この日の公演はMET Live in HD の配信・収録だった。
TRISTAN UND ISOLDE by Richard Wagner
Conductor: Simon Rattle
Isolde: Nina Stemme
Tristan: Stuart Skelton
Brangäne Ekaterina Gubanova
Kurwenal: Evgeny NIkitin
King Marke: Rene Pape
Director: Mariusz Treliński
トリスタンとイゾルデ、という作品はタイトルロールにばかり極端に比重が高く、なんとなればふたりだけ舞台にだしておけばなんとかなる。デコールも船の中、と二種類の室内くらいを用意しておけば足りるだろう。時代も場所もいくらでも読み替え可能で、そのテーマは変わらない。
いったいどんな舞台ならいいのだろう。
完全にリブレットに一致した設定を忠実に再現するか、とことん抽象的にするか。
私が見たものの中では、ベルリン国立歌劇場の天使のオブジェの舞台が好きだ。そしてイゾルデは永遠にMeier様。
今回はMETの新演出。近頃大流行りのビデオプロジェクションは当然多用され、さて舞台の設定はというと20世紀の軍艦だ。私は若干ミリオタが入ってるし、男性は軍服着ると3割増によく見えるので、とりあえずこれに文句はない。
各前奏曲の間には潜望鏡のようなものと、波濤を越える船、おそらく幼いトリスタンとそれを抱くマルケらしき人物映像が紗幕に投影される。マルケが語るように、いかにトリスタンを慈しんできたか。
船内は三層に分かれて、上層はトリスタンたちのいる制御室。二層目はイゾルデたちのいる船室。下層は機関室だろうが特に何もない。下手に各層を昇降するための階段がある。
二層目には監視カメラがあるということか、トリスタンはモニター映像のイゾルデを見、イゾルデもモニターの向こうのトリスタンに向かって歌う。
後でブランゲーネが薬を用意する時も、手もとが映される。
また、タントリスの物語では、その場面が再現されるが、モロルトはトリスタンに射殺されたことになっている。この舞台では剣は使用されず、なんでもピストルだ。
なるべく多くの人物を舞台上に置かないようにしているのか、乗組員もクルヴェナールの他数人。
一幕最後のマルケ王のお迎えの場面でも、マルケ王御一行は出てこない。合唱は全て裏からだ。ここはドタバタとたくさんの人が出てくる中でトリスタンとイゾルデがひきはがされるのを見たいもんである。