リュドミラ音楽・ひとり旅日記

Give every man thy ear, but few thy voice.

Siegfried at Royal Festival Hall 01022020

初訪問のロイヤルフェスティバルホールである。

ロンドンフィルは、これまで毎年一作づつリングの上演をしてきた。順番通りに行けば来年は《神々の黄昏》のはずだが、来年はサイクルで上演することになっている。

f:id:Lyudmila:20200216171620j:plain

Vladimir Jurowski, conductor
Torsten Kerl tenor,  Siegfried
Evgeny Nikitin bass, The Wanderer
Elena Pankratova soprano, Brünnhilde
Adrian Thompson tenor, Mime
Robert Hayward baritone, Alberich
Brindley Sherratt bass, Fafner
Anna Larsson contralto, Erda 
Alina Adamski soprano, voice of the Forest Bird

London Philharmonic Orchestra

コンサート形式だと思いこんでいたら前日Zhenyaが「衣装はあるし暗譜で歌う。セミステージだよ」と教えてくれた。実際に見たら普段着に毛が生えた程度の衣装ではあったが、確かにさすらい人は杖と雨合羽の装い。

f:id:Lyudmila:20200216171339j:plain

 フレンズ会員の友人にベストの位置を教えてもらった上、その辺りの席を早々と買ってもらっていた。一時Zhenyaの日程がパレルモの《パルシファル 》出演予定の間に入っているのがわかり、キャンセルかと焦ったが、結局パレルモをキャンセル。無事鑑賞となった。

ユロ兄はいつものように颯爽とした指揮ぶりで、サクサク進む。行間のため、みたいなものが全くなくて「はい次、はい次」とが楽譜を進める。長々とした作品にはそのくらいのバッサリとした思い切りも必要かな。なんにせよ、私はユロ兄のそういうとこが好きなのだ。
ジークフリートとしてTorsten Kerlを聞くのは私は二度目。以前に比べて恰幅がよくなり体力も増したかと思いきや、ペース配分は相変わらずいまひとつで、2幕終わりくらいには電池切れかと思わされるところがあった。しかし出色だったのはコーラングレを自ら演奏したことだ。楽器を持っていただけでなく本当に吹いててびっくりした。彼の音楽活動はそもそもオーボエソリストとして始まったんだそうだ。多分久しぶりに吹いたと思われるが流石に上手かった。ドヤ顔がジークフリートらしかった。
歌手は粒ぞろいで、ブリュンヒルデのPankratovaの見た目と一致する安定感と声の美しさ、いっときも乱れない迫力ある歌唱はジークフリートを圧倒していた。
ジークフリートに起こされるというよりは一人で勝手に目覚めたようだ。
多分それほど名前を知っている人は多くないと思われるミーメとアルベリッヒ役の二人もお見事だった。それぞれ相手がいる時のやりとりが相手と息ぴったりなのだ。
特にさすらい人とアルベリッヒのところは圧巻だった。
膝の手術のため、しばらく外国での舞台の仕事を休んでいたZhenyaも完全復調。
2年前から調子が悪いことが多く、実際このロンドンフィルのリングシリーズも昨年の《ワルキューレ》は胃の手術のためにキャンセルしたので、今回がハウスデビューということだった。
ここに立つまで、入念にスコアをさらい、声の調整をしてきたのがよくわかった。ドイツ語ディクションには定評があり、ヴォータン歌いとしてもっと評価されてもいいと思う。
ロンドンではおなじみらしいエルダ役も、ご一緒したロンドンの椿姫さんは「聞き飽きたかも」とおっしゃっていたが、私は好きな声なので満足だった。
この公演は放送もなく、おそらく録音が出たとしても来年からのサイクル上演だろうから、現地に聞きに来れたのはよかった。

f:id:Lyudmila:20200216174723j:plain

カテコ

f:id:Lyudmila:20200216171036j:plain

帰り道、テムズの橋から見たロイヤルフェスティバルホール

********************

 ロンドンに着く前に、今夏のPMFでZhenyaが《ドン・ジョバンニ》のタイトルロールで来日することを知り

www.pmf.or.jp

さらにMETの《さまよえるオランダ人》をTerfelが怪我で降板したことを知った。

METはGergievの指揮なので、もしかしたらモスクワとカザンの《さまよえるオランダ人》を降板してZhenyaが代役で入るのではないかと予想していた。
はたして彼は私に会った途端に「メトロポリタンオペラに出ることを知ってるか」と言った。いや、知るわけねーだろ、予想はしてたけど。それで頭がいっぱいになってしまったようだが、札幌には行く、とも言っていた。
モスクワとカザンの公演に出られないのは非常に残念だと言っていたが*1、HDもあるので彼のキャリアアップにはまたとない機会だ。

www.shochiku.co.jp

ということでこちらも楽しみ。皆様もどうぞよろしく!

*1:私もモスクワのチケットは持っているのだが、捨てることになる。行きたい方いたらお譲りいたします