオリンが専門のようだった。「演奏、素晴らしかったです」と言うと「トルバドゥール(Troubadour)の歌よ。よかったらCDがあるから下のショップ*1で買ってね」とにこにこ宣伝。足元に3枚CDが置かれていたのは気づいていたが、彼女のものとは思わなかった。
彼女の名前はDomitille Vigneron アンサンブル名はFlor Enversa

www.flor-enversa.com

中世そのままにオック語*2でのトルバドゥールの演奏を各地*3 で行っており、そのための研究と楽譜の再現をしているらしい。教会や学校でのコスチュームプレイが主な演奏活動とのこと。

ミニコンサートを聴いた後は、順番通りに展示を見てまわり、最上階の現代音楽コーナーで半世紀前の巨匠たちの現代音楽演奏のフィルムをゆっくり鑑賞した。

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シンセサイザーの歴史




私は開館してすぐ入ったので、他の見学者が少ないのかなと思ったのだけど、もしかしたらいつもたいして人が入っていないのかもしれない。
中身も充実して興味深いミニコンサートもあり、落ち着いて見られるいい場所だな、と思った。

*1:言われたとおりミュージアムショップのCDコーナーを探したがなく、迷っていたらレジの前にあった。アーティストの意向ということで現金での支払いを求められた

*2:オクシタン語(フランスのコスメブランド「ロクシタン」と同じですね)南フランスで主に使用されていた少数言語。カタルーニャ語に近く、現在でも話者がおりアイルランドのゲール語のように、その言語で歌を演奏するグループもいる

*3:スペイン、イタリア、フランスに渡るオック語圏

驚異のカウンターテナーズ&テノール Artaserse @ Oper Köln 27.12.2012

ナンシーを皮切りにツアーの先々で激賞されてきた『アルタセルセ』プロジェクト。 最終日に突撃してまいりました。
ケルンオペラは現在改装中で、まんまミュージカル用のテントのような仮小屋が中央駅のすぐそばにあります。 キャッツシアターの中に、オペラ劇場の座席が並んでいる状態を考えてください、そんなかんじ。
ミュージカルを想定しているのでしょうから音響板なし、音響調整たぶんなし。 外の音(救急車のサイレン) 聞こえる、と必ずしも良い条件とは思われませんでしたが、ダイレクトで真摯な演奏を聞くことができたと思います。 それぞれの生の音、声の個性がよくわかりました。
チケット完売につき、ほんとに満席。

Leonardo Vinci   ARTASERSE

Artaserse : Phillipe Jaroussky
Mandane : Max Emanuel Cencic
Artabano : Juan Sancho
Arbace : Franco Fagioli
Semira : Valer Barna-Sabadus
Megabise : Yuriy Minenko

Conductor : Gianluca Capuano
Orchestra : Concerto Koeln

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