リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Franco Fagioli and Venice Baroque Orchestra 兵庫県立芸術文化センター18112018

 

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ついにフラちゃんが日本にやってきた。有料プログラムに、この招聘に関わる日本のファンの尽力がわかる文章が書かれているのでぜひご一読いただきたい。
このフラちゃん招聘プロジェクトの発火点になったアルチーナさんと同好の友達と初日の西宮公演に行ってきた。
プログラム詳細は会場のサイトに載っているので略。日本のヴェニューは親切で、アンコールまで載せてくれるし。

 奇しくもこのブログの最初の記事もヴェニス・バロック・オーケストラとカウンターテナーのPJのコンサートのものだった。その時よりも編成はコンパクトで演奏にも少々ぬるい部分があった。しかしまあ、メインはフラちゃんなのでいいとしよう。
器楽の一曲目を終えて、フラちゃん登場。8年前にバルトリのお伴を勤める彼を見た時より格段にルックスが洗練されている。「イケメン」カウンターテナーと認識されるようになるとは欠片も思わなかった*1
聴衆を驚嘆させた広い声のレンジと装飾技術、顔芸はその時と変わらない。
最初のアリアでは、響きが薄く、音がぼやけて聞こえた。私はしばしばホールに耳が慣れるまでそのように聞こえることがあるので、そのせいかと思ったが、どうもフラちゃんは緊張しているようだった。次からは声のパワーが徐々に上がって、バルトリ風の声の響かせ方も聞こえるようになった。
硬い表情もほぐれてきて、身体も動いてきた。9月に聴いてきたPJのコンサートでも、レチ付きでアリアを歌っていたが、同じ曲をフラちゃんが歌うとPJとは違った少し暗めの色彩を感じた。やはりオペラの人であり、物語る力が強い。
後の方の曲になると、ちょこちょこっとペンギンみたいに横に歩いたり、器楽のアンサンブルに発破をかけるように指揮したり、フラメンコ風に足踏みを決めたり見ていても楽しかった。
とどこおりなく全プログラムが終わり大喝采。アンコールはまずDopo Notte フラちゃんはとても明るい表情になっていた。もう一曲「リナルドからLascia ch'io pianga」と言ったとたん会場から拍手。フラちゃんの「この曲知ってる?」の問いかけに聴衆うなずく。「Si!」と答える声が上がった。まず彼が歌い始め、ダカーポで「さあ、みんなで歌って」というように聴衆を誘導した。*2 私もそうだが、意外と合唱経験者やソロで歌ってる人も多かったのかびっくりするほどの合唱が始まってしまった。
フラちゃん先生は満足げだった。おそらくこの後の公演でも合唱誘導はあると思うので、お出かけの方は次の歌詞だけでも覚えていきましょう。

Lascia ch'io pianga mia cruda sorte,
e che sospiri la liberta.

兵庫県芸術文化センターの大ホールは2100席程。この会場でも客席の埋まり具合はよく、聴衆もすごく集中していたし、終演後に行われたサイン会はかなりの人数が並んだ。聴いている私たちも満足だったが、初めてきたフラちゃんもきっと満足してくれたと思う。
福岡、初台、水戸、とまだチケットはあるようなので、お時間のある方はお出かけになることをおすすめします。すばらしいバロック音楽体験になるでしょう。

*1:その点は前所属事務所のプロデュース力を大いに評価する。

*2:あとで皆が言っていたこと「知ってる?っていうのは歌えるかってことだったの?」